USSECが大豆セミナー開催、インフォーマ社が世界・米国の動向を解説

インフォーマ・エコノミクス社シニアバイスプレジデント ケン・エリクセン氏
〈米中貿易摩擦を懸念、世界の大豆需要は強く「混乱はチャンス」か〉
USSEC(アメリカ大豆輸出協会)は日本植物油協会、油糧輸出入協議会の協賛で「世界及び米国の大豆事情」と題したセミナーを都内でこのほど開いた。講師は米調査会社のインフォーマ・エコノミクス社シニアバイスプレジデントのケン・エリクセン氏が務めた。

はじめに世界農場市場については「貿易摩擦が重要な問題になっている。中国が米国産大豆や豚肉に25%の報復関税を課す考えを発表した後は、シカゴ大豆は安値を付けた。しかし実施時期などについてはまだ交渉の余地がある。そもそも世界の大豆需要は強く、混乱があったとしてもチャンスと捉えることができる」と述べた。

世界の大豆需要については「アジアで需要が伸びている。多くの地域で人口が増加している。世界ではこの数年間、生産量が需要量を上回っている。米国で気候に恵まれたこと、南米やウクライナ、黒海周辺で生産が拡大した。しかし17年産は、南米での天候不順もあり生産量は前年を下回った。しかし、今後も世界の需要量は拡大するだろう」と述べた。また世界の大豆生産の拡大には、投資も重要であり、米国では最先端技術を導入することで収量が増え、世界の需要に応えているとした。食用油需要については、この数年で需要量が増加しており、在庫が減少していると述べ、特にパーム油は生産が減っている一方で、使用量が増加しているとした。

〈米国Non-GM大豆作付、プレミアム期待でミズーリなど拡大傾向〉
18年産米国大豆の作付見通しについては、現段階では降雪などにより作付が遅れている地域もあるが、18年産も前年産程ではないが、作付面積増加が見込まれるとした。また米国における大豆搾油量が近年伸びているが、今後も搾油量は増加するとの見方を示した。

また、米国におけるNon-GM大豆生産については、「今年は増える可能性がある。従来は作付面積の約94%がGM大豆だったが、今年は93.0~93.5%前後になるのではないだろうか。背景には、生産者がNon-GM大豆の生産を支持しており、プレミアム(奨励金)を得られるとの期待がある。プレミアム価格は16年夏から17年春までは低調だったが、その後は安定しているようだ」と説明した。州別の生産動向については、ミズーリ州で17年産は23%増加し、ミズーリがNon-GM大豆生産のリーダーだとしたほか、ノースダコタやミネソタ、ネブラスカでも拡大の動きが出ているとした。

南米産大豆については、17年産は高温乾燥天候の影響でアルゼンチンが不作となり、輸出量も減少するとしたが、次年以降は回復するとの見方を示した。中国の需要については、搾油量が毎年増え続けているなかで、中国政府は国産大豆の増産を図る動きもあるが、畜産業が盛んなため大豆ミール需要は強く、中国の大豆輸入量は1億tを超えて、今後も伸びるとの見解を示した。

輸入先では米国が35~40%、ブラジルが60%を占めている。世界大豆輸出量約1億5,000万tのうち、1億t近くが中国に輸出されている。世界の大豆輸出量の大半を中国が輸入しているわけだが、国内需要をまかなうためには、ブラジル大豆の輸入量も増えるが、カナダやウクライナからの輸入量も増える可能性を示唆した。

その上で、「中国の需要を満たす大豆を供給できる国は少なく、仮に中国がブラジルからの輸入量を増やしても、米国大豆は他の地域で需要を探ることなる。しかし中国が大豆を求めても、アルゼンチンには中国が求める量は無い。結局は米国が最良の供給国なのだが、それにしても貿易摩擦は大きな問題だ」との見解を示した。

〈大豆油糧日報 2018年4月25日付より〉

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