国内研究機関で育成された大豆品種やその加工食品を紹介/農研機構

大豆油糧日報 2018年3月26日付
農研機構は22日、近年、健康・安全・安心の点から、国産大豆の人気が高まっていることを受け、第2回品種マッチングミーティング「特色ある国産大豆品種の開発と利用」を都内で開催した。日本では、さまざまな色やサイズの大豆品種や機能性成分を高めた大豆品種が開発されており、それをうまく利用することにより、豆腐・納豆などに加え、煮豆、豆菓子、豆乳などの価値を高めることが期待できる。同マッチングミーティングでは、大豆加工食品の開発・流通・販売に係る参加者に、国内研究機関で育成された大豆品種、その加工食品を紹介した。

〈大粒で豆腐加工に適した「シュウリュウ」、病気に強く、機械での収穫でも倒れにくい〉
農研機構次世代作物開発研究センター高橋幹氏は、国産大豆の現状に触れ、供給量の不安定性、それに伴う価格の激変が国産大豆の需要拡大への障害になっていることに言及し、実需者のニーズに応えるためには単収向上・安定化が重要な課題と指摘した。

大粒で豆腐加工に適する「シュウリュウ」は東北向けの品種で岩手県を中心に作付が拡大している。品質面では、「リュウホウ」などの対象品種と比べ、外観やおいしさなどすべての面で優れている。栽培特性では、ダイズモザイク病に強い。また、機械での収穫時に倒れにくく、サヤがあまり下の方に付かないので、刈取りやすい。岩手県では17年に600haと拡大中で、山形県、青森県でも奨励品種に採用されている。

「すずほのか」は東北など寒冷地向けの納豆用極小粒品種。これまでの小粒に比べて、柔らかく、色がきれいといったメリットがある。栽培面では病気に強く、倒れにくい。

「きぬさやか」は東北用の品種で豆乳に適している。大豆特有の青臭みやえぐ味の原因であるリポキシゲナーゼをなくし、えぐ味の主な要因であるサポニン組成を改良して、青臭さとえぐ味を抑えた品種となっている。

栽培面積を急速に増やしてきている「里のほほえみ」は北日本向けで豆腐用の品種。病気に強く、倒れにくく、サヤが下に付きにくいので、機械化収穫に適している。栃木県2000ha、山形県2000ha、新潟県1200ha、石川県1200ha、福井県900ha、茨城県1000ha、埼玉県200ha と普及拡大中で、福島でも奨励品種に採用されている。子実のたん白含有率も高く、豆腐などにも適している。

「シュウレイ」は富山県の一部で「エンレイ」と入れ替わり作付が進んでいる。ダイズモザイクウイルスに強く、倒れにくいといった性質をもっている。「エンレイ」よりはたん白含有率が低いが、豆腐用に適している。

「サチユタカA1号」はサヤがはじけにくい難列莢性品種。改良で目標にしたのは、「フクユタカ」「エンレイ」といった品種は生産者が作りなれていることもあり、良いところはそのままにして、悪いところだけ治すことを試みた。使う上では、元の品種と変わらない加工的性をもつようにして、サヤがはじけやすい「サチユタカ」に対し、「サチユタカA1号」はサヤがはじけにくく、実質収量が増加し、ゆくゆくは低コスト化にもつながり、価格の安定も期待できるとした。18年度から本格的な生産が始まり、兵庫県内では「サチユタカ」に替わって、「サチユタカA1号」に全面的に置き換わる計画。

「フクユタカA1号」もサヤがはじけにくくしたもので、無駄がなくなり、収量が上がる。愛知県では奨励品種に採用され、愛知県の「フクユタカ」は「フクユカタA1号」すべて置き換わる。

「こがねさやか」は中粒でたん白含有率が高くしょうゆやみそに適している。大豆の青臭みの原因となる酵素をすべて欠失していることから、豆乳などの製造に適している。

「あきまろ」は広島県の奨励品種に採用され、同県の主力品種になっている。みその加工適性が高く、特に淡色みそは色の明るさ、照りなどの色調が良く味の官能評価も良好で、淡色みその標準品種「トヨコマチ」と比較して同等以上と評価されている。

「はつさやか」は「フクユタカ」「サチユタカ」より早熟で青立ちが少ない品種。四国中国向けで、たん白質含有量が高いことから豆腐の加工性に優れている。外観品質も良好で、みそ、煮豆、納豆の加工にも適している。

〈大豆油糧日報 2018年3月26日付より〉