〈農場訪問〉吉野ジーピーファーム(2) 飛騨旨豚の誕生

吉野ジーピーファーム・吉野毅代表取締役
無薬豚の取組みは、イオンPBの「育味豚」として世に本格デビューした同社であったが、無薬の取組みに対する情熱はとどまるところを知らず、「やはり安全・安心だけではだめ、日本国内はもちろん、世界に通じるおいしさを追求しなければならない」(吉野毅代表取締役)とし、新ブランド「飛騨旨豚」を立ち上げ、自社で商標を取得した。

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「『育味豚』の生産をやめて、そこからの移行期は大変だったが『飛騨旨豚』をつくり上げるために、飼料と品種を研究して中身であるおいしさも追求した」(吉野氏)と説明する。

その結果、「飛騨旨豚」は地域に根差した豚肉として、無薬の取組みを継続強化しつつ、品種は雌系をWL(ケンボロー)に雄系デュロックとバークシャー種の交配種を交配させた。バークシャー種の血統の特徴である緻密な筋繊維と筋束の細さから来る歯触りの良さ、さらにデュロック種のコクのある味わいを兼ね備えた肉質となった。出荷日齢こそ170日と10日ほど伸びたが、そうしたマイナス面を補って余りあるほど特長のある味わい・おいしさを実現した。

特にイオンに対してはいままで販売してきた「育旨豚」の供給がなくなるため、生産の切替えには苦労したという。それでも食べ比べると「飛騨旨豚」がおいしいとの評価をもらい、すぐに全量切り替えてほしいとの依頼を受けたという。実際に「飛騨旨豚」への切替えは09年から10年にかけて行われ、11年からは完全に切り替わった。

こうした経緯を経て、「飛騨旨豚協議会」(全農岐阜県本部・JA飛騨・JAひがしみの・JA東日本くみあい飼料・岐阜アグリフーズ・吉野ジーピーファーム)を設立。現在「飛騨旨豚」は、地元では肉の匠家、イオンで東海3県(岐阜、愛知、三重)と滋賀県および奈良県の約77店舗で販売されている。また、紀伊国屋では首都圏の旗艦店全店舗のほか、駅ビルのアトレの7店舗で取り扱われている。「今後も生き残っていくためには、『飛騨旨豚』のブランドの優位性を高めることで、ファンを増やしていくことが重要になる。だが、人は同じ味では徐々に飽きてくるもの。少しずつでも変化をさせて、安全・安心かつおいしさのクオリティを高めていかなければならない」(吉野氏)と力を込める。

〈この項、続く吉野ジーピーファーム(3) 衛生管理の徹底で無薬豚を生産

〈畜産日報 2018年6月26日付より〉

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