【新春インタビュー】農水省畜産部長大野高志氏、攻めの農林水産業への転換

“攻めの農林水産業”が進められる中、畜産分野では、“畜産クラスター”と “畜産物の輸出促進”が大きなテーマとなっている。農水省の大野高志畜産部長は畜産クラスターの目的を「畜産を地域経済の核にすえ、地域を活性化する取り組みだ」と語る。また、TPPの大筋合意により競争力を強化する “攻め”の重要さが増す一方で、農業者の不安、懸念を払拭する必要もある。

“総合的なTPP関連政策大綱”では、攻めの農林水産業への転換として、畜産クラスター事業の拡充や一層の輸出拡大等を支援するとともに、協定発効に合わせて、経営安定・安定供給のための様々な備えが盛り込まれた。

畜産クラスターでは、畜産農家を中心にその関係者で協議会を立ち上げ、地域独自の取組を計画する。地域特有の飼料を活用したブランド化、発情発見装置の活用、畜産環境問題への対応など様々な計画が考えられる。その計画を支援することで、地域経済へ波及効果を生み、地域全体の収益性を向上させる狙いだ。来年度には基金化により「複数年度にまたがるクラスター計画を作っていくことも可能になる」と、さらに柔軟に計画を立てることができるようになる。このほか、さらに、15年度補正予算では610億円と前年の倍以上に増額し、畜産業の“攻め”の中心として大きく拡大している。

「輸入品にはない特色を強力に打ち出す。飼料用米を使って高付加価値化に成功し、消費者からも支持されている取組みを支援した例がある。日本特有の水田を活用し、米を作り、それを食べた畜産物を納得した上で高く買っていただけている」と1例を語る。また、「発情発見装置を活用したり、育成部門を外部化する取組がある。これによって畜産業に人が入ってきやすくなる」と、様々な効果を期待する。

一方で、「今年度(15年度)に元年として実施した中で、反省点もある」とし、「ただ機械リースや施設整備に対して補助が受けられる便利な事業という誤解を抱かせた。趣旨を十分にご理解いただくため、丁寧に説明していく必要がある。ステークホルダーが協力し、地域の収益性を向上させるしっかりとした計画を立ててもらう。次はさらにしっかりしたものが多く出てくるだろう」と15年度を振り返った。