25周年を迎えた「しそ焼酎 鍛高譚」、“地産全消”へのカギは“クチコミ”

合同酒精旭川工場・水口哲司工場長
昨年で発売25周年を迎えた「しそ焼酎 鍛高譚」。オエノングループ合同酒精(株)の代表商品ともいえる「鍛高譚」は、シソの爽やかな香りが特徴で、ロックやお湯割り、ソーダ割りまで幅広く楽しめるロングセラー商品だ。プロモーション活動にも力を入れており、web限定で公開している「たんたかダンス」のムービーでは、同社の西永裕司代表取締役社長も出演し「25周年」をアピール。ラベルも、主人公のタンタカ(カレイ)を大きく目立たせ、「北海道白糠町特産しそ使用」と表記し、地域特産を分かりやすく伝えるラベルへとリニューアル。さらには、豪華グルメ旅行が当たるオープンキャンペーンも実施するなど、積極的に展開している。

〈「一村一品運動」をきっかけに誕生〉
1992年12月、「鍛高譚」が誕生したきっかけは、1990年代全国的に盛んに行われていた各市町村が各々の特産品を作る「一村一品運動」で、北海道白糠町から、同地の特産品であるシソを使用した酒類の開発依頼をされたことから始まる。

今回は25年前の商品開発にも携わり、現在は「鍛高譚」を製造する合同酒精旭川工場の水口哲司工場長に同商品についてお聞きした。水口工場長は開発当初を次のように振り返った。

「当時の北海道知事の働きかけにより一村一品運動が北海道でも始まり、白糠町からシソを使用した商品の開発を依頼されたものの、シソは使ったことが無い素材。当初は“ ふりかけにもシソがあるぐらいなので、米を主原料にした米焼酎と合うのではないか”、と考え試作してみたものの、どうにも上手くシソの香りが引き立たない。色々な素材を試行錯誤し、最終的にはデーツ(なつめやし)を用いるとシソの爽やかな香りが引き立つということが判明。口当たりがソフトでシソの爽やかな香りだけをうまく抽出した“しそ焼酎”の完成にこぎ着けた」。

鍛高山とシソ畑、鍛高譚は全量当地のシソを使用している

鍛高山とシソ畑、鍛高譚は全量当地のシソを使用している

また、原料の赤シソについて、「赤シソは、鍛高譚シリーズになるためだけに、北海道白糠町の契約農家の方が特別に栽培したもので、他県の赤シソと比べても葉の大きさや香りの強さが違います。赤シソの栽培期間中は無農薬で、一株一株丁寧に収穫され、時間をかけて天日干しをするなど、目を配り手間をかけ、心を尽くして育てた赤シソだからこそ、華やかな香りや芳醇な味わいが出てくる」と語る。

さらに、「農薬を使わないということは、雑草の除去や害虫防除など人の手で行わなければいけない。慣行栽培の何倍もの手間暇が掛っているが、“鍛高譚” ブランドに資するものとしてはやはり無農薬のシソを使用したい」と水口工場長は強調する。

粉砕されたシソ 爽やかな香りが印象的

粉砕されたシソ 爽やかな香りが印象的

〈一時は終売までささやかれた「鍛高譚」、2002年ごろには昼夜問わず製造〉
現在でも製法に一切の変更はなく、25年前のレシピを脈々と受け継いでいる「鍛高譚」。現在では料飲店は必ずと言っていいほどオンメニューされており、量販店でも広く販売されているが、発売された当時はあくまでも白糠町の名産品という扱い。最初は北海道内での販売にとどまっていたため、出荷数量も大きく伸びることも無く、「来年には製造が終了してしまうのではないか」と思われるほどのものだったという。

しかし、道内の空港のお土産売り場に並べられたことをきっかけに、“ 北海道土産品” として人気商品となった「鍛高譚」。その後、テレビ・ラジオ・ブログでも多くの芸能人に取り上げられるなど、さまざまな話題を呼び続け、一村一品運動から始まった地産地消の商品は、いつしか“ 地産全消” の商品へと成長した。当時の状況について水口工場長は、「実際に大々的にTVCM を打つことも無ければ、道外へと積極的に営業を行っていたわけでもない。現在は1回の仕込みで40kgの乾燥シソを使用しているが、当時は5kg の乾燥シソで足りるほどの少なさだった。しかし“ 口コミ” が同商品の人気にじわじわと火をつけ、テレビで紹介されたこともあってか2002年頃には全国的に出荷が行われ、昼夜を問わず製造しても足りなかったほど」と語る。

〈現在では派生商品も多数、“SNS映え”で若年女性の支持も〉
25年前に地産地消の商品として発売された同商品。ここ15年で大きくその様相は様変わりし「地産全消」となり、小売量販業務用いずれのフィールドでも「定番品」として成長したが、派生商品の発売についてもここ5~6年で活発となっており、現在でも8種類の商品が発売されている。中でも「鍛高譚」をベースとした「鍛高譚の梅酒」や、昨年にはシソを通常の5倍使用し、シソの色素も用いた「鍛高譚R」は、口当たりの良さや「SNS映え」する見た目から、若年層の女性からの支持を集めており、TwitterやInstagramを見ていると「鍛高譚の梅酒」や「鍛高譚R」を楽しむ様子が見られる。

「鍛高譚」と派生商品

「鍛高譚」と派生商品

同社は今後の商品展開や戦略について、「愛され続け、今後とも愛される商品として“ しそ焼酎 鍛高譚” を中心とし、鍛高譚シリーズを主要ユーザーである40~ 50代への直近の飲用率向上、25~35歳への認知度、飲用経験率向上を図る施策を展開していく」としている。

「たんたかダンス」CM出演の合同酒精・西永社長

「たんたかダンス」CM出演の合同酒精・西永裕司社長

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