「うずらの卵」で小1児童が窒息死、学校給食有識者が語る対応策

「うずらの卵」で小1児童が窒息死、学校給食有識者が語る対応策(写真はイメージ)
「うずらの卵」で小1児童が窒息死、学校給食有識者が語る対応策(写真はイメージ)

福岡県みやま市内の小学校で2月26日、1年生の児童が給食のおでんに入っていた「うずらの卵」をのどに詰まらせて亡くなる痛ましい事故が発生した。文科省は27日、学校給食における窒息事故の防止について都道府県教育委員会等に注意喚起の通知を発出。福岡県や福岡県以外の教育委員会でも、うずらの卵を当面使わない方針が示されるなど、各地で使用を控える動きがみられている。

SNSでは、児童への哀悼の言葉とともに、「そもそも給食時間が短いんだよ」といった声や、「異物による気道閉塞は○○食材だから起きるんではなくて、噛まずに飲み込んだから起きる」といった声など、給食時間や食べ方の問題を指摘する声が多く挙がっている。

では、今回の問題について、学校給食に長年携わってきた有識者はどう考え、どう対応すべきと考えるのか。学校給食一筋40年、埼玉県学校栄養士研究会会長を務める今井ゆかり栄養教諭に話を聞いた。

今井栄養教諭は「大変不幸な事故が起こってしまい、事故にあった児童には申し訳ない気持ちだ」と述べた。

各地の使用控えの動きについては「給食現場で働いていたら、私も事故直後は使用を控えるだろう。しかし、事故が起きたらその原因食品を今後一切使用しないというのは良くない。対応策を考え、対策を実施し、注意して使用できるよう努力してほしい」と見解を述べた。

今井栄養教諭によると、「うずらの卵は児童にものすごく人気があるからだ。その気持ちは大人が考えられないほどだ」と話し、学校現場でのエピソードを紹介した。ある時、給食提供時に教室の様子を見ていると、2年生の児童がしくしく泣いている。涙の理由を尋ねると、児童のお皿にうずらの卵が入ってなかったことだと分かり、食缶に残っているうずらの卵を入れてあげて、児童は笑顔を取り戻したという。

「児童はそれくらい、うずらの卵が大好き。大根がなくて泣くことはないが、うずらの卵は児童にとって、いつ食べるか悩むほど好きな食材である。もし、一年後の給食のおでんにうずらの卵が入っていなければ、悲しむ児童は多いだろう」と語った。

使用を控える動きがある中、代替えできる食材はあるのか聞いてみると、「鶏卵のゆで卵は大きくて食べ応えがあり、他のおかずが食べられなくなるので代用できない。以前、卵アレルギーのある子に、うずらの卵の代わりに、白玉のお団子を提供したことがある。きなこを中心に入れて黄色味を出し、外側のお団子は白玉粉で作った。見た目を似せて提供したが、食感はまるっきり違い、味も違い、栄養価もうずらの卵ほどなく、何より、そこまで児童が喜ぶものではなかった。うずらの卵に替わる食材はないと思う」と見解を述べた。

SNSであがっている給食時間や食べ方の問題については、「給食時間は長くとって欲しいが、今回の事故では時間の短さはあまり関係ないと思う。それよりも、児童、特に低学年の児童に食べ方の指導を徹底することが大事。よく噛んで食べることを伝えることも学校給食の役割だと思う。最近では、日本の食事も多様化し、柔らかい食べ物や食べやすく作られた食品が多く流通しており、前歯を使って食べる習慣が身についていない児童が昔より増えていると感じる。食べ方も学習である。硬いものをあえて食べさせるなど、口をよく使って食べるやり方を指導する食育が大事だ」と述べた。

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