サブスクの冷蔵宅食サービス「つくりおき.jp」累計1,000万食へ、ミッションは「あらゆる家庭から義務をなくす」/Antway

サブスクの冷蔵宅食サービス「つくりおき.jp」
サブスクの冷蔵宅食サービス「つくりおき.jp」

Antway(東京都千代田区・前島恵代表取締役CEO)が展開する「つくりおき.jp」は、手作りの冷蔵惣菜をサブスプリクション形式で提供するサービスとして2020年2月から提供を開始し、3年半以上が経過した。同サービスは調理経験豊富なシェフと管理栄養士の監修のもと、専用キッチンで手作りした惣菜が毎週冷蔵で届く宅食サービスで、子育て世代や共働き世帯から絶大な支持を獲得している。メニュー構成などは社内のデータサイエンティストも参画し、満足度においても再現性高いサービスの提供につなげている。コロナ禍による人々の意識の変化もあって急成長し、累計850万食を突破。今期は1,000万食に到達する見込みで、売上高も36億円まで拡大する見通しだという。

Antway前島恵代表取締役CEO
Antway前島恵代表取締役CEO

今年5月には、三菱食品がスタートアップ企業との協業・連携施策の初号案件として包括的業務提携を締結し、出資も行った。これにより、両社の食材発注システムの高度化に向けた相互支援や、三菱食品の機能・知見提供による「つくりおき.jp」の物流・決済コスト削減支援、Antwayの保有データ提供による三菱食品の機能向上支援といった業務提携を行うという。

Antwayは「あらゆる家庭から義務をなくす」をミッションに掲げており、届くとすぐに食べられる「冷蔵」のおかずを定期宅配。日本中の家庭から「義務としての料理」を無くすことで、家庭にゆとりを生み出すことを目指すとしている。前島CEOは「もちろん自炊文化自体を否定するわけではなく、不可抗力として抗いようのない“義務”としての自炊を変えていきたい」と話す。

具体的には現在、4人前×3食の「週3食プラン」(9,580円/週)および、4人前×5食の「週5食プラン」(14,980円/週)の2つのプランで展開(価格は税・送料込)。冷蔵で4日間日持ちし、レンジ調理5分程度で食卓を完成させることができる。なお、4人前は「大人2人+子ども2人」を想定している。

同社では現在、都内の白山(文京区)、赤坂(港区)、清澄白河(江東区)と3カ所の専用キッチンを構え、東京都内および近隣の神奈川、埼玉、千葉の一部エリアには委託物流業者により直接配送している。今年5月からは26都府県に配送エリアを拡大し、前述エリア以外は冷蔵の宅配便での配送を行っている。

〈罪悪感・時間・味や品質で冷蔵のメリット活かす〉

冷凍ではなく冷蔵で提供することについて、前島CEOは「いくつか理由があるが、お客様のニーズに真摯に応えた結果、冷蔵に行き着いた。ニーズは何かというと、1つは食卓に安心して出せること。お客様は手作りしないことに対して罪悪感を持っており、ミールキットの方が家庭には適しているのではないかとも考えたが、さまざまにヒアリングをした結果、お客様が避けたいのは手作りしないことではなく、“下手なもの”を食卓に出すことだと分かった。そしてかなりの割合のお客様が毎日は食卓に出せないと感じるカテゴリーの中に“冷凍“が入っている。

もう1つは時間の面。例えば冷凍弁当だと電子レンジの調理時間が平均7分ほどかかり、家族4人だと28分とかなりの時間がかかる。当社の商品だと5分ほどあれば家族4人分を揃えられ、時間がない方には大きなメリットになる。

最後に重要な味や品質の部分。先ほどの“下手なもの”にもかかわるが、家庭で調理したもの、もしくはそれ以上を実現するためには冷凍だと限界があり、複数の食材が入った冷凍弁当だとさらに限界がある。電子レンジの構造上、全体にマイクロ波が当たるのでムラが出やすく、1つの食材だけならうまくいっても、他は少しべちゃっとしたり、加熱不足だったり、青菜の組織が破壊されて食感が悪くなったり、肉のドリップが出たりということが起きてしまう。現状の技術においては、冷蔵の方がおいしくできると考えている。ただ、技術発展で将来的には冷凍が冷蔵と遜色なくなるかもしれない」と話す。

