【米穀VIEW983】漂流する米政策Ⅵ 平成30年産に向けて 全国組織にマッチング「本当にできるのか」懐疑の声

米麦日報 2018年4月6日付
いわゆる“全国組織”「全国農業再生推進機構」の目的が、「昨年までの国の代行機関として生産数量目標を配分する」のか、「あくまで『需要に応じた生産の取り組み』等を推進する」のか、“内部”で意思統一を欠いている状況にある。特に公表された事業計画では、国の補助事業「米穀周年供給・需要拡大支援事業」(いわゆる50億円事業)を活用した「実需と産地のマッチング支援“等”」が盛り込まれているのだが、その実現性にも懐疑の声があがっている。第3回総会(2月16日)「議事概要」には、以下の件りが登場する。

▽日本炊飯協会「補助事業への応募も検討するとの説明があったが、販売費は当事者が負担するのは当然のこと。まずは自助努力ありき。その上で何かということであればわかるが、補助金獲得という手段のための一環だと、改革していこうというなかで、結局は補助金頼みで工夫が出なくなる。改革に逆行するのではないか。納得できない」

▽事務局「(略)与党で整理したイメージの中で、マッチングの取り組みを国が支援すると明記されており、推進機構として補助事業の検討は必要と考えている。決して補助金頼みですすめているわけではなく、マッチング以外の取り組みも検討していきたいので、ご理解戴きたい」。

▽米穀機構「(略)『個別マッチング』について、ビジネスの世界に入り込むことは相当精緻な調整を要する。業務負荷とのバランスが難しいと感じた。また(略)『出来秋以降に作付実績等を確認』とあるが、文言だけ読むと、主食用米の目標配分の実績確認を行い、できの悪い県協議会を指導するようにも読める。表現の問題だと信じたいが、これが公表されると一部マスコミから変な形で報道されかねないのではないか。予算について補助事業への応募を検討するとの説明があったが、補助金を受ける際には組織・経験・財務要件がある。財務要件について一番心配しており、補助金は概算払いも可能と書いてあるが、実際には精算払いになる。つなぎ資金は絶対必要になるので、このあたりをどうするかよく検討しないと、手を挙げたが採択されないということになるので、注意が必要」

▽事務局「需要動向調査については課題も多い。個別マッチングの前提として、どこまで精緻な調査ができるか、需要の重複が起きないかなど課題はある。その意味では、意見やアイデアをいただきながら、できるところから取り組んでいきたい。作付実績等の確認について、主食用米の目標配分は全く想定していない。あくまで需要に対し、どういう対応があったか確認をしながら進めていくということ。補助事業の要件についてはご指摘のとおり。先に概算で補助金を受けることは難しいだろうが、当面発生する費用は、事務処理規程にもとづき全中が受託会計で対応する。ご懸念を払拭できるよう、準備をすすめたい」。

▽全国米穀工業協同組合「我々は実需者ではなく流通業者の団体であり、組合員ごとに仕事の内容は違う。内部でしっかり本機構についての確認はしていないのだ。事業計画には良いことが多く書いてあるが、本機構で本当にできるのだろうか。とりあえず書いただけでしない、売れる米づくりを目指しているのに全国で決めたことが農家まで浸透しない、ということを心配している。次の理事会で、本機構でどのように意見を出すか確認する。マッチングについても、現在の事業実施主体である(株)グレイン・エス・ピーが大変苦労している。しかし、本機構では同社に比べて小回りも利かないし財源もないので、どうなるのかという懸念を持っている」▽事務局「今後取り組んでいきたい内容として提案したが、まだ絵に描いた餅という面はある。しかし、需要に応じた生産に向けて、実需者団体・流通業者団体・生産者団体で協力して、できるところから取り組んでいきたい。今年度、(株)グレイン・エス・ピーがマッチングフェアを全国11会場で開催しているが、難しい部分があるとも聞いている。会員や構成員に参加戴けるような、より良い取り組みについて検討していきたい。補助事業に応募し取り組んでいくことも検討したい」

▽全中「様々な業界の方から米づくりについて意見を戴いている。外食・中食について意見を戴いているが、需要に合う米づくりを進めていきたい。そのために全中、全農、会議所など様々な組織があるので、組織内で情報提供を進め、前向きにやっていきたい。どこまでやれるか心配もあるかと思うが、皆で議論して良いものにしたい」。

〈米麦日報 2018年4月6日付より〉

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