【令和5年9月の需給展望 牛肉】消費低迷と出荷増で和牛中心に安値横ばい、交雑は和牛からのシフトの期待も上げ材料乏しい

物価高騰による生活防衛意識の高まりから、食肉の末端消費は単価の安い豚肉、鶏肉が中心となっており、牛肉は国産・輸入ともに苦戦している。

8月も同様の展開となり、とくに盆休み期間中は猛暑や台風上陸などの天候要因も重なり、期待した消費の当てが外れ、末端・卸段階では在庫消化に苦労した。このため、枝肉相場は、各畜種・等級で前年価格を下回って推移した。

また、和牛5等級は銘柄牛や品質のしっかりした上物は高値を維持するものの、そうでないものとの価格差が大きく、実際の販売状況と加重相場の温度差が広がった。

東京市場の月間平均相場は、各等級で前月から値下がりした。

例年、9月は量販店の棚替えが進み、彼岸ごろからスライス商材が売れ出す時期だが、気象庁の季節予報では10月第1週目まで全国的に平年より高い気温が続くとみられている。台風シーズンでもあり、9月の末端消費は天候に左右されるとみられる。各市場で共励会が増えるものの、これといった上げ材料は少なく、和牛去勢A4で2,100円前後、交雑去勢B3で1,500円前後と、8月から多少持ち直すものの、引続き前年相場を下回る展開となりそうだ。

〈供給見通し〉

農畜産業振興機構の需給予測によると、9月の全国出荷頭数は前年(2022年)同月比0.1%増の9万200頭で、このうち和牛が前年同月比1.7%減の3万8,900頭、交雑種が2.5%増の2万1,100頭、乳用種が1.5%増の2万8,600頭と予想している。

ただ、乳用種雄については個体識別情報の飼養頭数からみて前年同月比3%減の1.1万頭程度とみられる。また和牛も、8月の相場低迷から主産地の九州や北海道、東北では出荷適齢牛が溜まっているとの話もあり、市場への出荷が増えるなどして、機構の予想を上回る可能性が高い。

一方、牛肉の輸入量は、庫腹のひっ迫と円安によるコスト上昇を受けてチルド・フローズンともに少ないとみられる。機構の需給予測でも9月のチルドの輸入量は前年同月比1.1%減の1万6,800t、フローズンに至っては35.0%減の2万2,700tと、前年をかなり下回りそうだ。

〈需要見通し〉

卸段階では盆休み明け以降の在庫の整理がついて、9月第1週目から手当ての動きがみられた。ただ、今月は「敬老の日」を含む3連休があるとはいえ、ガソリン価格の高騰などで消費者の生活防衛意識がさらに強まると予想され、消費回復の期待は薄い。残暑続きで量販店のスライス需要の本格化も来月以降とみられる。

外食では会食需要が徐々に回復しているものの、店舗の人手不足により営業時間の短縮など根本的な問題も露呈している。そして、この時期は台風の動向も末端消費に大きな影響を及ぼすとみられる。パーツの動向は、9月に入ってからカタロースの問い合わせが増えているものの、ロイン、バラは鈍い状態が続いている。

あとは、切り落とし用のウデ、モモが動いている程度。輸出も相場に影響を及ぼすほどの動きはない。焼材用のバラ系などは、需要が冷え込み在庫増の懸念も。畜種別では、ホルスが学校給食の再開でスソ物中心に動きが出てきた。しかし、和牛の下位等級や交雑種で安い案内も聞かれ、とくに交雑種は下口でホルスを下回るケースもある。一部銘柄牛を除いて、和牛・国産牛の高級部位ほど苦戦が続きそうだ。

〈価格見通し〉

スソ物やスライス関係の引合いなどで相場は前月よりはマシになるとみられるものの、やはり末端消費が冷え込んでいるため大きな上げは見込めず、安値横ばいの展開となりそうだ。今後の出荷動向にもよるが、和牛は前月から20~40円程度上げ、交雑は和牛からのシフトもあり70~80円程度上げが予想される。このため、和牛去勢A5で2,500円前後、和牛去勢A4で2,100円前後、和牛去勢A3で1,850円前後、交雑去勢B3で1,500円前後、交雑去勢B2で1,350円前後、ホルス去勢B2で900円前後と予想される。

〈畜産日報2023年9月11日付〉

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