また、結果的に宅食サービスは冷凍での参入が増えたことで競争が激化しており、冷蔵で取り組んでいる企業が少ないことからポジショニングの上でも有利に働いているという。

〈フランチャイズ化で高まるニーズに対応、まずは串カツ田中が参画〉

足元では、共働き世帯の急激な増加と、コロナ禍以降の食事の外注ニーズの高まりで同社の製造能力を超える需要があり、今年の夏から、同サービスの新たな製造キッチン立ち上げをフランチャイズビジネス化し、パートナー企業の募集を開始した。

そして直近の10月20日には、串カツ田中(東京都品川区)と業務提携契約を締結したことが発表された。直営キッチンに加え、串カツ田中が新たに製造拠点の設立と運営を担うという。

前島CEOはフランチャイズビジネス化の狙いについて「自社直営で広げていくことも考えたが、ニーズが拡大するスピードが早く、お届けをお待ちいただいているお客様も出ている。そうしたお客様になるべく早く商品をお届けしたいということからスピード感を重視して意思決定した。どれくらいの期間で、どれくらい事業を伸ばしたいか、たとえば10年間でいかに事業を大きくできるか考えた場合、フランチャイズの方がより早く・高い目標に到達できると思う。

その前提条件として、潜在的な市場が大きいことが挙げられる。市場規模の限界が早々に来るのであれば、その中でシェアを取って利益率の高い直営の方がよいかもしれないが、市場規模の限界が遠くにある場合はスピードのほうが重要だと考えている」と話す。

このフランチャイズビジネスの特長としては〈1〉高い再現性×データに基づく模倣困難正〈2〉多品目×大量調理のオペレーションノウハウ〈3〉サブスクリプション×宅配での高収益モデル――の3つが挙げられるという。

こうしたノウハウ面について前島CEOは「週替わり11品目の、手の込んだ冷蔵の商品を大量に製造するのはかなり難易度が高い。当社も製造を外注できないかと、惣菜工場と交渉したことが何度かあったが、ことごとくできないと断られた。それがむしろ自信になっている面もある。

また、品質についても事業モデル上、食材費をかけやすい面がある。D2Cという事業モデルなので、小売業を挟まない分を原価に反映できる。さらに、CVSなど小売店では構造的に見込み生産で、生産でも店頭でも、二重に廃棄ロスが出るが、当社は完全に受注生産でほぼ廃棄ロスが出ないので、その分を原価に反映させられるため食材費を上げることができ、それが高品質にも繋がっている。

それから当社では機材やオペレーションを含め、手をかけた調理を実現しやすいように努力してきたため、いわゆる自宅でも作るのが面倒と言われているようなメニューが数多くある。メニュー構成からそれらを意識したレシピを自社で作成しており、付加価値を感じてもらいやすい商品になっていると思う。

さらにキッチンで使っている機材による自動化・最適化についても機械メーカーと共同開発したり、ソフト面でも自前で工程管理のソフトウェアを作成するなどしてデータを活用し、手の込んだメニューを納期までにきちんと作れる体制としている」など話した。

〈今後は世界観の追求も、“ペガサス”のように高く〉

現在の課題と今後の方向性については「喫食体験だけでなく、オンライン・オフライン・プロダクト総体として改善し、『つくりおき.jp』ならではの世界観を構成していく必要がある。たとえば商品は銀色の保冷バッグで届くが、ちょっと冷たい感じがする。また、商品は白や黒のプラスチック容器に入っているが、しばらくサービスを使っていると作業感がでてしまい、おしゃれなお皿を使ったときのように気分が上がるものではない。お皿に盛らずそのまま食べたとしても、料理の味だけでない心地よさがあると良い。こうした所は改善の余地があり、世界観を追求したい。

もう1つは潜在ニーズを含めた需要に対し、製造能力が足りず、それを迅速に整えなければならない。それが前述のフランチャイズ化で、これを推進していく。

最後に、フランチャイズを含め製造能力を拡大する中で、認知度や市場でのシェアをしっかり確保できる力が必要だ。テレビCMやお友達紹介、またはフランチャイズの方々のネットワークも活用し、認知拡大していかねばならない。私はペガサスに見立てていて、胴体のプロダクトがしっかりあって、両翼に製造と集客があって初めて高く飛んでいけるとイメージしている」など話した。

媒体情報

冷食日報

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
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