〈地元に根差したブランドづくり〉
吉野ジーピーファーム(吉野毅代表取締役)の、高山農場(岐阜県高山市)と中津川農場(岐阜県中津川氏)の2農場では、一貫経営を行っており、抗生物質・合成抗菌剤・ホルモン剤を一切使用しない、「無薬豚」の生産を追求している。

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飼養する豚は、EM(有用微生物群)飼料を利用することで豚の健康維持と育成率を高めているほか、肥育期には麦30%を、さらにオレイン酸を高めるため地元産の飼料米(玄米)を20%配合するなど、地産地消の取組みも行っている。また中津川農場では地元特産品の栗きんとんの原料となる栗を与えて、「栗旨豚」を生産するなど、地域貢献の取組みを進めている。
「栗旨豚」に与える栗

「栗旨豚」に与える栗

〈飼料の特徴〉
配合飼料の年間使用量は3,700tで、飼料用米は400t(16年度)。飼料については03年から豚の腸内で有用細菌の働きを助け、有害細菌を減少させるEM菌(有用微生物群)を飼料に添加した「EMフィード」を利用している。これにより、豚の腸内細菌が正常化、有用菌の増殖、有害菌・病原菌が抑制されることで健康が維持される。育成率の向上にもつながっており、同社の無薬豚の取組みにおいて「EMフィード」は不可欠なものになっている。

また09年からは飼料用米の取組みを始めており、中津川市および高山市の稲作農家から当初は年間37t程度を生モミで購入していた。現在では400tと10倍以上の取扱規模となり、コシヒカリが1kg当たり27円(税込)、その他うるち米が25円(同)、飼料用米が20円(同)で購入している。その理由として、「人間が食べて美味しいものであれば、豚が食べても美味しい。この豚は(飼料用米ではなく)コシヒカリを食べていることについても優位性がある」(吉野氏)としている。飼料用米の買取先は両市で13戸・80ha の作付面積で生産している。飼料用米の配合率は豚1頭当たり約20%で、概ね30kg 程度。種豚には与えておらず、肉豚の仕上げ期のみ与えている。

稲作農家も地元ブランド豚である「飛騨旨豚」に食べさせたいという意識が高く、彼らと連携しながら作付けを検討する。また稲作農家には食用米と同じ生産体系で生産してもらっている。飼料用米の取組みについても、「かなりコストを下げるよう努力しているが、現在はトウモロコシ価格もかなり落ち着いてきており、飼料米とのコスト差が目立ってきている。しかし、我々は稲作農家との連携を通じた地域貢献を目指しており、こんな美味しいコメを食べた豚は絶対に美味しい豚肉になるという思いで取り組んでいる。流通サイドのイオンとも様々な食味テストなどを重ねながら取り組んでいる。稲作農家と流通業者とのウィン・ウィンの関係をどのように作り出していくのか、これが今後の養豚のひとつの進むべき方向性だ」と吉野氏は強調する。

〈地域との関わり〉
地元生産者との連携を通じた地域貢献にも重視しており、飼料用米の取組みのほかにも中津川農場では12年から地元特産の栗を与えた「栗旨豚」のブランド展開も進めている。「栗旨豚」は「飛騨旨豚」のなかでメスのみを選別、通常の「飛騨旨豚」の専用飼料に加えて、中津川地域で採れる栗を1日当たり200g以上、1カ月間与えている。さらに「美味しくなるよう、最後のダメ押し」(吉野氏)として、出荷前の7~10日前には蒸し栗も1日当たり300g以上与えている。吉野氏によると、「栗旨豚」は固定相場で「飛騨旨豚」の100円高で販売しているが、コスト的には採算が合わないという。しかし「栗旨豚」をもとに地元中津川の地域貢献になればいいという思いで続けていく方針だ。実際に東京都内のある高級店ではロースで100g当たり600円、カタ・バラで400~450円程度で販売されるなど、流通・販売サイドも季節性の商品として「栗旨豚」への価値を見出して販売している。また地元密着型スーパーでも観光客の人が訪れ購買しているほか、地元の料亭では栗の季節が始まると栗懐石のメニューとして「栗旨豚」を使ったメニューが提供されている。

「栗旨豚」は現在、年間200~250頭の出荷規模だが、「市や地元飲食店とのタイアップ企画の構想もあり、増やそうとすれば500頭規模まで拡大することは可能なため、地元に根差したブランドづくりに取り組んでいきたい」(吉野氏)と意欲を見せる。

〈今後の展開〉
吉野氏は今後も無薬豚の取組みを続けていく方針で、感染リスクをさらに低減するため、将来的には農場ごとのAI・AO(オールイン・オールアウト)を目指そうとしている。農場内の豚をすべてAI・AOし、半年から1年かけて空舎期間を設けて農場を徹底的に清浄・消毒・乾燥させたうえで、新たな豚を導入する。安定した供給体制を維持しながらそれを実践するためには、最低3つの農場が必要となる。そこで、経営上の新たな取組みとして、岐阜県大野郡白川村に母豚規模400頭の一貫農場を建設しており、19年秋ごろに完成する予定だ。

白川村農場が完成した暁には、施設が老朽化した高山農場を一度閉鎖、改築しながらヘルス・ステータスを上げていき、中津川農場と白川村農場で生産をカバーしていく方針だ。「古い農場はヘルス・ステータスが低下しており、リニューアルすることで元の状態に回復させていく。実現すれば高山農場、そして吉野ジーピーファーム全体としての成績は大きく向上すると期待している。病気のない農場は非常にパフォーマンスが高いが、それを10年、15年スパンで継続させていくことができるかが課題となっている」と吉野氏はいう。白川村農場は、白川村の企業誘致で建設に至ったもので、養豚経営の企業誘致は全国的に珍しいといえる。世界遺産の白川郷とともに、白川村の名物になるような地域ブランド肉で地域振興を行おうと、畜産クラスター事業でプロジェクトが進んでいる。養豚のほかにも、飼料用米(約5ha)や地域雇用、耕種農家への堆肥の供給(年間約75t)など地域循環にも力を入れている。

吉野氏は16年に、岐阜県が選定する「飛騨美濃特産名人」に認定され、無薬豚や耕畜連携の取組みが地域振興に貢献していると評価された。「諦めずに無薬を続けることは非常に大変だが、今後も無薬にこだわり続けたい」、こうした吉野氏の情熱を社員一丸となって共有し実践している。ある意味、コスト追求型の養豚経営とはまったく別の方向ともいえるが、今後の地域に根差す日本の養豚の目指す方向性ともいえる。

〈畜産日報 2018年6月28日付より〉

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