久野新会長が会見、植物油をめぐる状況踏まえ、中東情勢への対応など抱負語る【日油協】
日本植物油協会(日油協)は25日、都内で久野貴久会長(日清オイリオグループ社長、写真)が会見を行い、植物油をめぐる状況を踏まえた上で中東情勢への対応など複数の課題を挙げ、新会長としての抱負を語った。久野会長は18年5月から20年5月まで副会長を、20年5月から22年5月まで会長を、22年5月から26年5月まで副会長をそれぞれ務めた。会見では、好きな植物油を使った料理が天せいろであることや、平均8,000歩のウォーキングを9年ほど続けており、2年前からヨーグルトをMCTオイルと一緒にほぼ毎日摂取していることなども明かした。
直近の植物油をめぐる状況について、「25年6月に米国環境保護庁がバイオ燃料混合比率引上げ計画を発表し、オイルバリューの上昇を引き起こした。加えて26年2月、米国・イスラエルによるイランへの武力行使を端緒とする中東情勢の混乱により、原油をはじめとした広範な物資の供給不安が世界中で発生するとともに、オイルバリューのさらなる上昇を加速させている」との認識を示した。
久野社長は、「植物油業界は植物油という国民生活、食品産業にとって不可欠な基幹的な物質を高い品質を維持しながら、合理的な価格で安定的に供給するという、わが国の食料安全保障の確保に当たって、極めて重要な役割を果たすことが求められている。植物油業界を取り巻く内外の環境が急激に、また大きく変動する中で、会員各社の事業活動全般をサポートするという協会の基本的な役割を踏まえ、その活動に取り組んでいきたい」と語った。
24年6月に四半世紀ぶりに食料・農業・農村基本法が改正され、それに伴い、新たな食料・農業・農村基本計画が策定され、食料供給困難事態対策法、合理的な費用を考慮した価格形成を図るための食料システム法などが新たに施行されるなど、農業・食品産業政策上の大きな見直しが行われた。それらを振り返り、「私は会長・副会長として、基本法の改正に当たって、食料安全保障の確保が大きなテーマとなるという認識のもと、不測の事態が発生してからではなく、国が平時から食料の需給などに関する正確な情報を国民に提供する取り組みが重要だという協会の意見を、行政に伝えることに努めてきた。その結果、新たな基本計画、事態対策法に植物油が位置づけられるとともに、基本計画には日米、日加、日豪など二国間協議の取り組みも明記された」と成果について紹介した。
その上で、「行政の動向を的確に把握し、新たな施策の検討段階から会員各所の意見、要望を踏まえた政策提言を行うことが、協会に求められる大きな役割と考えている。そのため、協会の総会、会員集会に農水省食品製造課の担当者に出席してもらうなど、普段から業界の事情、課題を理解してもらうためのアプローチが重要だ。正副会長、各部会、事務局それぞれで行政との対話を進めていきたい」と述べた。
〈農水省食品製造課との緊密な連携に努める、二国間協議は平時の関係性として強化〉
植物油業界が直面している諸課題の一つに、中東情勢への対応を挙げた。「協会としては産業部会を中心に、植物油業界への影響について情報収集、共有を図るとともに、農水省食品製造課との緊密な連携に努めていく」と述べた。
他の主要課題と協会の取り組みについても説明した。「植物油産業を今後持続的に発展させ、植物油を安定的に供給し続けるためのバリューチェーン上の主要課題を改めて整理する」とした。まず、調達サイドの課題として、油糧作物生産国の政策と密接に結びついたバイオ燃料需要の増大による油脂需要の増加と、それに伴う植物油相場の高騰、米国の関税政策などによる先行き不透明な世界の貿易体制、円安基調の為替相場などを挙げた。加えて、スコープ3のCO2排出量削減など、持続可能な油糧原料生産に関わる課題にも触れた。
「植物油製造事業者の努力だけではいかんともし難い構造的な事業環境の変化が進行しており、これらに対する取り組みとして、主要生産国との関係性の維持・強化が不可欠となる」と語った。
販売面の課題として、「今後も安定的に植物油を供給し続けるために、コストに見合った合理的な販売価格を実現していく必要に迫られている。その他に、2024年問題などの物流改革や、植物油の価値をさらに向上させるための技術開発も必要だ。何より植物油のコスト構造や価値などを広く理解してもらうための啓発活動も重要となってくる。協会としては、産業部会をはじめ、各部会の活動を通じて、これらの課題に対して取り組む。会員各社からの各部会への積極的な参画を期待する」と話した。
なお、中東情勢に関しては、「会員各社は植物油の生産、流通に要するさまざまな資材の調達や生産原料である油糧種子や資材の調達について、価格面も含めて先々の不安定さ、不透明さがあることから、生産計画を立てづらい状況となっている。操業に当たって差し迫った大きな支障が生じている状況ではないとの認識だが、産業部会では農水省食品製造課と業界の状況、行政の取り組みなどに関して緊密に情報交換を行っている」と説明した。
5月12日の鈴木農相の会見に触れ、「油脂の製造工程で必要な抽出用副資材であるヘキサンを含む12項目については、業界シェアの過半を占める事業者からの聞き取りができたと、発言されている。ヘキサンについては政府・農水省が供給元を含めたサプライチェーンの現状を十分聞き取りしていると認識している。こうした実態把握と合わせ、農水省の担当部局では、資材調達などの懸念や実際に問題や目詰まりが起きている個々のケースについて情報把握を進め、経産省と連携して、これらの具体的な事業者への供給に取り組まれているものと承知している。協会としても会員各社から提供された情報などについては、農水省食品製造課と協議を図っている」と話した。
また、今年は二国間協議のうち、日米パートナーシップは30周年、日加菜種協議会は50周年を迎える。「重要な点は生産者とわれわれがしっかりとコンタクト、コミュニケーションができているということだ。われわれはそれらの国から原料を輸入し、油やミールとして届けることになる。これがまさに平時の関係性の強化というものだ。その関係性をしっかりとつくっていき、今後もわれわれの礎として継続していくことが重要だ。これまでは安定供給、安定調達の面だったが、これからはスコープ3、CO2の履歴も重要な点になってくる。トレースができ、それを担保できるようなところまで含めた関係性の強化が求められる。それにはお互いの考えや取り組みを相互に理解しておく必要がある。定期的にこれらの会合を持つ、フェイストゥフェイスで行うことはとても重要だ」と改めて強調した。
〈大豆油糧日報2026年5月27日付〉







