介護食、身近な売場確保が課題

毎年2ケタ増で推移する高齢者食向け食品、いわゆる介護食の売り場が足りない。ドラッグストアや総合スーパー(GMs)の介護専門売場などでは、ほぼ上限まで導入が進んだと見られる介護食だが、高齢者にとっての身近な売場である食品スーパー(sM)やコンビニエンスストア(CVs) などでは、導入が進んでいないのが現状だ。売場確保に当たっては認知・啓蒙も鍵となるが、こうした状況を鑑み、動き出したのは大手CVsのローソン。今夏、埼玉県内にケア(介護)ローソンを2店舗オープンした。

「介護食のおいしさ、利便性を初めて知った」と声を上げたのは都内デイサービスのケアマネージャー。デイサービスで介護食を販売する「モッテコ」のサービスを導入した当初の様子を振り返った。ケアマネージャーをはじめ、介護が必要な高齢者に日頃接している介護従事者であっても、介護食の存在を知らない人は多い。各社、勉強会の実施やサンプリングの配布など認知・啓蒙に努める動きは、ここにきて顕著に進んでおり、介護従事者から要介護者に商品を薦めてもらうことで購入機会の創出、購入頻度のアップにつなげていく。

介護食をめぐる最大の課題は、売場の確保だ。キユーピーによるやわらか食の啓蒙や明治による濃厚流動食の必要性の訴求で、ドラッグストアやGMsの介護専門売場では導入が進むが、sMやCVsでの配荷は進んでいない。

こうした状況を打開すべくローソンは、高齢化や健康意識の高まりを受け、次世代CVsモデルの構築に取り組む。埼玉県を中心に介護サービスを提供するウイズネットと共同で、シニアと家族を支援するケア(介護)拠点型の店舗を2店舗出店。CVsの標準的な商品に加え、介護食や小分け惣菜、生鮮品、和菓子などを揃えた。2号店「ローソンさいたまシティハイツ三橋店」(さいたま市)の取り扱いアイテムは約4000、うち介護関連商品は80。介護相談窓口とサロンスペースも併設した。

やわらか食はレトルトの棚と、弁当やデザートを購入する流れで選べるよう、チルド売場にも陳列した。弁当などの日配品と一緒に陳列することで、介護食購入への躊躇を払拭、高齢者目線で買いやすさにも配慮した。通常店と比較し、高齢者とその家族の来店頻度が多く、順調に集客は進んでいる。2017年までにケアローソンを30店舗出店し、提携する介護事業者を募集し、中部や関西地域などにも拡大していく。

一方、前述の「モッテコ」は昨年始まったばかりのサービスだが、都内を中心に25事業所が導入。購入者に日頃接する介護従事者が商品を販売するため、購入者の状態に合った商品を薦めることができる。

15年度の改正介護保険法では、持続可能な社会保障制度の確立を図るとともに、「地域包括システム」の構築を目指す。介護サービス提供施設に対する介護報酬の引き下げや、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所条件の要介護3以上へ引き上げなども施行された。これにより、在宅介護強化の流れが一層強まる見込みで、在宅向け高齢者食の大幅な拡大を一層後押しするだろう。10年後には3人1人が高齢化となる超高齢社会の到来は必至だ。高齢者食の果たす役割は重要度を増し、早期の売場確保が待たれる。