ネスレ日本は、インバウンド需要で人気の高い「キットカット」や「ネスカフェ」製品を、中国やアセアンに向けて越境EC(国際電子商取引)で発売すると7日に発表した。なぜ、世界中ですでに販売されている商品を、わざわざ日本から輸出するのか。カギとなるのは、中国の新しい現実と”メイド・イン・ジャパン”の豊富なバラエティやプレミアム化だ。

今回の取り組みは、同社が日本で製造した「ネスカフェ」製品を、今年4月からアリババと組んで中国に向けてEコマースで販売するもの。「キットカット」製品も、今年の秋から「キットカット ショコラトリー」シリーズやご当地お土産製品シリーズなどをEコマースで販売するほか、中国で「キットカット ショコラトリー」(※)の専門店を出店する。さらに、その後はASEAN諸国でも展開する方針だ。

※「キットカット ショコラトリー」=洋菓子店「ル パティシエ タカギ」オーナーシェフの高木康政氏が監修を手掛けた高級素材を使った「キットカット」。

日本で売られている「キットカット」は、訪日外国人の観光客から人気が高く、特に抹茶味はインバウンド需要で群を抜く人気を誇る。しかし、ネスレ日本の高岡浩三社長兼CEOは、「訪日外国人は激増しているが、インバウンド需要の高まりは未来永劫続くものではないと考えている。だが、日本に来なくても日本の製品が買える越境ECを使えば、クリック一つで商品を届けられる時代になった。“メイド・イン・ジャパン”の製品を海外で育てていきたい」と話す。
国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比(観光庁)

国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比(観光庁)

〈中国の急増する中間層のニーズに日本のプレミアム製品で応える〉
中国は、かつての日本のように、大都市圏を中心に急速に富裕層・中間層が増えるという新しい現実が生じている。それを裏付けるように、中国の社会消費品の小売総額は年々拡大している。彼らは高付加価値の製品を求めているが、中国国内には少ないのが現状だ。その中で、日本製品の安全・安心、バラエティ、そして高付加価値が評価され、日本にきて購入するインバウンド消費が拡大してきた。

中国の社会消費品小売総額と成長率の推移

中国の社会消費品小売総額と成長率の推移

ネスレは中国で1908年創業、100年以上前から事業展開している。同社は、新興国においては高品質な製品を手の届く価格帯で販売してきた。「ネスカフェ」であれば、コーヒーとミルクと砂糖が1杯分ずつ袋に入ったコーヒーミックス製品がある。そのため、現在、増加している富裕層や中間層が求めるプレミアム製品として、メイド・イン・ジャパンの「ネスカフェ」や「キットカット」を越境ECを通じて販売する。これは、現在中国で販売している製品と価格帯が異なるため競合しない。

高岡社長は、「中国の“キットカット”は、日本よりも相当安い価格で販売されている。特に“キットカット ショコラトリー”は値段が圧倒的に高いので、どの国の“キットカット”とも競合しない。“キットカット”は世界のブランドで誰でも知っているが、日本の“キットカット”は、バラエティの広さとプレミアム製品により他の国にはないユニークな製品である。メイド・イン・ジャパン製品の海外展開は、訪日外国人が急増する前から、お土産品としてもともと人気が高かったことが下地にある。インバウンドを捉えることは、当社の戦略に大きく関わる。だからこそ、チョコレートだけでなく、日本の“ネスカフェ”も中国のお客様にコミュニケーションしていく」と話す。

ネスレ日本・高岡浩三社長

ネスレ日本・高岡浩三社長兼CEO

ネスレ日本は、他の日本企業が次々と海外進出する中、グローバル企業ネスレの一員として日本だけで事業展開する宿命にあった。そのため、海外に出られない環境の中でも業績を上げられるように、日本市場を徹底的に研究し、少子高齢化やIT技術の進化などの新しい現実から生まれた問題を解決するようなサービスを次々に提案し、売り上げと利益を伸ばし続けてきた。その中で、商品のプレミアム化や魅力が高まった。同社は、越境ECという新たなビジネスモデルを用いて、日本にいながら所得の中間層が増える国々に向けてビジネスの展開をスタートする。

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