大豆ミート JAS制定でピラミッド構造化、調製大豆ミート食品は入門的位置づけ

スーパーの大豆ミート売場
大豆ミートの2022年の大きなトピックはJAS(日本農林規格)制定だ。

これまでの大豆ミートは、牛肉などの畜肉を混ぜたハイブリッドタイプの商品も投入されてきたが、大豆を主な原材料に使用した加工食品が「大豆ミート食品類」として規定されるため、それらはJASに該当しなくなる。その上で動物性を完全に使用しない「大豆ミート食品」と、乳や卵などは使用する「調製大豆ミート食品」に定義が分けられることになる。

市場の大豆ミート商品の7~8割は乳や卵を用いた調製大豆ミート食品に当たるとされ、ボリュームゾーンになる。「ただ乳や卵を抜くだけなら難しくない」(大豆ミートメーカー)というが、現状の味を維持しながらという条件だとハードルは高いようだ。そのため、まもなく制定されるJASにより、平面的に乱立してきた商品は、食品としての優劣ではなく、技術的な難度という垂直的な軸が新たに生まれ、市場における商品ボリュームや購買層を考慮しても、ピラミッド構造化すると考えられる。

農水省が2021年12月14日に開いた日本農林規格調査会にて、大豆ミート食品類のJAS制定について議論が行われ、修正規格案が了承された。議論で印象的だったのは、出席メーカーによる「調製大豆ミート食品は入門編」という位置づけだ。それによると、牛乳の代替品とも言える豆乳は20年度まで10年連続で過去最高を更新するなど市場拡大が著しいが、「豆乳の市場が伸びているのはJASがあるおかげと思っている」とする。

豆乳はJASで3種類が定義されているが、フルーツ味など飲みやすい味が付いた「豆乳飲料」から入って、慣れてくると砂糖などで味付けした「調製豆乳」へ、さらにシンプルなものが欲しいと、味付けしていない「豆乳」を飲むようになると説明していた。その上で、一番売れているのは調製豆乳と説明し、「市場では8対2で調製大豆ミート食品が多い。消費者のことを考えると入門編が必要だ」とした。

一方、ヴィーガン(完全菜食主義者)の人にとっては、卵や乳といった動物性原料を完全に使用しない大豆ミート食品のJASマークが表示されれば、選択がしやすくなる。ベジタリアンの場合は調製大豆ミート食品も購買対象にできる。

〈一般消費者も注目し始める、味の向上や大豆臭の低減はかなり進化〉
とはいえ欧米と異なり、日本でのヴィーガン人口は限られ、今後も比率が大きく高まるとは考えにくい。

ただ、ヴィーガン規格で大豆ミートを発売しているメーカーは、「当社の把握しているアンケートでは日本のヴィーガンは1~1.5%で、ベジタリアン含めて3~4%いる。今後ヴィーガンが10~20%になることは考えられないが、動物性たん白質を取らない若年層の割合が増えており、5~10年後に広義のベジタリアンが6~7%になってくると大きなマーケットになっていく。その時に完全ヴィーガン対応のブランドを立ち上げてマーケティングを始めても、先行者利益が得られない」と、先を見据えた戦略を描いている。

とはいえ、大豆ミートの市場拡大には、一般の消費者を取り込むことは欠かせない。先述したように、ボリュームゾーンは調製大豆ミート食品になる。そこから、より大豆をしっかり摂りたい人が、大豆ミート食品に手を伸ばしていくだろう。

環境意識や健康志向の高まりなどから、一般の消費者も大豆ミートに注目し始め、実際にスーパーの売場や総菜などの中食販売、外食や給食での採用もこの1~2年で着実に広がっている。味の向上や、課題とされた大豆臭の低減もかなり進んでいる。

いずれにせよ今回、国が基準を設けるJAS制定が追い風となり、さらに大豆ミートへの注目が高まっていくのは間違いない。

〈大豆油糧日報2022年2月14日付〉