日清製粉、秋季経営セミナー開催 事業承継と地域創生で持続的成長を考える

秋季経営セミナーであいさつする日清製粉の横山敏明社長
秋季経営セミナーであいさつする日清製粉の横山敏明社長

<横山社長、顧客とともに新たな食の価値創造へ>

日清製粉は10月26日、東京・大手町の大手町サンケイプラザで「第38回日清製粉 秋季経営セミナー」を開催した。「事業承継」と「地域創生」をテーマに、企業の持続的成長に向けた経営課題や対応策について専門家が講演した。会場とオンラインを合わせて約260人が参加した。

冒頭、同社の横山敏明社長は、原材料や包装資材、物流費、人件費などの上昇が続く中、食品企業には適正な価格形成と需要の維持・拡大の両立が求められると指摘。価格競争だけでなく、付加価値を高め、顧客から選ばれる存在であり続けることが重要だとの考えを示した。

また、地政学リスクや為替変動などによって経営環境の不確実性が高まっていると説明。中長期的には人口減少や人手不足、健康・環境意識の高まり、生活者の価値観の多様化などへの対応が必要になるとし、地域社会との連携や持続可能な事業活動を通じて、社会的価値と経済的価値の両方を創出する重要性を強調した。

日清製粉は昨年、「その想いに、小麦粉でこたえたい。」と「食文化創発カンパニー」の新コンセプトを発表した。今年4月に社長に就任した横山氏は、同社が長年培ってきた強みを生かし、顧客とともに新たな価値創造に取り組む考えを表明。商品やサービスの開発にとどまらず、食の楽しさや豊かさを広げ、新しい食文化を生み出すことに挑戦していると説明した。

〈事業承継は「後継者がいる」だけでは解決しない〉

ファミリービジネスの事業承継について講演するKPMG FASの浅尾兼平氏
ファミリービジネスの事業承継について講演するKPMG FASの浅尾兼平氏

第1部では、KPMG FASの浅尾兼平執行役員パートナーが「ファミリービジネスの事業承継問題と向き合う:構造的な特徴と課題」をテーマに講演した。

浅尾氏は、事業承継について「後継者がいることと、継げることは別」と強調。後継者が決まっていても、経営者としての育成や周囲の信頼獲得には時間を要するとした。一方、先代経営者にも権限を手放す覚悟が求められ、後継者に仕事を任せ、失敗を許容し、自分とは異なる経営手法を認めることが重要だと指摘した。

ファミリービジネスには、創業家が資本面や経営面で影響力を持つ上場企業も含まれると説明。長寿企業は理念や品質、信用、ブランドなどの「守るもの」を継承しながら、商品やサービス、技術、市場などの「変えるもの」に柔軟に対応してきたとした。

また、長年の経営を通じて蓄積された理念や人材、技術、信用、地域との関係など、財務諸表には表れにくい「見えない資産」が企業の競争力を支えていると説明。食品企業については、地域の自然資源や食文化に企業の技術や知見を組み合わせて価値を生み出す「地域資源の紡ぎ手」と位置付けた。

事業承継の具体例では、先代経営者が議決権を保持し続け、後継者による経営体制づくりが難航した食品加工企業の事例を紹介。承継には先代と後継者の双方の責任に加え、経営幹部らの支援も欠かせないとした。

浅尾氏は、事業承継は株式や経営権の移転にとどまらず、企業理念や文化、従業員、取引先、地域との関係を次世代に引き継ぐ取り組みだと指摘。企業の将来像を描き、長年培ってきた価値を次の成長につなげる重要性を訴えた。

〈地域共創を企業の成長戦略に〉

地域の価値を企業成長につなげる取り組みを紹介するJTBの井上孝矩氏
地域の価値を企業成長につなげる取り組みを紹介するJTBの井上孝矩氏

第2部では、JTBの井上孝矩シニアディレクターが「地域の価値を、企業成長の力に変える」をテーマに講演した。井上氏は農林水産省の臨時専門アドバイザー、総務省の地域力創造アドバイザーも務め、企業と地域の共創に取り組んでいる。

井上氏は、人口減少や高齢化など地域が抱える課題は、食品企業にとっても原材料の調達や人材確保、ブランド価値向上などの経営課題に直結すると指摘。自身が地域共創に取り組んできた原点について、社会貢献ではなく、自社が生き残るための戦略だったと説明し、地域との共創を企業成長につながる取り組みとして捉える重要性を強調した。

具体例として、アサヒビール、ニッカウヰスキーと青森県弘前市による「ひろさき援農プロジェクト」を紹介した。弘前市ではリンゴ農家の高齢化や収穫期の人手不足が課題となっており、シードルを製造・販売する企業にとっても原料調達のリスクにつながる。

同プロジェクトでは、企業版ふるさと納税を活用して全国から援農ボランティアを募集し、収穫期に人手が不足する農家を支援。初年度は定員240人に対して300人を超える応募があったという。

井上氏は、産地の人手不足を「地域貢献」と捉えるか、「調達課題」と捉えるかによって、企業の投資判断も変わると説明。原料調達の安定化だけでなく、社員が生産現場を知ることで商品の価値への理解を深め、販売活動や人材育成にもつながるとした。

地域共創の効果については、取り組み自体の収益に加え、本業の売上やブランド、人材への波及効果、事業リスクの回避という3つの観点から評価する必要性を指摘した。

また、共創を持続可能な事業にするための考え方として「重ねる」「通う」「回す」「渡す」の4つを提示。地域と企業の課題が重なる部分に経営資源を集中させ、信頼関係を築きながら、補助金だけに依存しない事業として運営することが重要だと説明した。最終的には地域の担い手に主役を引き継ぎ、企業が伴走することが望ましいとした。

このほか、子どもたちが実際の店舗や事業所で仕事を体験する「Kidsジョブチャレンジ」なども紹介。企業と地域の共創は社会貢献にとどまらず、未来の顧客を創造する活動でもあると強調した。

〈取引先の経営課題に寄り添う重要性を共有〉

事業承継と地域創生について議論したパネルディスカッション
事業承継と地域創生について議論したパネルディスカッション

講演後のパネルディスカッションでは、日清製粉の関野修策取締役東京営業部長がコーディネーターを務め、事業承継や地域創生に取り組む時期と具体的な進め方について議論した。

浅尾氏は、事業承継について「先代から継いだ瞬間に、もうその次の事業承継が始まっている」と述べ、早い段階から企業の将来像や引き継ぐべき価値を考える重要性を指摘。井上氏は、地域共創について、経営課題の兆候が現れた段階から取り組み、企業と地域が目指す姿を「共通言語化」することが必要だと説明した。

最後に関野氏が日清製粉の営業担当者に求められる役割を尋ねると、浅尾氏は、取引先の経営者が抱える悩みに寄り添い、課題を共有することが出発点になるとした。井上氏も、日常的に顧客と接する営業担当者だからこそ、経営課題を把握し、必要な専門家や関係者につなぐ役割が期待されると述べた。

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食品産業新聞

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
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