〈座談会〉医療・介護の食事サービスを変える! 日清医療食品「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」にみる省力化(2)

〈中央設備エンジニアリングの自動化・省力化提案〉
三浦(司会)
安全・安心、美味しさ、自動化と様々な要望がある中、どう対応されたのでしょうか?

名古屋 弊社のエンジニアリング業務はユーザーズエンジニアリングを基本方針としており、押し付けではなく、幅広い新規技術を提案し、お客様の求められるものを厳選して採用しております。日清医療食品さんは、365日朝昼夕と多種多彩な福祉医療食メニューを生産されておられ、1食1食がとても大切なものであることは設計当初より伺っておりました。

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例えば、包装する際は食材を丁寧に扱いたいとのご要望を受け、テラオカさんの深絞り真空包装機を採用していただきました。

カツ丼で言えば、カツと汁を一緒に包装するとカツの衣のサクサク感が損なわれるので、それぞれを別に包装する手法をとっています。ひとつひとつのメニュー・料理に最適な調理法を日清医療食品さんにお伺いを立て、機器を選定しました。

深絞り真空包装機はトレー状になった包装フィルムに効率的に食材を投入します。真空包装された包装品は、自動でやさしくコンテナボックスに入れる必要があるため、箱入れロボットも開発しました。また、食材の工程間移動等の付加価値を生まない作業や重量物の取扱いには自動搬送車や省力化機器を導入しました。

テラオカ 深絞り真空包装機

テラオカ 深絞り真空包装機

弊社から装置製作を依頼させていただいたメーカーの皆さんには、機械装置としての仕様に加え、このようなお客様のこだわりをしっかりと伝え、衛生的な使いやすい装置を製作していただきました。

三浦 なるほど・・・要望を受け止め、必要条件を吟味し、整理し、それに応える最新の自動化設備を選定、導入されたんですね。各機器の具体的な性能と省力化の内容を教えて下さい。

名古屋 シブヤマシナリーさんには、製造工程上最も重要な食材を加熱調理する過熱水蒸気調理機をご担当いただきました。 過熱水蒸気は、ボイラーから供給された水蒸気を燃焼ガスによって再加熱した高エネルギー流体です。これをブロワー(送風機)により食材に直接噴射する事で、効率的に加熱調理する事ができます。

シブヤマシナリー 過熱水蒸気調理機

シブヤマシナリー 過熱水蒸気調理機

あらかじめ加熱温度、加熱時間、過熱水蒸気量、水蒸気噴流速を設定し、ホテルパンを投入コンベヤ上に置けば、自動的に装置内に送り込まれ、おいしく調理された状態で出てきます。連続的にコンベヤ上を流れて行き、下流に設置したトンネルフリーザーに送りこまれます。

髙橋工業さんには、上記の加熱調理装置で加熱した食品を急速に冷却するというトンネルフリーザーをご担当いただきました。多種の福祉医療食を冷却する装置の能力を決定する上で、髙橋工業さんのテストルームで冷却テストを数回実施し、装置設計に必要なデータを得ました。これに加え、今後のメニュー展開にもフレキシブルに対応できるよう設計していただくことを依頼し、結果、冷却温度の安定、達温速度が向上し製品品質に寄与していただいております。

テラオカ(寺岡精工)さんには、惣菜系包装機として深絞り包装機とフルーツ用としてトレーシーラーをご担当いただきました。包装形態が、製袋式包装機と異なり、トレー状に成形されたフィルムやPETトレーを平滑なトップフィルムでシールする形になるため、包装後の自動化が容易に行えます。

真空度の調整に加え、鮮度保持を目的として不活性ガスの注入も可能です。食材を投入するエリアも完全防水となっており、流水洗浄をすることも可能で、大変使いやすく好評をいただいております。

ダイフクさんには、今回の自動化の目玉である立体倉庫・自動仕分け機をご担当いただきました。私の知る限り、惣菜類製造には初めての採用になるものと思います。

当初、弊社で検討したものは半自動システムでしたが、メニュー構成を独自に検証されソーター式の仕分け機をご提案いただき採用させていただきました。1000に近い配送先へ正確に少ない人数で仕分けができる画期的な装置であると評価しております。

