薬剤耐性対策でアクションプラン政府決定受け畜種別の実行計画作成へ-農水省

政府が薬剤耐性対策アクションプランを決定したのを受け、農水省は16年度内に、主に肉用牛、養豚、ブロイラーといった畜種別の実施計画および行程表を作成する方針だ。アクションプランでは、ヒトの抗微生物剤の使用量を20年までに対13年比で33%減らす方針が掲げられているほか、畜産分野においても抗菌剤ごとに目標とする薬剤耐性率(採取した菌のうち薬剤耐性を備えた菌の占める割合)が示されている。薬剤耐性対策の基本は、抗菌剤の使用をなるべく控える「慎重使用」が最も重要で、同省としては、疾病対策として動物用抗菌剤を用いる必要があるかどうかを見極めるため、獣医師向けの指標(マニュアル)も併せて整備することにしている。

農水省畜水安全管理課は「抗菌剤を使わずに済むよう、飼養衛生管理基準の順守徹底により、疾病予防することが何よりも重要であり、それが薬剤耐性対策としても効果が期待される。また生産コスト削減にもつながる。家畜衛生主任者会議などさまざまな場面で、飼養衛生管理基準と、『慎重使用』を組み合わせた考えを徹底するよう働きかけたい」と話している。

また政府は、人畜共通の健康対策「ワンヘルス」の考えの下、ヒト、動物での抗菌剤の使用が相互にどう影響しているかを監視する体制も整える方針も固めている。

今回まとめられたアクションプランは今後、5年間で取り組まれる目標が示されたもの。薬剤耐性対策の目標としては、①普及啓発・教育②薬剤耐性の監視・動向調査③感染予防管理④抗微生物剤の適正使用⑤研究開発・創薬⑥国際協力–の6つの課題を掲げている。これを受け、人医療分野と動物医療分野の連携による薬剤耐性の監視・動向調査といった他の先進国でもあまり踏み込んでいない先進的取組みを推進するほか、日本は国際協力としてアジア・太平洋地域での薬剤耐性対策で主導的な役割を果たしていきたい考え。WHO(世界保健機構)、FAO(国連食糧農業機関)、OIE(国際獣疫事務局)などの協力の下、16日に日本で「薬剤耐性アジア閣僚級会合」が開かれる予定だ。

畜産分野での薬剤耐性率の目標としては、大腸菌対策として使用されるテトラサイクリンを14年現在で45%を20年までに33%以下に、第3世代セファロスポリン、フルオロキノロン(いずれも大腸菌対策)の2剤については、G7(先進国手法会議)メンバーの数値と同水準のレベルの維持を掲げている。2剤は現在も1.5、4.7%とG7水準とほぼ同水準で推移している。