〈令和4年7月の需給展望 鶏肉〉国産品はムネ・ササミ需要高まる、モモは凍結作業もありもちあい、輸入品のコスト高継続、国内在庫減少で相場上昇か

6月の鶏肉需給は、国産生鮮では季節的に需要が強まるムネやササミ、手羽先の引合いが強かった。相場もムネを中心に強もちあいとなり、週を追うごとにジリ上げ展開となった。

不需要期を迎えたモモは、引合いこそ旺盛ではないが生産コスト上昇、さまざまな食材値上がりなどもあり、相場は下がらなかった。一部産地では、今後も人手不足が解消されない見通しで、例年よりも早く年末向け骨付きモモや、正月向けモモ肉の凍結確保の作業を進めたようだ。

輸入品は現地相場高もあり、輸入量が減少した。国内では、好調とは言えないものの一定水準の払い出しが続いており、国内在庫は今後漸減傾向と予測される。末端需要の盛り上がりによるものではないが、生産コスト高、為替の円安進行など、調達コスト上昇が続いている。

今後も国内在庫水準次第では、少しでも安価な玉を確保する動きが想定される。量販店では解凍品が一部で並ぶものの、一時期のような価格メリットが乏しく売れ行きは芳しくない。それでも、国産品相場の高止まりもあり、価格帯の品揃えの一環として一定需要が期待される。

6月の平均相場は、日経加重平均でモモが625円(前月624円)、ムネが326円(321円)と正肉合計951円、前月比6円高となった。前年同月比ではモモが5円安、ムネが30円高となり、正肉合計では25円高となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、7月の生体処理羽数は前年同月比1.5%減、生体処理重量も3.3%減と減少見通しとなっている。

産地によっては春以降、増体不良が見られていた。ただし8月には、処理羽数3.1%増、重量2.5%増と回復の見通しで、通年では微増傾向を維持している。

主要産地の北海道・東北地区の7月の処理羽数は3.8%減、重量は5.8%減と減少幅が全国平均を上回っている。8月には羽数・重量ともに4%前後の増加を見込んでいる。

南九州地区の7月は、羽数が0.7%減、重量は2.5%減と予測しており、羽数は微減だが重量の減少が目立ち、前年と比べて体重が乗っていない。8月予測では羽数が2.9%増、重量は1.9%増を見通している。7月は主要産地での減少を見通しているが、関東では羽数・重量ともに増加を見込んでいる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、7月の国産生産量は13.4万tと前年同月比2.0%と予測している。昨対減かつ、14万tを下回る見込みだが、4~7月の3カ月予測では、平均で1.9%増の14.0万tと前年同期比増を維持する見込みだ。

輸入品は、タイで人手不足による生産回復が追い付かず、輸入量減少を見込む。ブラジルは前年同月に、流通遅延などにより少なかったため、前年を大きく上回ると予測している。そのため、7月はタイの減少、ブラジルの増加により1.2%増の4.5万tを見込む。3カ月平均でも4.6万tと4万t台後半を維持する見通しだ。

〈需要見通し〉
国産品は夏本番を迎え、ムネ・ササミ中心の荷動き。加工筋では輸入品の高騰もあり、安定供給が計算できる国産に切り替える動きもある。モモは年末年始向けに凍結作業が進むが生鮮での販売を優先する。需要は強くないが相場はもちあいか。輸入品は5万tに届かない輸入量が続く。需給バランスでは出回りが輸入量を上回ると見られ、国内在庫は減少見込み。展開次第ではもう一段高の可能性もある。

〈価格見通し〉
国産生鮮はムネが強気、モモはもちあい推移と予測。例年であればモモはジリ下げ展開となるが、コスト高・輸入品高騰を背景に強気推移。7月の日経加重平均ではモモが630円前後、ムネが330円前後と見込まれる。農水省市況ではモモが640円前後、ムネが340円前後と予測する。

〈畜産日報2022年7月7日付〉