日清オイリオグループ 新たな市場創造やユーザーの課題解決を推進、流通や生活者と「強い信頼関係を醸成」/三枝理人取締役専務インタビュー

日清オイリオグループ・三枝理人取締役専務執行役員食品事業本部長
日清オイリオグループ・三枝理人取締役専務執行役員食品事業本部長

――2022年度を振り返って

2021年度に続いてコロナの感染拡大と長期化、歴史的な油脂原料の高騰が長期化し厳しい年となった。コスト上昇に対し、大豆や菜種などを主原料とした汎用油については2021年度の4回に続いて、2022年度も4月と7月に2回価格改定を行った。

油脂原料の高騰は3階建てあるいは4階建ての構造だと思っている。1階部分は、世界的な人口増加に伴う油脂需要の増加をベースとしており、構造的な問題となっている。2階部分は、各国のCO2削減対策によるバイオディーゼルとしての新たな油脂需要の増加がコストアップを加速させた。3階部分は、異常気象による油脂原料の減産である。4階部分はさらに円安、原油高、物流費、ユーティリティコストの上昇などである。こういった多層的な要因が、価格改定の大きな幅と長期化に結び付いている。

コスト上昇は大豆や菜種、パームなどの油脂原料に留まらず、オリーブ、ごま、こめ、べに花、グレープシードなど多様な原料に広がっている。これら原料は生産量が限られており、コスト上昇幅も大きく、2022年7月に1回目、2023年3月に再度、大幅な価格改定を実施した。

コスト上昇については、3階部分の異常気象による減産を主要因とした高騰は緩和されているが、構造的に1~2階部分は変わっていない。加えて、オリーブオイルなどについては、コスト上昇が本格化するのはこれからだと思っている。

――家庭用と業務用での主な取り組みは

家庭用は、価格改定によって販売減少が起き、その後、値ごろ感の定着で需要が回復するということが繰り返された。業務用は、行動制限の発令や感染者数の拡大といったコロナの影響による需要の増減、コスト上昇を背景とした節減による使用量減の影響などが毎月のように起き、供給計画を立てるのに苦心した一年だった。

そのような中、当社は差別化商品として家庭用の「日清ヘルシーオフ」、業務用の「日清スーパー長持ち油」、「日清吸油が少ない長持ち油」などの拡販を通じて、新たな価格での市場形成に取り組んだ。それとともにオリーブオイル、ごま油、サプリ的オイル、味つけオイル、こめ油、業務用の機能性油脂など付加価値型商品群の積極的な拡販により、新たな市場創造やユーザーの課題解決を推進した結果、金額ベースで市場平均を上回る成果を得られた。

また、コスト面や需要面の課題に真摯に取り組むことで、流通や生活者の皆さまと、強い信頼関係を醸成できたのではないかと感じている。

〈値上げは市場価格に反映、2023年度は人手不足対応とコスト抑制がテーマ〉

――価格改定の進捗状況は

汎用油は2021年度の4回で130円、2022年度の2回と併せて累計kg当たり220円の値上げを行った。代表的な指標である日経の一斗缶相場は、値上げ前は4,100円だったが、2023年3月時点で7,200円と、kg当たり約190円上昇している。

家庭用はSCIデータによると、レギュラーとキャノーラ油の平均単価は197円から2023年2月には352円と、155円上昇している。日経POSでは代表商品の「日清キャノーラ油1000g」の売価は185円から2023年2月は352円と、167円上昇している。発表した満額には届いていないが、値上げが受け入れられ、市場の価格に反映していると言える。

――2023年度の方針について

油脂原料のコストは高止まりが続くと予想している。食用油の価値向上をベースに、適正価格での販売継続に加え、新たな値ごろ感での市場形成、各領域での需要喚起の施策に引き続き取り組んでいく。

生活者の防衛意識やユーザーのコスト抑制意識が高まる中、生活者が自分ゴト化できる価値、ユーザーが採用したいと思えるソリューションを「もっとお客様の近くで」展開し、商品やサービスの提案を通じて具現化することが使命だと思っている。

これまで培った生活者やユーザーとの信頼関係を大切にして、厳しい環境を乗り越えていきたい。

家庭用では生活者の食用油に対する「健康」と「おいしさ」の2つの期待を、マインド変化や生活者の変化と結び付け、「クッキングオイルの構造改革」、「かけるオイルの進化」によって、食用油の価値向上と継続的な市場の拡大を実現していく。

業務用は、今後の更なる訪日外国人の増加、コロナ5類の引き下げなどによって外食需要の回復が期待される中、人手不足の慢性化、食材コスト・光熱費などの上昇など、外食や中食産業を取り巻く課題を解決するため、次の2つのテーマを設け、「ニーズ協働発掘型営業」を進めることで課題解決の質を上げていく。

1つ目は「人手不足対応」で、「日清麺さばき油」などを活用したパスタや中華麺などのゆで置きオペレーションの提案や「日清素材のオイルを活用した調理の事前準備や仕込み工程の短縮、いわゆる時短を提案する。また、ピローオイルによる作業負荷軽減や、「日清炊飯油」の活用によるご飯盛り付けの作業時間短縮など、油による人手不足への対応を提案していく。

2つ目の「コスト抑制」では、酸価上昇を30%抑制する「日清スーパー長持ち油」や「日清吸油が少ない長持ち油」の拡販やフライオペレーションの最適化提案、純正ごま油にも負けない濃厚な香り立ちが特徴の「日清濃口調合ごま油」活用の提案を行っていく。

〈大豆油糧日報2023年4月27日付〉

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発行:
昭和33年(1958年)1月
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