中元ギフト「自家用にもう1品」提案の動き キーワード “SNS映え”は今年も健在

そごう横浜店・ギフト売場
2018年の中元ギフトは、本来のギフトから自分や家族で「楽しむ」自家用の訴求がさらに進んでいる。ギフトを贈り合う習慣が縮小し、既存顧客の贈り先も減少する中で、自家用にもう一品を勧める動きだ。

各社は定番品のビールや洗剤、お買い得な訳あり品などにとどまらず、バイヤー自慢のこだわりの商品、今だけの商品で購買意欲に訴えかける。カタログだけでなく、試食、試飲の機会を店舗で設け、「贈るだけで食べたことはなかった」という層に自家用の購入を促し、来店動機にもつなげる。

昨年から目立つ「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)映え」「写真映え」「フォトジェニック」といったキーワードは今年も健在で、食べるだけではなく「投稿する」商品も数多く用意されている。

〈顧客と接点を増やしギフトの魅力伝える/百貨店各社〉
実店舗では顧客との接点を増やし、新たな提案を進める取り組みが行われている。

松屋では、約20社が参加するこだわりギフトの試食会を開催した。試食会では提供各社が商品を積極的に説明する。カタログを見るだけでは見逃されがちな、商品のこだわりのストーリーを伝え、さらに自身で味わってもらう。実際に食べることで、「こんなにおいしいのならと自家用に購入される方は多い」(同社)という。贈り先の減りつつある顧客に、自家用にもう一品を提案する。さらに、「試食会を開くことで、長年のお客様がご子息を連れてきてくれる例もある」(同社)と、ギフト文化の伝承にもつながるという。

そごう横浜店・横浜ビール試飲バー

そごう横浜店・横浜ビール試飲バー

例年、地元神奈川に根付いたギフトを取りそろえるそごう横浜店では、そごう・西武としてのテーマ食材「唐辛子」に加え、ことしはクラフトビールを特集した。神奈川にある10のブルワリー(ビール醸造所)のクラフトビールを用意。さらに、店舗のギフトセンターには、「横浜ビール」の有料試飲バーを5月30日~6月4日、6月22~30日の2期間で設置している。「通常なら1000円以上」の横浜ビールのクラフトビール4種を400円から試飲できる。地域に根差した商品が人気の同店らしい取り組みで、実際に味わった人の購入に加え、来店動機のひとつになりそうだ。

一方、大丸松坂屋百貨店は、「共感・共有したくなる、にっぽんの贈り物」をテーマに掲げる。同社は今年からインスタグラムアカウントを開設、自社のカタログ掲載商品を紹介している。特に写真映えのするカラフルな「すいかパン」、イカを使った「錦鯉の姿寿司」などの商品が並ぶ。ネットとSNSの活用で、ギフトを贈り合う習慣の定着していない、比較的若い世代に向けて映像を使って訴求する。

各社は様々な取り組みで、縮小するギフト市場での売上維持を図る。近年では、ギフトを贈り合うにも、住所を教え合うことのハードルは高い。その反面、評価の高い画像や実店舗での感想や感動は、SNSによって迅速に広がる。各百貨店にとって、ネットや店舗で行うカタログの外の取り組みが消費者に響くかどうかが成功を左右すると言えそうだ。

〈食品産業新聞 2018年6月18日付より〉

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