ネスレ「ピュリナ ネコのバス」、熊本地震で猫と飼い主支援 能登の経験生かす
提供:ネスレ日本株式会社
ネスレ日本の「ネスレ ピュリナ ペットケア」とネコリパブリックが共同運営する「ピュリナ ネコのバス」が、熊本地震の被災地で猫と飼い主の支援に活用されている。宇城市指定避難所「ウイングまつばせ」では8月12日から、被災者の飼い猫の一時預かりを開始した。猫を安全に預けられる環境を整えることで、飼い主が自宅の片付けや行政手続き、通院など生活再建に向けて動けるよう後押しする。
〈現場のニーズ確認して派遣〉

2026年7月28日に発生した熊本地震を受け、「ネコのバス」の派遣を検討した。ネスレ日本 コーポレートアフェアーズ統括部の太期由美子(だいご・ゆみこ)氏によると、災害発生直後から出動の可能性を想定した一方、支援する側の判断だけで現地入りすることは避けたという。
太期氏は「会社のためになるから、PRになるから出動させよう、という気持ちではいけない。本当に現場で求められているかどうかが一番重要だ」と話す。
共同運営するネコリパブリックが先行して現地に入り、熊本県や宇城市、獣医師会、保健所などと支援ニーズを確認。道路状況やバスの駐車場所、ボランティアの宿泊場所なども含めて検討した上で派遣を決めた。
現地では近隣の猫シェルターで28匹を預かっており、このうち6匹は飼い主が定期的に面会している。「ネコのバス」は、その猫と飼い主が触れ合う場としても活用されている。
シェルターでは脱走防止などのため、基本的に猫をケージから出すことができない。一方、「ネコのバス」は譲渡会での使用を前提に二重扉などの脱走防止対策を施しているため、飼い主は車内のソファに座り、猫を抱いたり、直接触れ合ったりすることができる。災害で生活環境が一変する中でも、飼い主にとって愛猫を腕に抱ける時間は、日常を取り戻すひとときになる。
獣医師の協力を得て、猫の健康状態を確認することもできる。飼い主からは「本当にありがたい」との声が寄せられているという。太期氏は「猫と触れ合う時間をつくることで、少しでも普段の生活を取り戻す助けになれば」と話す。
〈能登の経験を2代目車両に反映〉

「ピュリナ ネコのバス」は2018年から、保護猫と新たな家族をつなぐ移動式の譲渡会場として活用されてきた。冷暖房や二重扉、キャットタワー、キャットウォークなどを備え、猫が安心して過ごせるだけでなく、楽しめる環境も整えている。
2026年2月時点で、全国で開催した譲渡会は125回を超え、360匹以上の猫が新たな家族と出会った。平時の譲渡活動で培った経験が、災害時の支援にも生かされている。
災害時の活用は、2024年の能登半島地震に続いて今回が2度目となる。能登では、被災した猫を一時的に預かる「1.5次避難所」として活用した。この経験は、今年2月にデビューした2代目「ネコのバス」にも反映された。

新型車両は天面にソーラーパネルを搭載。災害時など外部電源を確保しにくい場所でも稼働できる仕様としたほか、全個室に換気設備を備えた。
車内のケージには可動式の仕切りを設け、猫の体格や状態に合わせてスペースを調整できる。太期氏によると、蓄電した電力は条件にもよるが約3日分をまかなえる。一方、今回の熊本では夏場の暑さから蓄電だけでは十分に室温を下げられない場合もあり、エンジンをかけて空調を使用するなど、現場の状況に応じて対応した。
また、通常の譲渡会では外から猫を見てもらうためカーテンを開けるが、災害時にはすべて閉め、慣れない環境でも猫が落ち着いて過ごせるようにした。
〈ペット支援は飼い主の支援にも〉
同社は、こうしたペット支援を飼い主への支援とも位置付ける。
太期氏は「家族の一員であるペットを預かることで、数時間でも数日でも、普段の生活に戻れる時間を少しでも早くつくることができれば」と話す。「猫を預かってもらえているという安心感があれば、飼い主が普段の生活に戻るスピードも早まる。ペットへの支援は、その飼い主のメンタルケアにもつながる」とする。
災害時のペットとの同行避難をめぐっては、飼い主側の意識が高まる一方、避難所側の受け入れ態勢が追いついていないことも課題という。
ペットフードや水、ケージなどを事前に準備する飼い主は増えている。一方で、避難所で周囲に迷惑をかけることや、ペットが逃げることへの不安から、避難所に入らず車中泊を選ぶケースもある。車中泊を続ければ、飼い主自身がエコノミークラス症候群などの危険にさらされる可能性もある。
太期氏は、飼い主側の備えだけではなく、受け入れる避難所側の準備も必要と指摘する。平時から、ペットを受け入れる区域とそれ以外の区域を分けることなどを検討し、「災害時にペット同行避難ができる」「この避難所では何匹まで受け入れられる」といった情報をあらかじめ発信しておくことが重要とする。
また、災害発生後には人向けの食料や物資が優先され、ペットフードが届くまで時間を要する場合もある。飼い主自身による備蓄に加え、メーカーとしても被災地にペットフードを迅速に届けられる体制を整えていく考えを示した。
〈平時からの連携が有事の支えに〉
「ネコのバス」は災害支援だけを目的に始まった活動ではない。ピュリナでは、人とペットが豊かに共生できる社会の実現に向け、保護猫の認知向上と譲渡促進、子どもが動物と触れ合う機会の創出などに取り組んでいる。「ネコのバス」もその一環で、こうした平時の活動が、災害時の支援の基盤にもなっている。
太期氏は、こうした活動について「役割分担が大切」とする。企業が予算を確保して活動を支える一方、実際の現場はボランティアらに支えられている。また、一企業だけでは社会全体に十分な影響を広げることは難しいとして、行政や獣医師、動物保護団体などと連携しながら、ペットとの共生に対する理解を高めていく必要があるとの考えを示す。
今後の災害対応についても、自治体や獣医師、動物保護団体、動物愛護センターなどとの平時からの関係づくりを重視する。災害が発生してから連携先を探すのではなく、普段から情報を共有し、いざという時に迅速な支援ができる体制を整える。
太期氏は「最近は自治体から問い合わせをいただく機会も増えている」と話す。災害支援だけでなく、譲渡会や子ども向けの活動などを通じ、平時から自治体との接点を広げておくことが、緊急時の連携にもつながるとみている。
「ネコのバス」は現在1台で、ネスレ ピュリナが費用を負担し、行政などと実施する譲渡会は年間6~8回程度。共同運営するネコリパブリックによる活動も含めると、年間約15回稼働しているという。
もともとは、1匹でも多くの保護猫に新しい家族を見つけるために始めた活動だ。災害時には用途が変わり、猫を守り、飼い主を支える場所になる。それでも「猫が安心して過ごせる空間をつくる」という根本は変わらない。
太期氏は「バスは1台しかなく、すべての要望に応えることは難しい」としながらも、「こういった活動を続けていることを継続して発信することが、私たちの使命だと思っている」と話した。








