日清オイリオグループ、19年度は「設備投資を実績につなげ具体的成果を」/久野貴久社長インタビュー

日清オイリオグループ 久野貴久社長
――18年を振り返ると。

主要原料の動向を見通しも含めて振り返ると、大豆は米国産の豊作とブラジルでの順調な作付、高い在庫水準など供給面では弱材料が目立つが、米中の貿易交渉の行方次第では、シカゴ大豆相場が持ち直すことも想定される。その意味では足元の状況よりも、今年の北米における作付意向と、中国の需要動向が大きなポイントになるだろう。

菜種は、カナダは史上2番目の生産量が確保されたが、欧州・豪州では減産となっており、世界需給という意味では引き締まることが予想される。その意味で菜種の国際相場も、ファンダメンタルズは強いだけに注視していく必要がある。

パーム油は増産基調の中で国際相場は安値圏で推移しているが、在庫調整が一巡しつつある中で、生産国はバイオ燃料用途の取り組みに力を入れ始めており、底打ちの可能性もあるとみている。

〈「かけるオイル」市場を400億円規模に成長、意思を持って取り組む〉
――御社の事業展開はいかがでしたか。

家庭用油市場は金額ベースで、昨年4~9月は前年比1.4%増の719億円と堅調だ。中でも当社が商品ラインアップの拡充や各種プロモーションによって市場をけん引している、オリーブ油やアマニ油を中心とする「かけるオイル」市場は堅調に推移しており、当社の付加価値型事業のけん引につながっている。「かけるオイル」市場は当社が主体的に仕掛けていくことで、20年度には400億円規模の市場に成長させたいと考えており、来年度も意思を持って取り組んでいきたい。

業務用油市場では、外食市場は堅調、中食市場も順調に推移している一方で、人手不足の影響が拡大している。当社に限らず、搾油環境が比較的良好なことが追い風となり、さらに昨年度改定した、食用油の価格水準を維持できたことで、今年度上期は比較的好調な業績を上げることができた。

また、当社が推進しているニーズ協働発掘型営業では、営業とユーザーサポートセンターの連携した取り組みが定着してきている。業務用油においても付加価値商品の拡大が課題だが、「日清スーパーロング」シリーズや「日清吸油が少ないフライオイル」といった機能性商品が評価をいただき、拡販できている。加工用バルク油についても、堅調な外食・中食市場を背景とした需要増にしっかりと対応することで販売が増加している。

加工油脂事業では、業務用チョコレートやチョコレート用油脂の需要が堅調に推移する中で、当社は、国内と海外・アジアにおけるチョコレート需要の拡大は続くという想定の中で、国内外で設備投資を行っている。

その中で国内では昨夏に設備投資がほぼ完了、風味に特徴を持ったチョコレート素材の提供が可能となっており、その活用により来年度は需要増加に見合った拡販を図りたい。

インドネシアのサリムグループとの合弁による、チョコレート工場は4月稼働を予定している。立ち上げ時は時間が掛かることも想定され、じっくりと2~3年で収益に貢献できる体制を仕上げていきたい。

マレーシアのISF社は欧州向けだけではなく、中国などで新規開拓に着手しており、今後期待できる。またグローバルサプライチェーンの強化に向けて、イタリア・ジェノバに精製拠点を獲得しており、既存顧客へのサービス強化を前提に、周辺地域での拡販も図りたい。

ファインケミカル事業は化粧品原料の販売が好調だ。国内のインバウンド需要拡大に加え、とりわけ中国で販売が伸びており、安定供給と拡販に向けて横浜磯子工場で能力増強を進めている。

ヘルスサイエンス事業では、MCT(中鎖脂肪酸油)を中心に取り組みを強化しており、昨年4月に販売体制を強化すると共に、CMキャラクターにサッカーの長友佑都選手、モデルの長谷川潤さんを起用する形でのコミュニケーション活動により、一定の成果を得られている。今年はゼリー・パウダーといったMCT関連商品のさらなる販売強化にも努めたい。また、MCTは健康面だけではなく、機能面で活用の幅は広いと考えており、ユーザーサポート機能を活用しながら拡販を図っていきたい。結晶性油脂は展示会などで紹介に努める中で、引き合いをいただいており、新機能の開発と製品化に努めていきたい。

〈19年度は中期計画折り返しの年、設備投資を実績につなげ具体的成果上げる〉
――2019年の抱負としては。

19年度は中期経営計画(17~20年度)折り返しの年にあたるが、20年度の営業利益として130億円以上に設定している経営目標に対して、納得できる業績を上げる必要がある。さまざまな設備投資を17年度、18年度と進めてきており、この投資を当初計画どおりの実績につなげ、具体的に成果を上げていくことが必要だ。仮に当初計画とかい離する部分があったとすれば、軌道修正を行うことで20年度につなげていきたい。また、21年度以降の新しい経営計画で取り組むべきテーマについても、19年度中に検討を開始したい。

19年の課題としては、物流問題とグローバルサプライチェーンへの対応が大きなテーマとなる。特に、国内の物流問題は共同物流をさらに進めていくことが一つの解となる。一方で、独自で取り組む必要のあるローリー・バルク油配送は物流生産性の向上のための投資や仕組みの見直しを検討するタイミングがきている。また、昨年の教訓として、同時多発的な自然災害に対応できる、BCP視点での物流のあり方について検討していく必要を感じている。

このほか、待ったなしの状況となっている、パーム油の持続的な調達方法の検討や、生産技術の強化にも取り組みたい。

〈大豆油糧日報 2019年1月8日付より〉