SG発動対象は全輸入牛肉の約2割で一般消費者への影響は限定的-山本大臣

  山本有二農水大臣は28日の閣議後会見で、同日に発表された貿易統計で冷凍牛肉の4~6月の輸入量が関税緊急措置の発動基準数量を超えたことを受け、関税緊急措置が発動することを発表、国内への影響や同措置で関税率の上昇する相手国への対応などを説明した。

山本大臣は、最初に「輸入牛肉の関税緊急措置に関して、本年の第1四半期の冷凍牛肉の数値が確定し、協定の発動基準数量を超過した旨の報告があった。この結果、関税暫定措置法の規定に基づき、8月1日から来年3月末まで、一部の国からの冷凍牛肉について、関税率が現行の38.5%から50%に戻されることとなる。適用対象となるのは、我が国とEPAなどが発効していない国。具体的には、米国、カナダ、ニュージーランドなどからの輸入冷凍牛肉となる。この関税緊急措置は、ウルグアイラウンド合意の際に、WTO協定で認められた、50%の関税水準から、38.5%まで関税率を引き下げることの代償としてパッケージで導入されたもの。この措置は発動に先立って、政府の調査、決定が必要な一般セーフガードとは異なる。客観的な数量要件を満たせば、政府の裁量の余地なく、自動的に発動する仕組みとなっている」と、関税緊急措置の仕組みについて説明した。

発動の影響や対応では、「発動の対象となる冷凍牛肉は、全輸入牛肉の約2割にとどまることから、一般消費者への影響は限定的と考えるが、牛肉の価格動向の調査等、適正な対応をしていく考えだ。発動の経緯や制度の趣旨は、関係省庁との連携の上、米国等主要関係国に丁寧に説明を行っていく」と、米国などに説明を行っていくことを明らかにした。

その後の質疑では、「アメリカとの日米経済対話などもある中、影響があるか」との質問に、大臣は「輸入急増に対する実効性のある歯止めとして設定されたもの。WTOに関わる国々の共通認識とはいえ、38.5%から50%にあがることによる、生産者、輸出業者、関連の方々に衝撃を与えるものと考えている。関税暫定措置法の法律の中で決まっていることで、裁量の余地がない。そういったことを誤解の余地がないよう、損失を被るであろう方々に丁寧に説明する。これが我が国で取り組むべき必要な措置であろうと考えている。関係省庁が先週から、説明しているところだ」とし、米国などに説明し理解を得る考えだ。

また「法的に問題ないといっても検討の余地はあるのではないか」との質問には、「法律があるので、自動的に失効する明文が無い以上継続する。TPP協定では、発効した際には、牛肉に関する関税の緊急措置を適用しないということが明文化されている(TPPのセーフガードに移行)。TPPは米国も含めて合意をしたわけであり、その流れの中でTPPが発効する見込みだった。このため順当にこの問題は解決できていたという認識だったが、TPPが発効しないことになったため異例の措置となった」と指摘した。

「4月、5月の輸入量から発動は見通せたと思うが、発動にいたるまでに農水省として業界への呼びかけや対応をしてきたか」との質問には、「発動基準の取り方は、四半期ごとになる。年に4回あるが、その意味で予測しても対応する期間が短い。日豪EPAでは年に1回であり、そういう予測と警告は可能であると思うが、WTOのセーフガードについては、我が国での警告、対話が十分に取れなかった」と述べた。「過去の発動を見ても、4~6月の3カ月だけの数字で発動するという仕組みに課題もあると思う」と問われ、「異例の措置であり、影響が強いということもあり、もう少し長いスパンで考えられればいいとは個人的には思う。実際TPPでは(このセーフガードは)実施されないという事にもなっている」と答えた。

  さらにセーフガードの発動による国内への影響については、「全体輸入量の約2割であり、業務用のものが多く、一般消費者へ直ちに影響のあるものとは考えていないが、限定的とはいえ、影響がないとは言えない。価格などを注視しながら、影響がないようしていきたい。なにより、貿易相手国との友好関係が大事だ。我が国の肉類の輸入に支障が起きないよう、友好を維持するための措置が重要。主に、米国にしっかりと説明していく」とした。