小規模店舗のワインセラー「ワインリスト堂島店」を関西初出店/エスクリ

エスクリ「ワインリスト堂島店」
〈注文から5分でワインを無料配送、周辺飲食店に持込も可〉
ブライダル事業を展開するエスクリ(東京都港区)は22日、大阪市北区にワインセラーのシェアリングエコノミー事業「WINELIST(ワインリスト)堂島店」を関西初出店した。

同社は昨年11月7日に、グループ会社の渋谷(奈良県桜井市)が酒類卸業免許を取得し、都内屈指の飲食店の密集地帯である新橋に1号店を出店。関西エリア屈指の繁華街にオープンした同店に続いて、全国31カ所の結婚式場を運営するネットワークを駆使し、名古屋、博多、仙台、広島などの主要都市に出店を加速させていく考えだ。

「ワインリスト」では、周辺の飲食店と加盟店契約を結び、注文を受けるとワインを無料で配達する。配達時間の目安は注文から5分で、ソムリエも常駐し、ワインに関する相談にも対応する。また、一般客が同店で購入したワインは、併設する飲食店で追加料金なしで飲むことができる。海外で一般的なシステムBYO(BringYour Own Wine)を取り入れており、周辺の飲食店にも持ち込むことも可能だ。持込料は1本税込500円からで、飲食店と事前に取り決める。

1号店を出店した新橋エリアは、長年個人で営んできた名店が多く、ワインと相性の良い料理を提供しているにも関わらず、ワインの適正な保存方法や知識不足から、ワインの提供に消極的で新たな集客機械を逃している店舗が多かったという。そういった小規模店舗のワインセラー替わりとなることを目指している。

新橋店は0.8坪の土地にコンテナを設置した店舗で、ボトル販売のみ実施。周辺飲食店の加盟店は現在約40店で、持込料は平均税込1,000円で、月平均の注文数は約1,000本。月商は150万円~200万円としている。

〈第1弾として西豪州のワインを直輸入〉
今回オープンした「ワインリスト堂島店」は、入口に新橋店と同様にワインを保管するコンテナを設置している。コンテナはBtoB向けのショールームの位置付けだ。店内には飲食店を併設しており、購入したワインを追加料金なしでリーズナブルに楽しむことができる。屋外では、渋谷守浩社長がデザインしたというチーク材のテーブルを配置しており立食形式で、店内では、ゆっくり着席してというように、シチェーションに合わせた利用が可能だ。

屋外では立食、店内では着席 シチェーションに合わせた利用が可能

屋外では立食、店内では着席 シチェーションに合わせた利用が可能

店内の料理は、税別380円から1,800円まで単品が中心で、大粒のムール貝グリーンマッスルやフリッターなど、日替わりで約40種類のメニューを揃える。生ハムは目の前でカットし、特に推奨しているピザトーストも日替わりで数種類を提供する。

日替わりで約40種類のメニュー、生ハムは目の前でカット

日替わりで約40種類のメニュー、生ハムは目の前でカット

オペレーション本部の齋藤浩一氏は「ワインリスト」について、「当社は全国31カ所に結婚式場を運営しているバックグラウンドがある。大量のワインを使用するので、直輸入でワインを輸入し、新事業でシナジーを生むことを目指した」と説明。年間約8,000組の結婚式を手掛けるスケールメリットを活かし、質の高いワインを世界各国から直接買い付けを行い、結婚式でコストパフォーマンスの高いワインを提供するとともに、「ワインリスト」で販売する。

自社直輸入ワインのため、「クオリティーの高いものを、よりリーズナブルに提供できる」と強調。グラスワインは税別390円から、高くても2,000円弱まで9種類をラインアップし、日替わりワインも用意。ボトルは1,500円税別から1万1,000円のものまで17種類を購入できる。客単価は2,200円を想定している。

第1弾として直輸入したのは、西オーストラリアのワインだ。「従来の有名産地ワインではなく、良さが知られていない産地、メーカーをエスクリの力でスポットを当て、認知されることを目指す」と齋藤氏。特に「JARRAH RIDGE(ジャラリッジ)」というワインメーカーを一押しにしている。

〈グラス貸与やメニュー作成も請け負う〉
加盟店へのワインの無料配送については、「ワインのアウトソーシングで、シェアリングエコノミーの一環である。看板にはワインを持って走っているロゴを使用しているが、注文をもらうとすぐに持っていく。

