働きたいけれど子どもを預けられる場所がない、土日も預けられる場所があればもっと働ける――。女性従業員の声を生かし、事業所内保育所を茨城県内に3カ所開園しているのは、ゼンショーホールディングス(HD)だ。人手不足が深刻化する中、自前で保育所を運営する同社の取り組みは、業界の垣根を超えて注目を集めている。今年3月までに新たに2施設の開園を予定するゼンショーHDの保育園事業への参入経緯と狙い、今後の展望を追った。

「人材戦略の一翼を担う主婦パートの採用率アップと、長く働ける職場づくりを目指すため15年、ゼンショーHD100%子会社のかがやき保育園を設立した。保育所があるから『ココス』(ゼンショーHD傘下、ココスジャパンが運営するファーミリーレストラン)で働くことを決めたとの声が挙がるなど、地域に住む主婦がパートを決める際の決定打として、今やなくてならない存在」。こう語るのは、同事業を担当するかがやき保育園取締役の織田久仁人氏だ。

〈保育所設置のきっかけは女性従業員の意見〉
同社が保育園事業に参入したきっかけは、職場環境改善に向け、全国各地で実施したクルーミーティングでの女性従業員の意見から。グループのパートタイマーとして働く従業員から最も多くの要望があった保育所の設置を、15年に事業会社を立ち上げ、自前で実現した。

茨城県内には、ドミナント戦略により「すき家」や「ココス」など同社グループの店舗が多数存在している他、工場やコールセンターなど関連施設も複数ある。

15年9月に開園した「かがやき保育園つくば」はコールセンターのある建物の1階に、続く「同 うしく」はスーパーや工場が近隣に、3施設目の「同 とりで」もグループの飲食店が近隣に20店舗以上存在している。

定員は各19人で、生後57日目から小学校就学前までの年齢が対象だ。休園日はなしで土日も預かる。政府が待機児童の解消に向け推進する企業主導型保育事業に認定されており、設備・運営費の一部が助成されている。大手を中心に事業所内保育所を設置する企業は増加傾向にあるが、その多くは保育専門の業者に運営を委託している。

〈自前による運営で質の高いサービスを実現〉
「自前で運営を行うことで、小規模であっても食・遊・学の質の高いサービスを実現している。その一番のこだわりが給食やおやつなど提供する『食』だ」と織田氏は自負する。各保育所には調理室を設置しており、冷凍食品は不使用、毎日出汁を引くなど、フード業を営むグループの特徴を生かし、「食育」を通して食べ物の大切さや食べることの大切さを伝えている。

「かがやき保育園」は、同じ茨城県内の石岡市、水戸市と今年度末まで開園が続く。今後の展望について織田氏は、「保育園設立は従業員の声を生かし、女性の就業継続の促進と雇用創出に繋げたいと、働きやすい職場づくりに向け、会長の小川(小川賢太郎ゼンショーHD会長兼社長)直下で決断した事業。全国各地から設置要望の声が多数上がってきており、まずは茨城県内で事業モデルを構築し、近隣の他県へと事業を拡大していきたい」と語る。

グループ店舗には人が集まり、保育園に預けられる従業員は安心して働ける―。同社グループの持続的な成長を支える屋台骨として、保育園事業を引き続き推進していく意向だ。
〈食品産業新聞 2018年2月8日付より〉
「かがやき保育園とりで」外観

「かがやき保育園とりで」外観

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