昭和産業「半流動性油脂」は各部で連携して提案可能/山口龍也取締役常務執行役員インタビュー

昭和産業 山口常務
――前期(3月期)を振り返って

新型コロナの影響による外食の落ち込みにより、業務用油脂の販売は落ち込んだ。そういった環境下で、昭和産業の強みである油脂と食材に大豆たん白を加えたシナジー提案、販売を追求し、顧客の課題解決に貢献する営業スタイルを販売施策の中心に置き、提案レベルの深化・強化に取り組んだ。

前期の販売数量は、油脂は業務用の落ち込みを家庭用でカバーできず、トータルでは若干の減少となった。減少幅が比較的小さいのは、2019年に台風の影響で一時期出荷を制限していたため、2019年のベースが2018年から落ちていることも要因だ。

――コロナ禍での対応は

外食市場は売上が落ちており、コストが重要視される環境なので、長く使用できる油「キャノーラNEO」の品質を向上させたリニューアル品を発売した。加熱しても着色しにくいのが特徴だ。また、加熱しても不快臭が少ないため、店舗内での作業環境面でも改善を図れる点を訴求している。

もう一つは、「半流動性油脂」の提案を開始し、非常に高い評価を得ている。固形油脂は固くて作業性が悪く、コクが少ない。液状油脂では、テイクアウトやデリカの売場では揚げ物の油染みが気になる、商品にサク味感が欲しいなど、さまざまな要望があり、そういった課題を解決するために独自開発した。

べーカリーなどのフライ用途以外でも効果が期待できる。たとえば、練り込み用の油脂として製菓に配合すると、食感や口どけに効果が出る。昭和産業は油脂メーカーでありながら、穀物ソリューションカンパニーとして、製粉部、糖質部の顧客を持っており、各部で連携して提案ができる独自の方法がある。その強みを活かすことが出来る非常に面白い商品だと思っている。

また昨今、カレーパンブームが到来し、さまざまなご当地カレーパンがコロナ禍でも注目されている。そのような中、昭和産業は日本カレーパン協会とスポンサー契約を締結した。「半流動性油脂」は日本カレーパン協会の認定商品となっている。

――3月、6月からの価格改定について

過去に経験がない原料価格の高騰により、企業の自助努力ではカバーできない厳しい環境となっている。メディアでも世界的な穀物、植物油の暴騰が春先から報道されているため、ユーザーには油脂コスト上昇について理解されていると考えている。コロナ禍で外食需要の低迷はあるが、自助努力では企業として成り立たないということを丁寧に説明し、改定を進めている。

――現時点での商談状況は

順調に進んでいる。現在は3月分の改定を進め、5月の連休明けからは、6月分を進めていく。原料相場が高止まりする状況が続けば、3回目の改定の可能性もある。

〈大豆たん白は油脂や糖質との組み合わせで差別化〉
――今年度の方針について

昭和産業が長年手掛けている大豆たん白への注目度が高まる中、油脂や糖質、加工でんぷんなどと組み合わせ、提案内容の差別化を図ることで、冷食や加工食品メーカーへの販売を大きく伸ばしている。販路は多岐にわたっており、菓子メーカー向けや、外食、中食での用途も増えてきている。

2020年度下期に家庭用で「まめたん」を発売したが、非常に高い評価をいただいている。今後も業務用のみならず、家庭用でも商品開発を進めていく。

また、昭和冷凍食品と昭和鶏卵などのグループ会社の製品の販売協力も行っていく。業務用と家庭用の販路がある中、グループ会社のチャネルとのコラボもできるのが当社の強みである。

工場で発生した未利用食品や、顧客の工場で発生した残渣の飼料への有効利用も当社の特徴的な取り組みで、SDGsの観点からも、この分野は発展させていく。

――ボーソー油脂とのシナジー効果について

〈関連記事〉昭和産業がボーソー油脂をTOBで完全子会社化、米油事業に親和性と将来性

2020年7月のボーソー油脂の子会社化により、昭和産業の取り扱う穀物の幅は、なたね、大豆、とうもろこし、小麦に米が新たに加わり、業務用、家庭用の提案の幅が広がった。

TOBを実施してすぐに、昭和産業ブランドで家庭用の「健康こめ油」を発売し、オレインリッチ、オリーブ油と同じくプレミアムオイルのラインアップに組み込んだ。

また、当商品を対象としたプレミアムオイルキャンペーンを実施し、好評を得た。業務用ではボーソー油脂の販路に加え、菓子などの製粉のチャネルへの販路展開も期待できる。

加えて、米の持っている特性を使った技術開発を当社とボーソー油脂の研究所で連動して進めている。販路拡大のみならず、技術的な裏付けも含めたシナジー効果を追求していきたい。

〈大豆油糧日報2021年4月27日付〉