〈原皮処理が滞ればと畜にも影響、畜産全体の問題としての取組みが必要に〉
牛原皮の輸出価格が急落し、原皮業界の採算が悪化、赤字経営を余儀なくされている。原皮処理が滞れば、と畜が回らなくなり、ひいては畜産全体にも影響しかねない。皮の加工は国内では環境問題などの影響で難しく、牛原皮はアジア地区に輸出し現地で加工する形が大半になっている。その牛原皮の輸出価格は、世界的な供給過剰と消費面での革離れで需給バランスが崩れ、2015年4月段階には1枚当たり8,909円だったものが、17年6月には5,419円、18年からはさらに急落し19年10月には1,810円まで下落した。これではコストに全く合わず、業者は赤字での輸出を余儀なくされている。

この要因について、東京芝浦原皮協同組合の林英彦理事長は、「牛の皮革製品の需要が世界的に振るわない。今年、香港で行われた展示会でも、なぜ皮革製品が使われないか、どう需要を拡大するかのテーマでセミナーが行われたくらいだ」と話す。これは2つの原因があり、「ひとつは天然皮革に対する一番の需要者であるはずの若者層のこだわりが弱くなっていること、もうひとつが天然皮革と人工皮革の差がなくなっていることが挙げられる。人工皮革は、天然に比べ傷がないこと、正方形で裁断が容易であることがある。天然は工程でクロムなどの金属を使うが、これは欧州では禁止されている。さらに人工皮革は軽く、スポーツシューズに使われることが多くなってきた」(林理事長)。

豚原皮は世界の貿易量に占める日本の割合が高いが、牛原皮は貿易量が世界的に多い。世界的な指標であるHTSによると、過去には1枚当たり70~80ドルだったものが、現状では工場渡しで26ドル前後に低下している。牛については、米国のと畜量が多く、しかも現地の好景気から、通常であればこの時期のと畜量は減るものの、現状でも1週間当たり65万頭弱のと畜が行われている。USDAによると20年のと畜量も1%増加するとの見通しが出されており、これは日本の1年分にあたり、さらに供給過多が続くと見込まれる。需要要因とともに、米国・中国の貿易摩擦も関係し、中国での革製品の製造が大きく落ち込み、これも牛原皮価格を押し下げている。なお、来年1月24日から春節が始まり、秋冬製品から春夏製品に季節的に需要が移るが、ウエットブルーの在庫がどのくらいになるのか、また船積みがどうなっていくか不安定要因が多い。

日本では、ホルスタイン去勢の皮は若齢牛で肌が良く、版も大きいため引合いが多い。一方で、黒毛・交雑は年齢的に高めであり、メスは薄く、小さいことで使い難い。さらにホルスタイン経産は月齢が高く、皮も痛み価格がつき難い。このため、産地的にはホルスタインの経産牛のと畜が多い地域の業者はさらに経営が厳しくなっている。

牛原皮は日本から、台湾、タイ、中国などに輸出していたが、この輸出価格は前述のように、15年5月ごろは1枚当たり8,909円だったが、19年10月には1,810円まで下落した。原皮業界としては、これではコストに全く合わず赤字となっている。牛原皮はと畜が行われれば、自動的に出てきて業者が引き取らざるを得ない。さらに、仮に国内で在庫を抱えても保管費用ばかりがかさんでしまうため、赤字でも輸出せざるを得ない。原皮業界は、赤字の中で市場、センターから原皮を受け入れているのが現状だ。仮に原皮を受けず、原皮の行き場所がなくなればと畜業務自体が止まってしまう。そうなると畜産全体の動きが止まってしまうことにつながりかねない。その意味で、原皮業界の事業が継続できる仕組みを、畜産全体の問題として考え、取り組む必要性が出ている。

〈畜産日報 2019年12月17日付〉