【米穀VIEW984】漂流する米政策Ⅵ 平成30年産に向けて マッチング実現性に対する疑問の背景に「商売経験のない団体が事務局」

米麦日報 2018年4月9日付
いわゆる“全国組織”「全国農業再生推進機構」が密やかに公開したホームページ(http://www.zenkokusoshiki.jp/)に掲載されている第3回総会(2月16日)「議事概要」には、事業計画に盛り込まれた、国の補助事業「米穀周年供給・需要拡大支援事業」(いわゆる50億円事業)を活用した「実需と産地のマッチング支援“等”」の実現性に対する懐疑の声が、まだまだあがっている。その背景には、全国組織の目的が、「昨年までの国の代行機関として生産数量目標を配分する」のか、「あくまで『需要に応じた生産の取り組み』等を推進する」のか、意思統一を欠いている点もあるが、そもそも全国組織の成立過程に対するある種の疑念があるものと見られる。

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この点、ある関係者は、「要は与党に言われてイヤイヤ作っただけの団体。真に実需と産地のマッチングをめざすなら、生産者団体である全中に事務局が据え置かれたことに疑問を感じる。しかも全中は全農と異なり、“商売”経験のない団体。マッチングの実現性に疑問を抱くのは、むしろ当然だろう」と指摘している。第3回総会の「議事概要」に登場する件り(【米穀VIEW983】の続き)は以下の通り。

▽炊飯協会「説明に『価格』とあるが、マーケットインでは品質だけでなく価格も重要だ。価格が上がると需要が沈むので、価格は非常に重要だ。需要に合った品質のもの、多収量・多収穫、いかにコストダウンするかという流れだと思う。生産コストを4割削減と安倍総理も言ったが、実際にコストダウン出来た後にどうするか、一部は実需者・消費者に還元すべきだが、そうした議論が全くない。

消費者から見放されたら需要が成り立たないので、適正価格かどうかが大事であるのに、今の米の価格は安すぎるから上げろという議論しかされてない。消費者からみると高すぎるということもある。平等に扱わなければならない。生産コストもどう削減できるか、これは農業者団体でないとできない。主体的な情報共有の取り組みともあるが、多収穫など 1~2年でできるものではない。作る側でも買う側でも2~3年かかる。価格、コストに関する説明責任は問われるので、調査にぜひ盛り込んでいただきたい」

▽事務局「生産現場では多収の取り組みを推進しているが、実需者と協力しながらやりたい。すぐにできるわけではないだろうが、お互いに理解してやっていきたい。価格は立場によって意見がいろいろあるが、どの価格が良いかという議論に終着点はない。価格は取引によって決まるので、ルールは難しいかと思うが、推進機構では価格安定が目的だと思っている。希望価格帯を示していただくといったことも需要動向調査でできないか考えている」。

▽日米連「個別に長年生産者との交流商談をやっている。昔からの、生産者から全農を通じて卸、小売というルートは長年続いていたが、現在はどこが主流か分からない流通の状況だ。本機構で議論されているのは、それぞれ要求、ニーズも団体ごとに異なる。機構がすべてまとめて何かを提供するのか、個々の組合が自分達の考え方で生産者とのマッチングをやるのか、それを支援するのか、そのあたりを決めるとなると時間もかかるし、国も生産調整に関与しないと言われているが、30年産の生産には間に合わない。(2月)11日にも200名規模で東京・両国で生産者とのマッチングを行ったが、規模の大小もあり生産者も一律ではない。生産者をまわって、付加価値を宣伝しているが、我々が望んでいるのは業務用だということだが、価格はいくらかというと1万5千円。これでは業務用に納めてもらっても、販売する方が儲けがほとんどないくらいになる。具体的に生産者と話し合う機会が少ない。業務用向け品種を提案しても、中々受け入れてもらえない。商品ニーズに合ったコメを作ってほしい。大手の量販店等とルートを持つところでは、通年契約やは種前契約などできるが、小規模の業者はそこまでやれない。個々の組合でやらないといけないが、努力している人に対してどうやればうまくいくのか、そういうことについてアドバイスいただきたい」

▽事務局「事業計画にある取り組みで、それぞれ会員団体を支援していきたい。マッチング支援、それぞれの産地と実需者を結びつける場の提供していきたい。需要動向調査も産地にしっかり届くようにニーズを伝え、需要に応じた取り組みとなるよう検討していきたい。

〈米麦日報 2018年4月9日付より〉

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