〈凍菜リレー月報〉平林産業、冷凍キノコを独自技術で製造、「えのき氷」など調理品にも対応

キノコ生産量日本一の長野県。地元のキノコ類を使った、冷凍加工品の製造・販売を手掛けるのが、平林産業だ。液体窒素を使用した独自の冷凍技術で高品質な冷凍キノコを生産する。工場には加熱釜など調理加工設備も備え、数年前ブームとなった「えのき氷」なども生産。簡易な冷凍加工から加熱調理まで幅広い機能を備えた小回りのきく工場として受託業務を拡大していきたい考えだ。

冷凍キノコ類が同社売上げの6割を占める。キノコ類の取り扱い数量は年間1,000t強。主要品目はぶなしめじ、えのき、なめこ、エリンギだ。長野ではシイタケの生産は少ない。

製造方法に特徴をもつ。この凍結技術は1996年に同社(当時、創業者の平林守男社長)と信州大、長野県農村工業研究所との3者共同で開発したもの(99年特許取得)。キノコは秋冬に需要が集中することから生産者の経営安定化を目指して始めた取り組みだ。16年にはこのIQFラインに自動計量・自動包装機を増設した。

製造コストはかかるが、製品は生鮮品と比べて食感や風味に優れる。ドリップ(解凍したときに出る液)が少なく、賞味期限は2年と長い。

県産のホウレン草は肉厚の原料を使用し、脱水してブロック凍結している。県産原料品はブロッコリー、アスパラガスも商品化しているが、いずれも原料不足が課題だ。特にアスパラガスは栽培農家が少なく、ほとんど青果向けに出荷されてしまうという。

ただホウレン草は農業法人との取り組みが増えている。現在100tの取り扱いを今後、200~300tに引き上げたいとしている。

「野菜の一次加工場で100℃~マイナス190℃まで手掛ける工場は珍しい。レシピさえ用意してもらえれば、何でも商品化できる」(平林京子社長)

平林産業・平林京子社長

平林産業・平林京子社長

同社の佐久工場には加熱釜、IQFライン、凍結室、自動計量・包装機のほかに、乾燥野菜用の乾燥釜や野菜の搾汁設備を備える。作業場の設備を組み替えることでさまざまな加工ができる汎用性が特徴だ。

佐久工場の従業員は35人。工程の随所に人手をかけており、小回りが利く。

調理品としては「えのき氷」を11年から生産しているが、これは同社として初めての一般消費者向け商品となった。夏場のキノコ需要を創出するために、JA中野市が考案した健康食材だ。生活習慣病に対する効果がさまざまな研究で確認されている。

えのき氷の製造は、えのきをペースト状にし、加熱釜で煮たものをブロックトレーに注入して凍結する――。1日あたり最大6,000トレー生産する。現在えのき氷を製造・販売しているメーカーは同社だけだ。

「当社は“ファームto キッチン”を商標登録している。農場とキッチンをつなげる一次加工業だが、安全安心で、お客様にとってより良い商品を提供していきたい」。昨年、食品安全マネジメント協会(JFSM)による、国際標準に適合した食品安全管理規格となるJFS‐B規格認証を両工場(佐久工場6月、長野工場11月)で取得した。

今後、受託業務を広げていきたいとする。6次産業化の二次加工の分野や異業種とのコラボ商品のほか、地産地消の取り組みとして、県外の農作物の受託加工も手掛けているところだ。

〈冷食日報 2018年7月2日付より〉

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