〈髙橋工業のトンネルフリーザー、冷却時間の短縮で生産量増加〉
三浦
では、さらに深掘りしていきます。まず、髙橋工業さんが導入された設備について、特筆すべき内容を教えてください。

木嶋 日清医療食品さんの従来のCKでは、冷却工程がバッチ式で、当社の親会社である福島工業さんのブラストチラーを活用されていました。ただし、今回の1日10万食の料理を冷却するとなると難しく、当社にお話が参りました。

当社のトンネルフリーザー(連続式冷却器)は商品の自動搬送冷却方式として省人化を実現しました。これまで、主に冷却の用途ではコンビニベンダーさんで数多く採用実績がありましたが、クックチルでの用途で採用されたのは初めてです。

髙橋工業 トンネルフリーザー(連続式冷却器)

髙橋工業 トンネルフリーザー(連続式冷却器)

主にこだわったのは、達温基準まで早く冷やすことであり、商品搬送面のコンベアの上下に配置されたノズルより高速ジェット噴流を商品に直接吹き付ける事で、冷却時間の短縮を実現、生産量の増加に大きく貢献する事ができたと思っております。

また衛生管理機能としてCIP自動洗浄装置と蒸気殺菌システムを搭載、ボディーは冷却中の低温域、蒸気殺菌中の高温域の熱応力、熱伸縮に耐えうる一体溶接のタンク構造とし、当社独自の大型ウイング扉を取り付ける事で、庫内洗浄時の目視確認が容易になっております。

この蒸気殺菌システムは、洗浄後に庫内に蒸気を投入し、+90℃まで昇温、30分保持、強制排気を実施、庫内の殺菌を行う事で、食材の初発菌数を抑え、今までよりもより衛生的に商品を冷却する事を可能としました。

三浦 医療・介護の食事サービスの工場ということで特に注力された点は?

木嶋 モバイルプラスのメニュー構成は非常に多品種のため、食材から出る気化した有機物質(例:卵製品や酢酸を含んだ食材)により庫内冷却機の腐食が懸念されました。

そこで通常は熱伝導が高い銅管、銅フィンの冷却器をご提案しますが、耐食性を考慮し庫内の冷却器はすべてステンレス管、ステンレスフィンの冷却器を採用頂きました。

また商品によっては風で飛散しやすい食材もあり、生産アイテム切換え時のコンタミの問題も懸念されておりましたので、冷却器ファンはインバーターを搭載し、生産される品種によって風量調整を出来るようにしました。

さらに、加熱調理後の商品から出る水蒸気が冷却器に付着し、霜となり蓄積する事で冷却に影響を及ぼす事が懸念されておりましたので、それを最小限に食い止めるため、トンネルフリーザー(連続式冷却器)入口部に予冷室を設け+5℃で冷却、商品から出る水蒸気が冷却器に付着しても霜にせずドレン水として排出し、表面が冷えた所で本冷室にてしっかり冷却する事で本冷室冷却器の霜付のリスクを低減、長時間稼働を実現させております。

三浦 苦労した点は?

木嶋 一度にタンクフリーザーを11台納入させて頂いた事は今まで実績がありませんでしたので、部品調達、生産工程、組立工場の確保、納品工程、納品後の工程管理には非常に苦労しました。

またブラストチラーと異なり芯温計を用いた運転制御では無く、商品によってコンベアスピードを変更するタイマー運転制御となりますので、事前にある程度メニュー毎にグループ分けをしておく必要がありました。当社本社にあるラボでお客様も交えながら、最終的には約50アイテムの冷却データを取りグループ分けを行いましたが、その作業は非常に苦労しました。

ただし、営業、サポートグループ、設計、施工、サービス、工場が製販一体となってお客様のために、という思いが一つになっておりましたので、大きな初期クレームも無く納めさせて頂く事が出来ました。

(この項、続く)

〈給食雑誌 月刊 メニューアイディア 2018年4月号より〉

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