グラスも貸与し、メニュー作成も請け負う。ワインセラーや在庫が不要で、コンテナを共有のワインセラーとして使ってもらう。ソムリエも共有のソムリエとして走ってもらう」と説明する。届ける範囲は走って5分の距離が目安だが、4月から大阪駅周辺のグランフロントやルクア内の飲食店に、12本単位で無料配送も開始。

また、BtoBとBtoCのマッチングも行う。飲食店とは事前に持込料を決めておき、空席状況と照らし合わせた上で、同店のワイン購入者に安く持ち込める飲食店を紹介するもの。地域密着でビジネスを行っていくとし、紹介手数料も不要だという。

齋藤氏は、「従来の業務用酒販店とはバッティングしない。ワインメーカーとは独占契約を結んでおり、販売するワインは当社のみが扱うもの。飲食店とワインメーカーとをマッチングさせ、ワインをキーワードに、街の焼鳥屋や寿司店を助ける仕事を行っていく」と述べる。

〈日本初上陸となる「ジャラリッジ」〉
「ジャラリッジ」は、西オーストラリアで最も古い歴史のある産地、スワンバレーにあるワイナリーで、日本初上陸となる。地中海のように暑く乾燥している気候が特徴だ。オーナーのジミー・ウォン氏はシンガポール出身で、醸造責任者のマーク・モートン氏は、モエ・エ・シャンドンでシャンパン造りの経験を持つことから、瓶内二次発酵で造るクオリティーの高いスパークリングワインも揃えている。

シェフソムリエの新井悟氏は、中でも「ジャラリッジ レスベラトロール ブロッサムレッド」を推奨する。レスベラトロールはポリフェノールの一種で、美容・健康の効能に優れているとされる。通常のワインに含まれるポリフェノールは1mgだが、同ワインには、天然のブドウの皮から抽出したレスベラトロールが50mg含まれている。「オーストラリアではこういった添加が認められている。伝統を重んじながらも新しいことに挑戦している」と評価する。

シェフソムリエ・新井悟氏

シェフソムリエ・新井悟氏

オープニングイベントには「ジャラリッジ」の醸造責任者とオーナーも来日した。

ワイン醸造責任者のマーク・モートン氏は、合わせるメニューや置かれる場所、どういう人がどういったシチュエーションで飲むかをリサーチした上で、ワインを造っているという。エスクリ向けのワインは、和のテイストをイメージし、和食に合い、日本人が飲みやすく、親しみやすいものを目指した。

モートン氏は、「オーストラリアでは日本食レストランが多く、2週間から1カ月待ちの状態だ。どれだけ日本の文化、食事をリスペクトされているかを知っており、造れるのは名誉なことだ。日本に行って日本食のリサーチも行った」と述べる。

また、「モエ・エ・シャンドンでシャンパンを造っていた経験から、様々なスパークリングワインを造っている。バックグラウンドとして、家族がワイナリーを経営しており、生まれた時から培ってきた自分の感覚が一番のスキルだ。18歳でワイン醸造の学校に行き、本格的に造り始めた。愛と情熱を持って一所懸命にワインを造っている」と語る。

オーナーのジミー・ウォン氏は、レザベラトロールを添加したワイン「ジャラリッジ レスベラトロール ブロッサムレッド」について、「世界で初めて造られたワイン」と強調する。両親が心臓発作などを患った際、病院からワインを飲むことを推奨されたといい、同商品が誕生するきっかけになった。レザベラトロールはポリフェノールの一種で、赤ワインとピーナッツの渋皮に含まれており、肌の活性化や細胞活性化に繋がるとされる。

ワイン醸造責任者のマーク・モートン氏(左)、オーナーのジミー・ウォン氏(右)

ワイン醸造責任者のマーク・モートン氏(左)、オーナーのジミー・ウォン氏(右)

ウォン氏は、「発酵段階で添加しているが、味にバラツキがある。飲みやすいように、味や香りをコントロールしている。そこが腕の見せ所だ。手間や技術を考えればもっと高く売れるが、フィロソフィーとして、リーズナブルな価格でできるだけ多くの人に本物を楽しんでほしい」とこだわりを語る。

〈酒類飲料日報 2018年3月26日付より〉

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