〈マンデー・オピニオン〉セブン‐イレブンの現金受取サービスの真意

冷食日報 2018年4月23日付
セブン‐イレブンがJTBと組み、民泊のチェックイン機を、都内の約50店に設置する。

コンビニはこれまでも物販だけでなく、銀行ATMの設置、マルチコピー機による住民票の交付やチケット発券など、様々なサービス機能を追加して成長してきたが、こんな機能まで加わるなんて想像もできなかった。外国人旅行者を含むバックパッカーなどが利用する安宿を、私も何度か利用したことがある。外食を抑えて節約したいという宿泊客の事情を宿側もわかっていて、近所のスーパーやコンビニの情報を用意している所も多い。セブンでチェックインしたら、その店で食べ物や飲み物を購入でき、一石二鳥。なんてうまい商法だ。

コンビニ業界は店舗数増加に加え、ドラッグストアやネットなど業態・業種を超えた競合の増加で既存店の客数の減少が続いている。セブンもご多分にもれず、今期は客数増を最大の課題に据える。民泊チェックイン機能もその一環だ。セブンが今期始める新サービスで個人的に注目しているのが、ATMによる現金受取サービスだ。

「メルカリ」などネット上での個人売買が年々増えているが、送金方法が課題だった。振り込みか現金書留が大半だが、書留は不在だと受け取れない。振り込みは口座番号を公開する必要があり、それが嫌だという人もいる。また、返品が発生して返金する必要がでてくると、このやりとりも面倒だ。確認番号を入力するだけで365日、24時間、いつでもセブンのATMで現金が受け取れるというサービスは、私のような凡人では、とても思いつかない。

電子マネーなどキャッシュレス化が進み、現金を下すことも減り、ATMの稼働率は下がっている。キャッシュレス化の流れの中で、もうコンビニのATMは役割を終えたのではないかという人もいる。セブンの新サービスは来店動機を増やすだけでなく、ATMの稼働率を改めて高める狙いもある。

小売業界では「リアル店舗」対「Eコマース」にどう対応するのかという話題が盛んだ。リアル店舗側は、Eコマースを目の敵にしているところが多い。セブンはEコマースでの問題を解決することで、逆にリアル店舗に客を呼び込もうとしているのだ。ネット上のお金のやりとりはクレジット、仮想通貨など世界的にもキャッシュレスが当たり前。経産省など日本も国をあげてキャッシュレス化を進めるが日本人は現金主義が根強い。セブンは日本の国民性にスポットを当て、新サービスを始めたと言える。

企業の多くは気づかないうちに、自ら顧客を絞り込んでいることが多い。電子マネーは便利ですよ、ポイントも貯まりますよと勧めるのも企業側の都合だ。

世の中の大半がキャッシュレスへ突き進み、現金のためのサービスがどんどん減っている。しかし、実際は相変わらず現金を使っている人が多い。将来に向け、キャッシュレス化への対応は必要だが、それだけでは今の本当の需要とは合致していない。そこにセブンがしっかり目を向けているということは、セブンは本気で全包囲網で顧客を取りに行っているのだ。

〈冷食日報 2018年4月23日付より〉

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