猛暑で8月の肉豚出荷は予想を下回る、9月中旬以降の出荷増の懸念も

8月中旬に入って「トリプル台風」が北海道や関東など広範囲に大雨をもたらしているが、全国的な肉豚出荷頭数は、九州地方を中心に猛暑続きで当初の出荷予測を5%程度大きく下回っている。暑熱で発育が思うように進まず、この反動で9月中旬以降は当初予想を大幅に上回る出荷となりそうだ。しかも、8月が予想よりも出荷が落ちている割には、この間の枝肉相場も思ったほど上がってはおらず、逆に9月後半にかけての出荷のズレ込みに伴う相場への影響も懸念される。

8月の全国出荷頭数(速報値)は、29日までの稼働日19日間で計114万4,700頭、1日当たりで平均6万247頭となっている。前年同月(19日稼働日)は120万頭(食肉流通統計)となり、稼働日ベースでは4.7%減少している。

これに対して農水省の8月の出荷予測は前年比10%増の131万7千頭と、現状の速報値と比べるとややかい離が生じている。仮に残り2日間で6万頭ずつの出荷があったとしても126万5千頭程度となり、農水省予測よりも4%ほど、農畜産業振興機構の需給予測(8月は127万4千頭・前年比6.1%増)に比べても0.8%ほど下回る見込みだ。

この減少の要因は、猛暑による増体の悪化や一部PEDによる分娩頭数の影響によるものとみられている。九州の一部産地では先週まで35℃を超える猛暑日が続いたことで餌の摂取量が落ち込んでおり、出荷頭数の減少に加えて、出荷重量も70㎏を割り、一般豚で1頭当たり60㎏後半に落ち込んでいる農家も増えているという。また別の産地では、繁殖成績は順調に推移しているものの、猛暑に加えて日中の寒暖差が激しいことから肥育が思うように進まず、豚舎(肥育舎)で肥育豚が滞留するため、重量が乗らなくても出荷せざるを得ない状況にあるようだ。一方、東日本の産地では猛暑だけでなく、PEDや呼吸器系の疾病の影響が色濃く残っており、母豚そのものの減少がいまの出荷減少に繋がっていると指摘する声もある。このように、たとえ頭数そのものが出てきても、体重も小型化しており、枝肉重量ベースではさらに減少しているものとみられる。

直近の天候は、北日本と東日本では台風の影響による降雨に見舞われるものの、気象庁によると全国的には平年並か平年より高い見込みとなっている。この先残暑がどこまで続くかにもよるが、例年であれば9月中旬以降は、朝晩の気温が低下して増体が通常ペースに戻るとみられ、この8月の出荷減の反動が9月以降の出荷に現れてくるものとみられる。「いまの猛暑では1~2週間出荷を遅らせても大して重量が乗ってこないが、9月後半にかけて気温が下がってくれば、増体向上と8月の出荷遅延分が重なって、10月上旬にかけて出荷はかなり増えてくるのでは」(産地市場関係者)と見る向きもある。

農水省の出荷予測では9月が前年同月比2%増の136万7千頭、農畜産業振興機構の需給予測では9月は同0.1%減の133万3千頭とそれぞれ予測しているが、この8月減少分が上乗せされると9月の出荷は3%増もしくは前年並みに上乗せされる可能性もある。