近年、AI(人工知能)やロボットの進化が目覚ましい。定型作業ならば人間にとって変わる日もそう遠くないだろうと予想されており、「AIが仕事を奪う」といったセンセーショナルな言葉も耳にするようになってきた。

マッキンゼーグローバル研究所が発表した報告書の中でも、2030年までに全体の約3分の1に当たる米国人労働者が職を変えるか、辞めなければならないだろうと予想している。なぜロボットではなく、人なのか?当社なのか?が日々問われる時代になりつつある。働き方改革で生産性向上を進める上でも、これらのテクノロジーの職場への導入が期待されている。例えば、ニチレイフーズの大櫛顕也社長は昨年末の記者会見で、自社の労働力不足への対応という経営課題に対し「順次、ロボットへの置き換えにより工場内の省力化を進めている。今後も安定供給可能な生産体制作りに向け、設備投資を継続していく」とし、テーブルマークの川股篤博社長は「人が集まらないことを前提にして、前処理の得意な工場、焼き物が得意な工場、完全自動化工場、人手と機械を組み合わせた工場――などキャラクターづけして、それぞれの技術を蓄積していきたい。そして、それぞれのノウハウを解析、言語化して、その後のAIやロボットにつなげたい」と構想する。

では、現時点で、食品工場でAIやロボットはどんな活躍が見込めるのか。

ある機器メーカーに話を聞くと、「AIは機器の動作状況を監視、故障予知に効果を発揮する」という。その端的な例が、ニチレイフーズと近畿大学の共同開発だ。2月末、両者はAIを活用してニチレイフーズの冷食工場で使用する原料を選別する技術を共同開発したと発表した。ニチレイフーズでは、原料受け入れ時に金属探知、X線、近赤外線、光学・色彩などの選別技術を活用し原料の管理を行っている。

しかし不定形な原料の性状や、夾雑物の位置・角度によって判別精度が下がるため、重ねて人手や目視による検品を行うことも多いのが現状だ。作業負担が大きく、判別しづらい検査もあったことから、両者はAIを利用した選別技術の開発に着手した。その結果、以前より夾雑物除去率が約1.5倍、処理スピードが約4倍になったという。製造途中や完成品の検査にも応用でき、完全自動化にもつながる。

ニチレイフーズは将来的に技術(特許出願済)の外部販売も視野に入れている。この技術が発展し、商品価格も抑えることができれば、食品工場のみならず、惣菜や弁当工場、給食のセントラルキッチンでも活躍し、異物混入などの事故低減に貢献するだろう。ロボットについては、徐々に食品工場でも導入されつつあり、防水性のものも開発されているが、ある機器メーカーは「5本の指で細かい作業をさせるほどには至っていない。手指の技術開発が進めば、自動化の可能性が広がる」と課題を挙げる。

テクノロジーの進化は日進月歩。仕事のあり方も変容させる中、企業はどうやってこの変化に対応すれば良いのだろうか。

元米国財務長官のロバート・ルービンは語る。「その答えは人々が互いに語り合い、共に前進していくことにある。AI時代には『働きながら学ぶ』ことが必要だ」と。技術がいくら進歩しても、顧客に求められるためには、代替物にならない独自のサービスと創造性、柔軟な対応力が不可欠である。そのためには、従来の仕事の枠の中で効率性を追うだけでなく、世の中の変化に合わせて、個々人が学び、新しいことに挑戦し続けること、そして会社がそれを育むことが大切ではないだろうか。

〈冷食日報 2018年5月1日付より〉

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