サントリー「ちょ備蓄」拡大、9月1000店へ 普段の買い物を防災に、異業種7社と連携

普段の買い物を災害への備えにつなげる「ちょ備蓄」の店頭展開。食品や飲料、日用品など身近な商品を備蓄の視点から紹介する
普段の買い物を災害への備えにつなげる「ちょ備蓄」の店頭展開。食品や飲料、日用品など身近な商品を備蓄の視点から紹介する

サントリービバレッジ&フードは、「サントリー天然水」の防災備蓄啓発活動「ちょ備蓄プロジェクト」を拡大する。調査では、災害時に自宅で過ごしたい人が59.0%に上る一方、そのうち「十分に備えがある」人は4.6%にとどまった。

こうした実態を踏まえ、食品、菓子、日用品、小売など異業種7社と連携。普段の買い物を災害への備えにつなげる。「ちょ備蓄」の店頭訴求については、現在全国約500店舗で展開し、9月の防災月間には1000店舗、中期的には3000店舗規模を目指す。

水や食品、日用品など、普段使う商品を「ちょ備蓄」の視点で紹介。特別な防災用品だけに頼らない備えを提案
水や食品、日用品など、普段使う商品を「ちょ備蓄」の視点で紹介。特別な防災用品だけに頼らない備えを提案

8月27~29日の3日間、東京都中央区のサミットストア ららテラスHARUMI FLAG店で、防災備蓄イベント「これも!ちょ備蓄アクション」を開催した。旭化成ホームプロダクツ、味の素、サミット、大王製紙、はごろもフーズ、森永製菓、ロッテが協力した。

「ちょ備蓄」を訴求する「サントリー天然水」の売り場。用途に合わせた容量の商品をそろえ、普段の買い物から備えを促す
「ちょ備蓄」を訴求する「サントリー天然水」の売り場。用途に合わせた容量の商品をそろえ、普段の買い物から備えを促す

「ちょ備蓄」は、災害時のために特別な防災用品を一からそろえるのではなく、普段使っている食品や飲料、日用品を少し多めに持ち、日常生活の延長で備える考え方。サントリー天然水が2025年8月にプロジェクトを始め、店頭やSNSなどで発信してきた。

今回のイベントでは、「サントリー天然水」をはじめ、缶詰、レトルト食品、菓子、ラップ、ティッシュなど、普段使う商品を「ちょ備蓄」の視点から紹介した。通常の売り場にも「これも!ちょ備蓄」の表示を設け、来店客が店内を回りながら備蓄につながる商品を探す「文字さがし」も実施した。親子が実際の売り場を巡り、普段の買い物が備えになることを体験できるようにした。

オリジナルの「ちょ備蓄かるた」を楽しむ子どもたち。身近なものを災害時に役立てるアイデアを遊びながら学ぶ
オリジナルの「ちょ備蓄かるた」を楽しむ子どもたち。身近なものを災害時に役立てるアイデアを遊びながら学ぶ

今回新たに作ったオリジナルの「ちょ備蓄かるた」も用意した。読み札には、ペットボトルとスマートフォンのライトを使った簡易ランタンなど、身近なものを災害時に役立てるアイデアを盛り込んだ。会場では子どもたちが夢中になって札を取り、保護者からも「楽しみながら学べそう」との声が聞かれた。

サントリービバレッジ&フードの溝本将洋ブランドマーケティング本部部長は、「普段使っている日用品や食べ物を少しずつ増やし、何かあった時にもできるだけ普段の環境を変えずに、安心感を持ちながら備えられるようにすることが大事」と説明する。

ガム売り場にも「ちょ備蓄」の目印を設置。普段食べるお菓子も、災害時の気分転換などに役立つ備えとして紹介した
ガム売り場にも「ちょ備蓄」の目印を設置。普段食べるお菓子も、災害時の気分転換などに役立つ備えとして紹介した

「サントリー天然水」から始まった取り組みは、食品、菓子、日用品、小売へと広がった。溝本氏は、普段使うさまざまな商品に触れる機会を増やすことが、「皆様の意識の変化に少しでもつながるのではないか」と語った。今後もメーカーや専門家、流通などとの連携を広げる。

通常の缶詰売り場にも「ちょ備蓄」の目印を設置。店内を巡り、備蓄につながる商品を探す「文字さがし」を実施した
通常の缶詰売り場にも「ちょ備蓄」の目印を設置。店内を巡り、備蓄につながる商品を探す「文字さがし」を実施した

背景には、災害時に自宅で生活を続ける「在宅避難」への関心の高まりがある。同社が全国の20~60代男女1000人を対象に実施した調査では、在宅避難を希望しながら十分な備えができていない実態が浮き彫りになった。一方、「ある程度備えがある」とした人は48.0%だった。

また、「備蓄するなら必要な量や内容をそろえるべき」と考える人は84.2%に達した。調査を共同で分析した兵庫県立大学の木村玲欧教授(防災心理学)は、最初からすべてをそろえようとすると、費用や保管場所などが負担となり、最初の一歩が重くなると指摘。こうした状態を「備蓄完璧主義」と表現した。

木村教授は、いつもの買い物で一つ多く買う「ちょい足し」、備蓄を一カ所に集めず分けて置く「ちょい置き」、普段から使い、使った分を買い足す「ちょい使い」の3つを提案。「『ちょっと』だけで十分ではないが、『ちょっと』を入口にすれば、家族に必要な量が少しずつ増えていく」と説明した。

プロジェクト開始から1年間の変化について、木村教授は「『備蓄が楽になった』という声をたくさん聞いた」と話した。従来は「何を買っていいか分からない」「家に置くスペースがない」「お金もかかる」と備蓄を重く捉えがちだったが、「特売で安く売っているから、ちょっと多めに買っておこう。それだけでも備蓄の力が一つ上がった」と考える人が増えてきたという。

木村教授は、備蓄を「やっているか、やっていないか」という「1か0か」で捉えるのではなく、「ちょっとやれば、その分、備蓄の力が上がる」と指摘した。一つずつ備えを積み上げていくことが大切だとした。

「ちょ備蓄」の取り組みを紹介した(左から)サミットの岡田崇取締役常務執行役員、サントリービバレッジ&フードの溝本部長、兵庫県立大学の木村教授
「ちょ備蓄」の取り組みを紹介した(左から)サミットの岡田崇取締役常務執行役員、サントリービバレッジ&フードの溝本部長、兵庫県立大学の木村教授

小売側も日常の買い物と防災を結び付ける。サミットの岡田崇取締役常務執行役員は、防災関連企画を従来の年3回から年5回に増やしたと説明。「普段の買い物の延長で、誰もが気軽に災害に備えることができる」と「ちょ備蓄」の考え方に賛同した。