自民党TPP対策案、原産地表示、業界構造見直しなど踏み込んだ内容も

自民党のTPP総合対策本部は18日、TPP対策に関する政府への提言をまとめた。きょう(20日)の党総務会で正式決定し政府に申し入れる。これを踏まえ政府は25日にTPP関連政策大綱を策定する。既存事業の拡充など一部対策は補正予算に盛り込まれるもよう。そして、畜産関係では大きな目玉ともいえる肉用牛肥育経営安定対策事業(牛マルキン)や養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の法制化など法整備が必要な項目は来年の通常国会で検討される方向だ。

今回の農林水産分野のTPP対策案は基本的に、13年12月に策定された「農林水産業・地域の活力創造プラン」に基づいて実施している対策をベースに、TPP対策案として新たに追加・補充したもの。そのため、マルキンの法制化など一部を除いてメニューは特別に目新しいというものではないが、事業成果が確実に上がるよう定量的な成果目標を設定することで進ちょく管理を行い、施策の点検・見直しを行うことが提言されている。

こうしてTPP発効に向けて今後これら対策を検討・実施するなか、大きな議論を呼び起こしそうな項目のひとつが「原料原産地表示」の問題だ。今回の自民党の一連の議論のなかでも議員からは加工品や中食・外食への原産地表示の義務付けや強化を求める声が根強かった。ただ、原産地表示を求める発言(とくに平場の議員)には“関税の引下げ・撤廃で増加する輸入品に対して、安全・安心である国産品を明確にしてほしい”というような、原料原産地表示の目的である「消費者の適切な選択に資する観点」とは別の思惑が透けて見えていた。当初、議員のなかには日本で飼料添加物として指定されていない塩酸ラクトパミンを引合いに、国産の優位性を図る観点から原産地表示強化を求める声もあった。

ただ、議論を重ねてゆくなかで、食品業界団体からのヒアリングや、「外食でのトンカツにどのくらい国産品が使われているか一般に知られていない。原産地表示の扱いを誤ると大きな問題になる」といった農林族幹部からの慎重な意見もあり、ややトーンダウンした形で検討課題として落ち着いた格好だ。この問題、ことし3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画のなかででも「その在り方を検討することが重要」とされているほか、消費者庁もTPP対策として、原産地表示義務付け対象拡大の検討に意欲を見せており、いずれ何らかの形で原産地表示の議論が展開されることになる。このほか、党のTPP対策のなかには、生産者が有利な条件で安定取引ができる流通・加工の業界構造の確立といった、踏み込んだ項目も盛り込まれているほか、関税収入減のよる財源確保の問題(TPPによる受益分野からの負担を求める声もある)など、流通・加工業界としてもどのように展開してゆくのか今後の議論を注視してゆく必要がありそうだ。