冷凍自販機「ど冷えもん」拡大、いくら醤油漬・たらこ甘塩味など水産物も自販機で/サンデン・リテールシステム

サンデン・リテールシステム「ど冷えもん」
冷凍自動販売機「ど冷(ひ)えもん」が広がりを見せる。コロナ禍で売り上げが落ち込む中、新たな売上を求めて飲食店などで導入が進みつつある。最近では、ラーメン店や餃子専門店、スイーツに加え、精肉や水産の卸など、様々なところから引き合いが増えている。

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2021年6月、築地場外にある海鮮丼などが人気の飲食店「北海番屋」(東京都中央区)の軒先に「ど冷えもん」が設置された。販売されている商品は「北海道産 いくら醤油漬」(税込3,500円)や、「北海道産たらこ甘塩味」(2,000円)、シャケの切身などの水産物で、自販機で冷凍の水産物を扱うのは「全国でも初の事例では」(サンデン・リテールシステム広報)と話す。持ち帰りしやすいように保冷材と袋のセットも販売している。

設置のきっかけは、自販機の管理などを行う「Food&Meal」(東京都品川区)の唐沢順代表が築地界隈の飲食店に設置を呼び掛けたことだ。「築地が盛り上がっていた時を知っているからこそ、少しでも自販機で活気づけの助けになれば」と話す。

築地場外市場は、築地市場の移転で客足が減る中、新型コロナウイルスの感染拡大でより人の往来は減ったという。飲食店向けに販売していた商品の売上も大きく落ち込んだ。

また、築地場外市場は夕方には多くの店が閉まっている。せっかく観光に来てくれた人がいても、店舗が閉まっていればチャンスロスになると唐澤さんは考え、近隣店舗に導入の提案を行っている。

「ど冷えもん」を手掛けているのは、自販機やショーケースを手掛けるサンデン・リテールシステムだ。

外食店や給食事業者の売上減少に加えて、家庭用冷凍食品の需要が急増した点に着目し、2021年2月頃から提案を開始した。一般の冷凍パスタならば最大で55個をストックできる。4種類の棚を自由に組み合わせることで、今まで販売が難しかった大型の冷凍食品など、異なるサイズの商品を扱える。

飲食店での初導入は、東京・四谷三丁目のラーメン店「大平軒」(東京都新宿区)だ。設置の経緯について、店主の藤山立博さんは「細麺のラーメンをデリバリーで販売すると、どうしても伸びてしまう。相性があまり良くなかったためか、売上にもなりにくかった」と話す。店舗は1人で回しているため「ECでの販売は手が回らない」という。そこで、冷凍自販機を導入し、新たな売上確保に努めている。

商品は「冷凍とんこつラーメン(替え玉付)」(600円)や「冷凍 大平軒餃子 30個」(900円)に加えて、自販機限定メニューとして「冷凍 昔ながらの醤油ラーメン」(700円)も販売している。

「ど冷えもん」の引き合いは増え、時短営業を余儀なくされた飲食店で導入が進んだ。人気店やチェーン店などでも採用されるなど、順調な広がりを見せている。

「リンガーハット堺百舌鳥店」(大阪府堺市)でも2021年6月中旬に導入された。関西地域の大手チェーン店へは初めて。店頭商品や通販専用商品を含め全6種類を購入できる。

「リンガーハット堺百舌鳥店」

「リンガーハット堺百舌鳥店」

 
新型コロナの影響で外食の売上が下がっており、店舗以外での新しい販路をリンガーハットも探していた。その中で、「屋外可能・無人・非接触」の3点を兼ね備えた「ど冷えもん」がマッチしているとの考えから、導入に至ったという。
 
最近では、精肉店や水産などの卸業での導入も増えているという。サンデン・リテールシステムの広報担当は「コロナの影響で飲食店へ卸す量が減ってしまった分、直接一般消費者へ味わって欲しいという思いで自販機を選ばれる方も多い」と話す。
 
コロナ禍に登場し、時代に合致し導入が進む「ど冷えもん」。問い合わせも多く来ているという。新たな商機にもつながっており、勢いは止まりそうにない。
 
〈冷食日報2021年6月30日付〉