〈令和元年8月の需給展望 鶏肉〉供給増加でモモは上げ材料乏しく弱気の展開 ムネの末端需要は堅調で、月後半に強含みか

畜産日報 2019年8月8日付
例年、梅雨入りから夏場にかけて鶏肉の末端需要はモモが振るわない半面、ムネが堅調に推移するパターンとなる。ところが、今年は梅雨明けが遅れた影響やゴールデンウィーク以降の個人消費の冷え込みも加わり、食肉全体の需要が低迷。7月後半、モモは日経加重で530円(税抜き)台に落ち込むなど不振の度合いを強めた。これに対してムネは相対的にコストが安いため、量販店の特売や加工需要で物量こそ動いているが、相場を押し上げるほどではなく、月間通じて220円前後のもちあいとなった。

今月は来週の盆休みで産地工場が3日程度休みに入ることや、盆休み中は末端需要が地方を中心に牛肉にシフトする傾向にあるため、消費の意味で期待は薄いと言わざるを得ない。逆に盆休み明け以降は、節約志向の高まりや工場の稼働再開によって、ムネ中心に量販店の販促も期待される。現状の末端消費の状況、在庫状況などから見ると、モモの相場の上げは難しいが、ムネは後半にかけて強含みの展開となりそう。農水省市況(速報値)ではモモがジリ安の550円前後、ムネが横ばいの230~240円、日経加重ではモモ530円前後、ムネが220~230円と予想したい。

[供給見通し]
日本食鳥協会の生産・処理動向調査によると、8月の生体処理羽数・生体処理重量はそれぞれ前年同月比で2.1%増、3.5%増と予想している。前者は2カ月連続、後者に至っては5カ月連続で昨対増となっている。近年は鶏の耐暑性が向上しているといわれるものの、気象庁の季節予報では全国で例年よりも気温が高いと指摘しており、この猛暑で増体率の低下で、A級品など特定商品がタイトになることも考えられる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、8月の生産量は前年同月比2.3%増の12.8万t、輸入量は同7.5%減の4.7万tとしており、前月に続き供給量が多めと予想される。繰り返すが、季節予報ではとくに8月前半の気温がかなり高くなるとしており、猛暑による出来高への影響が気になるところ。

6月末時点の在庫量は国産が3.1万t(前年同月比4.5%増)、輸入が12.3万t(10.1%減)となっている。この間のモモの不振により凍結に回ったものとみられ、手前の在庫はさらに積み増していると予想される。

[需要見通し]
5月の大型連休明け以降から失速したモモの需要は7月に入っても学校給食の休みなどで低迷したままの推移となった。8月もこの状況は変わらないものとみられる。とくに盆休みの需要は牛肉にシフトする傾向が強いため、ムネを筆頭に実需という意味では後半が勝負といったところ。盆休み明けの節約志向が強まるなか、ムネについてはサラダや加工需要、また、唐揚げの代替として、麺物関連としてかしわ天を訴求するケースもあり、需給は締まってくる可能性もある。

また、夏場商材の手羽先、砂肝、ササミなどの荷動きも、梅雨明け以降は、多少マシになっているもようだが、例年ほどの需要はついていないようだ。ササミに関しては9月の「敬老の日」に期待といったところか。

[価格見通し]
基本的に夏場は鶏肉の不需要期にあるため、8月も相場が上がる材料は乏しい。需要は極端に悪化しているわけではないものの、供給も順調にあるため、末端消費によっては過剰感を強めることも考えられる。もちろん、在庫増により、凍結回しによる相場の下支えにも限界がある。

こうした状況から見ると、モモは弱気の相場展開となり、8月の平均相場はモモが550円前後、ムネが230~240円。日経加重ではモモ530円前後、ムネが220~230円と予想する。ムネは加工需要の動向によっては強含みに転じる可能性もある。

〈畜産日報 2019年8月8日付〉