日本茶がGI登録へ、国産茶の価値明確に 海外需要拡大でブランド保護強化

(左から)JFOODO 中山氏、日本茶業中央会 鈴木氏、農水省 佐藤氏
(左から)JFOODO 中山氏、日本茶業中央会 鈴木氏、農水省 佐藤氏

海外で日本茶の存在感が高まっている。抹茶を含む粉末茶需要の拡大を背景に、2025年の緑茶輸出額は721億円と過去最高を更新した。

一方で、国内ではリーフ茶の消費量減少に加えて、飲料用途などへの需要シフトや消費スタイルの変化が進み、茶の生産基盤や日本茶の価値をどう維持するかが課題となっている。こうした中、日本で栽培・収穫され、国内で加工された茶を「日本茶」として明確に示すため、地理的表示(GI)登録に向けた取り組みが進んでいる。

農林水産省、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)、日本茶業中央会などは5月11日、「日本茶の未来をつくる発表会」を開き、「日本茶」の地理的表示(GI)登録に向けた取り組みを説明した。日本茶GIは、海外で日本産茶のブランドを守るとともに、国内でも生活者が国産茶を選びやすくする狙いがある。

農水省の佐藤紳大臣官房生産振興審議官は、日本茶をめぐる情勢について、国内では茶の栽培面積が緩やかに減少し、生産量は7万t台で推移していると説明した。消費面では、1世帯当たりのリーフ茶消費量が減少する一方、ペットボトルなどの緑茶飲料は増加傾向にある。

海外では健康志向や日本食への関心の高まりを背景に、抹茶を含む粉末茶需要が拡大している。緑茶の輸出量はこの10年間で約3倍に増え、2025年には約1万2000tとなった。抹茶需要の拡大を受け、原料となるてん茶の生産量も増えており、2024年産は5336tと10年前の2.7倍に拡大した。

佐藤氏は「海外産のお茶との差別化を図り、高品質な日本産の茶のブランド価値を向上させていくことは極めて重要な取り組みだ」と述べ、茶のナショナルブランド確立に期待を示した。

JFOODOの中山勇センター長は、海外での日本茶ブランド構築について説明した。2025年の日本茶輸出額は720億円規模となり、2024年比で86%増加した。最大市場は米国で、輸出額に占める構成比は41%。米国向けは2024年の160億円から2025年は293億円へ大幅に伸びた。ドイツ、英国など欧州向けも拡大している。

中山氏は、抹茶について、粉末であるため飲料や加工食品の原材料として使いやすいことが需要拡大の背景にあると説明した。また、日本産食品は品質の高さが評価される一方、海外では価格が高くなりやすいとし、「高くても買ってもらうためには説明が必要で、納得してもらわなければならない」と述べた。

今回の発表会を主催した日本茶業中央会の鈴木貞美専務理事は、日本茶ナショナルGIの意義を説明した。茶のGIではすでに「八女伝統本玉露」「深蒸し菊川茶」がGI登録されている。今回の日本茶GIについては、日本全体を生産地とする「ナショナルGI」として取り組むものだとした。

背景には、海外で日本茶に関連する名称が第三者に登録され、商取引上の支障につながる懸念がある。鈴木氏は、こうした事態を事前に防ぐため、農水省のGI法に基づく登録申請を予防的に進めているとした。

日本茶GIの対象は、国内で栽培・収穫し、国内で加工した荒茶と、その荒茶を原料に製造した仕上げ茶とする。茶葉を蒸し、または釜炒りなどの方法で茶葉中の酵素を失活させて製造した不発酵茶を日本茶と定義する。現時点では、国産紅茶や烏龍茶などの発酵茶は対象に含めない考えだ。

佐藤氏は、海外市場で他国産の抹茶などと明確に区別できることに期待を示した。鈴木氏は、抹茶に加え、煎茶、ほうじ茶、茶飲料、インスタントティー、混合茶などについても、原料に日本茶を100%使用している場合には、団体内で協議しながらGIマークの使用を図っていく考えを示した。

国内向けの発信について、鈴木氏は、GIマークによって日本茶が国産であることを分かりやすく訴求でき、商品を手に取った際に日本産と海外産を選択しやすくなると説明した。また、GIマークの表示だけで十分ではなく、分かりやすい商品説明や茶の普及に向けたセミナーなども必要だとした。

さらに、国内の生活者にとっても日本茶の価値を改めて見直すきっかけになると期待を語った。若い人からも「お茶を飲むといいものだ」という声が聞かれるとし、日本茶に改めて目を向ける機会になるとしている。

瑞々しく芽吹く茶の葉
瑞々しく芽吹く茶の葉

日本茶GIは現在、申請の審査過程にあり、6月11日までパブリックコメントを受け付けている。公示手続き終了後、学識経験者からなる委員会で審査が行われる。登録時期は未定だが、登録が実現すれば、海外での日本茶ブランド保護に加え、国内で日本産茶を選びやすくする仕組みとしての活用も期待される。

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=税込15,811円、6ヵ月=税込30,305円、1年=税込57,974円