ニップン、2030年度売上高5000億円へ 知多工場軸に収益基盤強化、冷凍食品・海外を拡大

ニップン 大田尾亨社長
ニップン 大田尾亨社長

ニップンは7月31日、食品・製粉業界の専門紙関係者との懇談会で、2030年度に売上高5000億円を目指す長期ビジョンの進捗と今後の成長戦略を説明した。2025年度は売上高、営業利益、経常利益が過去最高となり、5期連続の増収増益を達成。2026年度は知多工場など大型設備投資に伴う減価償却費の増加により営業減益を見込む一方、売上高と償却前営業利益は過去最高を計画する。冷凍食品と海外事業を成長領域に位置付け、2030年度に営業利益250億円を目指す。

冒頭、前鶴俊哉会長は、2020年から6年間務めた社長在任中を振り返り、新型コロナウイルス禍やシステム障害への対応に加え、製粉、冷凍食品、研究開発、米国事業などで将来を見据えた投資を進めてきたと説明した。

前鶴会長は「会社として何をすべきか、何が必要かという視点で、さまざまな決断をしてきた。将来に向け、現時点で必要な投資を進めることができた」と述べた。今後は代表取締役会長として、大田尾亨社長を支えながら会社運営に関わる考えを示した。

6月26日付で社長に就任した大田尾亨社長は、中東情勢などの地政学リスク、円安、金利上昇、原材料・エネルギー価格の上昇、人手不足、消費者の価値観の変化などを挙げ、「かつてないスピードで変化が起きており、大きな転換点を迎えている」との認識を示した。

そのうえで、基盤領域では収益力を一層強化し、成長領域では国内外で事業領域を広げる方針を説明。総合食品企業として成長を続け、経済的価値の追求と社会的価値の創造を進めながら、食による社会課題の解決に挑む考えを示した。

〈2025年度は5期連続増収増益〉

2025年度の連結売上高は前年度比1.8%増の4184億2500万円、営業利益は2.8%増の220億8200万円、経常利益は2.0%増の248億7400万円だった。

インバウンド需要の拡大や、食品事業におけるマーケティング施策、諸コストの上昇に伴う価格改定などが増収に寄与した。人件費や物流費などの負担が増えたものの、製粉、食品両事業の販売が堅調に推移し、営業増益を確保した。

2026年度は、売上高を2.8%増の4300億円とし、6期連続の増収と過去最高の更新を見込む。一方、営業利益は11.7%減の195億円を予想する。販売数量の増加を見込むものの、人件費や物流費などの諸コストに加え、知多工場など大型設備投資に伴う減価償却費の増加が利益を押し下げる。

ただ、減価償却費を加えた償却前営業利益は337億円と、前年度を上回り過去最高となる見通し。大田尾社長は「一時的な費用増はあるが、事業の基礎的な収益力は確実に拡大している」と強調した。

同社の償却前営業利益は、2017年度の178億円から、2025年度には334億円へ約1.9倍に拡大した。設備投資を進めながら、事業がキャッシュを生み出す力を高めている。

〈知多工場、9月のフル稼働目指す〉

同社は、製粉、食品素材、加工食品を基盤領域とし、冷凍食品、中食、ヘルスケア、海外を成長領域に位置付ける。2026年度の中期目標は売上高4500億円、営業利益210億円、ROE8%以上、ROIC5%以上。2030年度には売上高5000億円、営業利益250億円を目指す。

基盤事業の収益力強化に向け、2026年2月には愛知県知多市の知多工場が稼働を開始した。大型穀物船が接岸できる岸壁に立地し、原料サイロに隣接する強みを生かして原料小麦を直接搬入することで、調達コストの削減と安定供給力の向上を図る。

知多工場の稼働により、製粉事業における臨海工場比率は83%から95%に高まる。実質再生可能エネルギーを100%使用する同社初のカーボンニュートラル工場で、浸水リスクを抑えたBCP対応型の設計を採用した。立体自動倉庫や製品分析の自動化なども導入し、省人化と生産効率の向上を進める。

