日EU・EPA交渉のあり方に不満の声相次ぐ、準備不足の批判も-自民党

自民党は12日夕刻に開いた農林合同会議で日EU・EPAに関して政府から交渉状況の報告を受けた。13年3月から始まった日EU・EPA交渉は、年内の“大枠合意”を目指して非公式の主席交渉官会合が開かれているものの、これまで党の部会などで「交渉状況がどうなっているか知らされていない」(西川公也農林水産戦略調査会長)状況で、今回、初めて議題に取り上げられた形となる。今回、外務省と農水省からは農産品等の市場アクセスなど交渉のポイントや日・EU間の農林水産貿易状況など大まかな概要が報告。さらに、外務省の山野内勘二経済局長は、「主席交渉官レベルで詰めたうえで、政治判断が必要になれば、クリスマス前に閣僚レベルでの折衝を行うことがスケジュール感として想定される」と明らかにした。これに平場の議員からは堰を切ったように「(年内という)年も押し迫ったときに、なぜこのタイミングでこの議論をしなければならないのか」「今回、どんな結果がでてくるのか不安で仕方がない。ここで相当な譲歩をするとTPPの枠組みにも(再協議など)影響しかねない」といった批判が相次いだ。なかには「制度でどう守れるか事前にしっかりと検討しなければならない。EUの要求をしっかりと探り、必要な政策制度づくりの検討がなされなければならない。なし崩し的な早急な判断は避けるべきだ」と大筋合意に向けた準部不足を指摘する声もあった。

外務省の説明によると、日EU・EPAは物品市場アクセス、非関税措置(NTM)、原産地規則、sPs(衛生植物検疫)措置など主に27分野で交渉が行われている。物品市場アクセスについてEU側は農産品等の市場アクセスに、日本側は鉱工業品等の高関税の撤廃(乗用車10%、電子機器最大14%)にそれぞれ関心を持つという。非関税措置で日本側は個人情報の越境移転に関する規制など、日本企業が欧州で直面する規制上の問題改善を要望しており、EU側は食品安全や自動車、医療機器などの非関税措置を求めているという。農水省の説明によると、EUから日本への農産品の上位輸出額(12~14年平均)は①豚肉(1,333億円、25.2万t)②製材(929億円、248.3万?)③製造用集成材(309億円、28.6万t)④かつお・まぐろ類(242億円、1.0万t)⑤ナチュラルチーズ(230億円、3.4万t)–と、EUにとって豚肉が最大の対日輸出品目となっているという(アルコール飲料は1,554億円、22.6万kl)。日本からEUへの上位輸出額(同)は①ソース混合調味料(16億円)②播種用の種(145億円)③ホタテ貝(14億円)④醤油(13億円)⑤緑茶(12億円)–となっている。

議論を受けて、党では西川公也農林・食料戦略調査会長が政府との窓口役となり、交渉の進ちょく状況など報告を受けながら対応を検討することで一致した。西川会長は、「従来のように交渉を進めながら対策を練ってきていればある程度(農家へ)説明はつくが、全くいま(日EU・EPA交渉の)対策はない。マルキン等や不足払いのような議論もしておらず、市場がどう影響を受けるか予測も知らされていない」としたうえで、政府に影響分析を求め対策を検討していく方針を示した。

西川会長は会合後、「TPPの時には重要5品目を決めて(国内農業に)どんな影響がでるのか徹底的に議論して対策を作ってきた。今回、コメは(影響が)少ないかもしれないが、豚肉、乳製品に影響が出てくる可能性が高い。EUからどんな要求がなされているか、国内側で我々議員が承知していなかったため、精力的に対応策を検討したい。日EU・EPAに関して不安がたくさんあり、TPPのような騒ぎになりたくない。年内の(大枠合意を)やる・やらないかを含めて、早く対応策を考えたい。影響が出る・出ないか我々に説得できる材料を政府に求めてゆく」と述べた。