【米国大豆のサステナビリティ】SSAPマーク大豆加工品の輸出支援開始/USSEC

(左から)ジム・サッターCEO、シンディ・パルスカンプ氏、ロズ・リーク氏、ランス・レーザック氏、ジョシュ・ガックル氏
(左から)ジム・サッターCEO、シンディ・パルスカンプ氏、ロズ・リーク氏、ランス・レーザック氏、ジョシュ・ガックル氏

米国大豆の約6割が輸出されている。他の作物と比べても高い比率で、アメリカ大豆輸出協会(USSEC)は最初に海外オフィスを設けた日本をはじめ、国際市場との長期的な関係構築に力を入れてきた。世界各国の企業からの要望を受けて策定したSSAP(アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル)は、米国農家によってサステナブルな農法で生産された大豆であることを証明する認証制度だ。同認証を受けた大豆を原料とした大豆加工品や飼料の包装にはSSAPのロゴマークを付けることが可能で、日本を含めて世界中で採用事例が増えている。

さらに、米農務省のRAPP(地域農業振興プログラム)を元に、新たな取り組みをスタートする。SSAPのロゴマークが付いた商品を輸出する際にUSSECが支援を行うというもので、日本の大豆業界からも期待の声は大きいという。

本紙では、「日米パートナーシップ・プログラム」に合わせて来日したUSSECのジム・サッターCEOとマーケットアクセス・戦略エグゼクティブ・ディレクター北東アジア地域代表のロズ・リーク氏、農家代表のUSSEC会長のランス・レーザック氏、アメリカ大豆協会(ASA)会長のジョシュ・ガックル氏、シンディ・パルスカンプ氏に独占インタビューを行い、サステナブルな農法の最新の動向、記録的な生産が見込まれる本年の生産見通しなどについて話を聞いた(インタビューは9月19日に実施)。

〈SSAPはさまざまな国際団体から評価、cope3ライフサイクル評価でCFPデータ使用可能〉

――まずは米国大豆のサステナビリティのアピールを

ランス カンザス州で農家をしており、私で5代目だ。父と兄弟も農家で、子供2人も農業を営んでいる。私たちにとってサステナビリティはとても大事だ。サステナブルでなければ次の世代に引き継げないからだ。

サステナブルの考え方としてはターゲットが動いていくようなものだと考えている。というのも祖父の世代は馬を使って畑を耕していたが、当時はそれがサステナブルだった。

今の時代はテクノロジーを使い、サステナブルなやり方で生産することで、より少ないものでより多くのことを成し遂げることができるようになった。

取り組みを裏付ける数字がある。カーボンスコアなどは他の大豆生産国に比べ、米国の方がはるかに良い数値が出ている。すでにある農地で生産をしているため、差が付くのはテクノロジーだ。米国では最先端のテクノロジーを導入している。AIが常に学習をしており、刈り取り時には作物の品質を見極めて、収量のロスを最小限に抑えることができる。位置情報によって畑全体を細かく管理することができるようになっている。かつては畑全体の平均を見ていたが、1ha毎、あるいはそれよりも少ない面積で作物の状況を細かく管理できるようになっている。

ジム 米国の認証制度であるSSAPは、日本をはじめ、さまざまな国の輸入業者からの問い合わせを元に策定するに至った。各企業はサステナビリティをどうやって証明するかに注力している。消費者が気にしているからだ。SSAPは大豆農家がサステナブルな慣行に則って生産していることを裏付けるツールとして開発し、独立した第三者機関が監査を行い検証している。

米国においては環境面だけでなく社会面での慣行も重視される。労働者の待遇や法や規則が順守できているのかも含めて重要になるが、SSAPはこれらも網羅している。8つの国際機関からベンチマークを受けている。FEFAC(欧州配合飼料製造者協会)も長年にわたってSSAPをベンチマークしている。

「SAIプラットフォーム」の評価でも最近、最高評価のゴールドレベルをもらった。他にもさまざまな国際団体からベンチマークを受け、評価されている。

日本の輸入業者がSSAP認証を受けた大豆を購入する際、米国の輸出業者からSSAP認証が引き渡される。日本の輸入業者からSSAP認証を買い手に移行していく仕組みも整えている。

搾油してミールと油に分ける場合もサステナブルな大豆で作られたミールとして訴求できる。

SSAP認証には2通りの使い方がある。1つはUSSECに登録してもらうと、豆腐や納豆、飼料の袋にロゴマークを付けることができる。もう一つの認証の使い方は、企業がScope3のライフサイクル評価をしたいと考えた場合、認証書に記載されているGLFI(世界飼料LCA研究所)が集めたカーボンフットプリント(CFP)のデータを使うことができる。

