J-オイルミルズ、油脂、油脂加工品、食品・ファインの3事業部制に再編へ

J-オイルミルズ 八馬史尚社長
J-オイルミルズは17年度決算概要と18年度施策の記者説明会を本社で17日開いた。そのなかで、八馬史尚社長は18年度施策について、これまで製油事業主体だったセグメントを、油脂、油脂加工品、食品・ファインの3事業部制に再編することで、成長加速を図る考えなどを示した。

始めに八馬社長は増収減益となった17年度決算(売上高は前期比1.7%増の1,833億6,100万円、経常利益は11.9%減の51億3,700万円)について、大豆のコストはプラスに作用したものの、菜種のコストや為替、オリーブ油など購入油価格の上昇などにより、37億円のマイナス要因となったとした上で、「(コスト上昇に対して)昨年は2回の油価改定を発表したが、残念ながら油脂コストを打ち返すには至らず、大きな減益要因となり、育成事業やコスト削減の取り組みにより営業利益を確保した」と振り返った。

続いて八馬社長は現中期経営計画(17~20年度)の進捗について、「今回の中期計画は構造改革をしっかり進めながら、事業の効率化・スリム化に取り組み、そこで得られた経営資源を成長領域に投資していくという流れをしっかり作っていくことをベースに、それを実現するためのガバナンスや品質保証などを含めた経営基盤、人材育成、ブランドを強化することが狙いだ」と前置いた。その上で17年度の成果として、油脂事業の体質強化・高付加価値品の拡大については、オリーブ油の市場拡大では原料高騰により価格改定を行ったことも影響し、踊り場に差し掛かっているとしたが、風味油「J-OILPRO」へのブランド刷新などで成果を得たとした上で、今年の「長調得徳」のリニューアル効果に期待感を示した。ソリューション事業の強化では、大手コンビニや量販店で高機能性スターチなど同社独自素材の採用が増えたこと、海外事業では、タイ販売法人のソリューション提案の強化をそれぞれ成果として挙げた。

また、構造改革では味の素グループとの包材共同調達によるコスト削減、倉敷工場の稼働・神戸住吉工場の閉鎖による西日本での搾油拠点の再構築などを主な取り組みとして挙げた。

〈各事業で高付加価値領域を伸ばす、意思決定の迅速化を図る/八馬社長〉
八馬社長は18年度の事業施策については、△油脂事業の体質強化・高付加価値品の拡大=オリーブ油市場、「長調得徳」市場の拡大、製菓・製パン領域での「お役立ち」提案の拡大(インバウンド需要の取り込みなど)、スターチ・ケミカル領域での多様な価値創出(経時劣化耐性ニーズの拡大、チルド保存ニーズなどへの対応)、△ソリューション事業=油脂と高機能性スターチの組み合わせによる製品化(調味油×加工でんぷん、高機能性スターチ×調味油、マーガリンなど)、△海外事業=日本での成果を生かした「おいしさ創造」をアジアで浸透――を挙げた。さらに構造改革では、多様化するニーズに対応した生産の柔軟性向上、SKU(最小管理単位)の見直し・削減に取り組むとした。

さらに今年7月から、事業セグメントの再編による成長加速を図るため、これまで「製油事業」と「その他」としていたセグメントを、汎用油、機能性油を中心とする「油脂事業」、粉末油脂、加工油脂を中心とする「油脂加工品事業」、加工でんぷん・スターチ、ファイン製品(ビタミンK2、大豆微量成分など)、海外など「食品・ファイン事業」の3事業本部制に組織再編を行う方針を明らかにした。

八馬社長は「14年度当時は油脂加工品、食品・ファインの2事業で9億円の赤字であり、油脂しか利益を出せていなかったが、18年度は2事業で19億円の営業利益を予想しており、この4年間の構造改革と新商品投入により28億円の利益改善を見込んでいる。ただ裏返せば、油脂事業の収益力停滞が課題になっており、両面しっかりやっていく必要がある。各事業本部で高付加価値領域をしっかり伸ばすと共に、責任を明確化し、意思決定の迅速化を図りたい」との考えを示した。

〈大豆油糧日報 2018年5月22日付より〉

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