栄養3学会、治療食の見直しについて方向性示す、病院食の合理化なるか
日本では治療食の概念があいまいで、病院によっては200~300にも及ぶ食種を用意している。患者一人ひとりに対応したきめ細かい病院食を提供するものの、それが業務の複雑化を招き、他病院との情報連携の難しさや病院給食にかかる収支の圧迫と病院経営の悪化などを引き起こす要因にもなっている。そのような中、治療食の基準を統一し、病院食の合理化を図る動きが出てきている。
日本病態栄養学会、日本栄養治療学会、日本臨床栄養学会の3学会は合同で「治療食の見直しに関する3学会合同委員会」を運営しており、診療報酬上の加算が付与される治療食の体系を抜本的に見直す作業を進めている。
日本の治療食は、行政上のルールとして病名と食種を紐づけて整理しており、その原型は1964(昭和39)年ごろにさかのぼる。第29回日本病態栄養学会年次学術集会大会長の菅野義彦氏は、「およそ60年間にわたり大きな改訂が行われず、現在の臨床現場ではほとんど必要とされない食種が制度上は残っており、『もう要らないのではないか』と感じざるを得ない項目も少なくない」と指摘する。
三学会ではここ2年ほどかけて、既存の治療食体系を一から見直し、ほぼ完成形に近い案を作り上げてきた。1月30日から3日間、国立京都国際会館で行われた日本病態栄養学会の第29回年次学術集会で、三学会は治療食を、以下の4つに分類する方向性を示した。
〈1〉成分別調整食(エネルギー、たんぱく質、脂質、糖質など)
〈2〉形態別調整食(全粥、5分粥、3分粥、流動食、嚥下対応食など)
〈3〉ミネラル調整食(ナトリウム、カリウム、リンなど)
〈4〉その他(アレルギー食、検査食など。
菅野氏は、海外ではまず治療食とは何かという定義が存在し、そのうえで各種の食事療法が位置づけられているが、日本では行政の法令の中で「治療食とは以下のものを言う」という形で列挙しており、腎臓食、心臓食など病名と食種が直接結びついている状況を指摘する。
そのうえで、「この構造を見直すことは、なぜわざわざ食事のバランスを崩すのか、何のためにおいしさを犠牲にしてまで食事を変えるのかという、本質的な問いを立て直す作業でもある。治療食の定義を再整理することは、栄養療法が病気にもたらす効果を明確にし、必ずしも食べたくないものを食べてまで得る価値のある変化とは何かを問い直すことにつながる。同時に、私たちの仕事は何のためにあるのかという、栄養士・医師の専門性の根幹に踏み込むテーマでもある」と見直しの意義を強調した。
今後、3学会の議論のあと、さらに他団体等の意見も含め検討を進め、国に上申する見通しだという。