〈経済的なサステナブルも需要、テクノロジーで利益確保、ドローンで畑の状態を監視〉

ジョシュ ノースダコタ州で大豆農家をしている。米国農家としても、SSAPは価値あるものだと考えている。国際的なお客もサステナブルな慣行を気にしている。

農地を次世代に受け継ぐためには、経済的なサステナビリティも重要だと考えている。テクノロジーが進化しているおかげで、米国の大豆農家は畑に投入するさまざまなインプットを節約でき、より効率的な農業ができている。肥料や農薬を節約することで利益をしっかり確保できる。現在、コモディティ価格が上がっているのでコストは非常にタイトだ。GPSなどを使うことで雑草や害虫などの対策もでき、サステナブルな形で作物を育てられる。

ランスがha単位で把握できると言っていたが、われわれはもっと小さい単位で土壌や肥料の状況を解析できる。収穫が終わった秋の段階で、次のシーズンに向けてどういう栄養分を肥料として追加すればいいかを見極められる。それを元にして春と秋に肥料を撒いて、サンプルを取ったところでどのように改善したかを確認することができる。費用だけでなく、肥料なども節約できる。また、栄養管理は米国の各地域で重要視されており、新しいルールもできているが、テクノロジーを使うことで対応でき、SSAPでそれを裏付けられる。

シンディ ノースダコタ州の農家で、私の一家は110年以上前から大豆を生産している。重要視しているのは、正確であることと効率的であることだ。人間が土地を管理できるのは短い期間でしかない。そのために私の農地でも多くの慣行を行っている。グリッドサンプリングやハイドレート肥料の使用などだが、土壌の健康も重要だと考えている。土壌にベストな種子を播種して、ベストな大豆をつくることに注力している。

GPSに加えてドローンを使い、畑の状態を監視している。病気や害虫の発生している可能性があればドローンで確認し、栄養分のケアもドローンを使ってできている。大規模な装置を土地の上で転がすのではなく、ドローンを使うことでCFPもかなり改善している。今後もベストな大豆を届けられるように取り組んでいく。

〈日本の業界団体とパートナーシップ、サステナブルな事業運営を情報提供でサポート〉

――SSAPマークの日本や世界でのさらなる普及活動について

ロズ 私たちは日本でも多くの取り組みをしている。東京五輪前後からさまざまな施策を行ってきた。サステナブルな五輪にしたいと力を入れていた東京五輪の組織委員会にも、SSAP認証を認めてもらった。そこから複数の日本の業界団体とパートナーシップを組み、サステナブルな大豆の普及や認知度向上に努めてきた。女性の健康や大豆の使い方、料理のレシピ提案など多くの手段で、大豆が日本の文化の重要な一部であり、サステナブルにも貢献していることを周知する活動も行ってきた。食品以外の用途もある。東京五輪のメイン会場は、大豆油をもとにコンクリートの剥離剤を作り、メインスタジアムが作られた。

セブン-イレブンやスーパーでは豆腐、みそ、納豆、豆腐バーなどさまざまな大豆食品が並んでおり、サステナビリティに貢献できていると感じる。

食品メーカーにSSAPのロゴマークを使ってもらうと、その会社の事業にとってもメリットがある。それを見た多くの企業からも、サステナブルな大豆を使っていることを示したいと関心が寄せられている。業界の皆さんに、よりサステナブルな形で事業を営みたいという取り組みに対し、さまざまな情報提供でサポートしている。

今後、新たな取り組みプランがある。米国の大豆を使って日本のメーカーが大豆食品をつくり、他国に輸出する場合、USSECが支援する取り組みだ。USSECは82カ国で事業展開しており、さまざまなネットワークを持っているため、大豆加工食品の輸出の手伝いができる。この取り組みが可能になったのも、米農務省が新たに立ち上げたRAPP(地域農業振興プログラム)の後押しで可能になった。私たちとしてもワクワクしている。1956年に海外で初めてオフィスを設けて以来、米国と日本の皆さんとの長年にわたるパートナーシップをさらに強化できると思っている。

――取り組みの実施時期と予算は

ロズ いくつかの段階を経て、準備していく必要がある。各協会の会員企業を対象にして取り組んでいかなければならないことがある。また、JETROや農水省も日本からの食品輸出の関心は高く、日本の省庁とも取り組んでいく。戦略的に各ステークホルダーと整合性を取りながら進めたい。日本の政府、業界団体、米国の大豆業界、米国政府の面々と取り組む準備を進めている。

すでに4年分の予算は確保できている。米農務省に継続的に申請していくことで、しっかりとしたプログラムになる。より長期的に運営していきたいと考えており、今後はさまざまなパートナーを見つけ、他の資金調達も行い、プログラムに回すことも考えている。日本の業界団体の皆さんと話すと、こういう機会が得られることに関心が高く、喜んでもらえた。日本の人口動態が縮小していくことを考えると、製造業にとっては追い風になると思う。

〈大豆油糧日報2024年10月16日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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