取締役常務執行役員の佐藤高宏製粉事業本部長は、8月末をめどに名古屋工場から知多工場への生産移管を終える方針を説明した。知多工場の稼働により、コスト競争力の向上につなげる考えだ。

2025年度の製粉事業は、外国産小麦の政府売渡価格引き下げの影響により、売上高が1.4%減の1200億円となった一方、小麦粉の販売数量は過去最高を記録した。営業利益は、生産性向上や差別化商品の拡大などにより2.9%増の94億7100万円となった。

2026年度は、知多工場の減価償却費が前年度から約24億円増えることなどにより、営業利益を24.0%減の72億円と見込む。一方、償却前では前年度の利益を上回ることを目指す。佐藤本部長は、成長戦略、差別化製品戦略、コスト競争力強化の3本柱を掲げ、「2027年度、2028年度にしっかり収穫できる体制をつくる」とした。

差別化商品の一つが、農研機構と共同開発した国産小麦「やわら小麦」だ。でんぷんの老化が遅く、時間が経過しても硬くなりにくい特徴を持つ。2025年2月に業務用小麦粉として商品化し、2026年3月には家庭用の「次の日もやわらか強力小麦粉」を発売した。

〈冷凍食品、2030年度900億円へ〉

食品事業の2025年度売上高は2.2%増の2436億9400万円、営業利益は2.3%減の90億6500万円だった。業務用食品はインバウンド消費の拡大や海外事業が寄与し、家庭用食品ではマーケティング戦略を継続したことで増収となった。

一方、原材料費などの上昇に対応して価格改定を実施したものの、販売数量の減少もあり、コスト増を吸収できず営業減益となった。

2026年度は、売上高を4.2%増の2540億円、営業利益を2.9%減の88億円と予想する。業務用ではプレミックスや冷凍食品の外食向け販売を伸ばし、家庭用では加工食品、冷凍食品の新商品や新ブランドによって販売数量の増加を図る。

家庭用では、冷凍食品と常温の加工食品を横断するマスターブランド「オーマイプレミアム」の育成に力を入れる。ブランド認知率は2023年の47%から2025年には76%へ上昇した。

執行役員の篠山康司家庭用食品事業本部長は、業務用市場では人件費の上昇と人手不足を背景に、店舗調理を簡便化しながら高品質な料理を提供できる冷凍食品への需要が高まっていると説明。家庭用でも時短ニーズの定着に加え、冷凍食品のおいしさが認知され、市場が拡大しているとした。

特に、主食と主菜を組み合わせたワンプレート商品を含む冷凍調理セット市場が伸長している。需要拡大に対応するため、鹿児島県出水市でグループ最大規模となる冷凍食品工場を建設しており、2026年度末の稼働を予定する。

新工場では、ワンプレート商品の製造能力を大幅に増強し、最新の自動化技術を導入する。マーケティングと供給力の増強を組み合わせ、冷凍食品事業の売上高を2023年度の約520億円から、2030年度に900億円へ引き上げる。

〈海外売上高比率を12%に〉

海外事業では、2030年度に売上高600億円を目指す。全社売上高に占める海外比率を、現在の約5%から12%に高める計画だ。

北米では、米ユタ州のUtah Flour Millingの新工場が2025年9月に本格稼働した。既存の米国2拠点との連携を強化し、北米市場で販売を拡大する。

アジアでは、2024年7月にベトナム現地法人を設立した。2027年のプレミックス工場稼働に向けて体制を整え、ASEAN域内の供給力を強化する。日本製品の輸出拡大や、各国の需要に合わせたプレミックス、冷凍食品などの販売にも取り組む。

理事の南部剛史海外事業本部長は、海外拠点の整備に加え、マレーシアやタイでの現地研修、日本での集合研修などを通じてグローバル人材を育成する方針を説明。「拠点内外の市場開拓と海外への積極投資を原動力に、海外事業の成長を確かなものにしていく」と述べた。

このほか同社は、2026-27シーズンから男子バレーボールの国内最高峰「大同生命SV.LEAGUE」に参戦するフラーゴラッド鹿児島とプリンシパル・パートナー契約を締結した。ユニホームにはニップンと「オーマイプレミアム」のロゴを掲出し、ブランド認知向上を図る。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
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