〈座談会〉医療・介護の食事サービスを変える! 日清医療食品「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」にみる省力化(1)

日清医療食品の「ヘルスケアフードファクトリー亀岡(以下、HFF亀岡)」が昨年12月に本格的に稼働した。

加熱・冷却・包装などの製造過程の自動化・ライン化を図り、生産性を向上。無人搬送車や立体倉庫・自動仕分け機も導入し、省力化を実現した最新設備の工場である。従来の工場では1日10,000食を約60名の人員で製造していたのに比べ、新工場では約300名の人員を採用する。単純計算で10倍の食数に対して人員は5倍であり、5割の省人化を実現している。多品種の商品を大量に、かつ効率的に製造するのは極めて難しい中、同社はいかにして作業効率を上げる自動化システムを作り出したのか。

「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」外観

「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」外観

同社と設備設計を担当した中央設備エンジニアリング、製作者のダイフク、髙橋工業、テラオカの5社による座談会を開催し、省力化を追求する思いと連携、HFF亀岡の充実した設備内容を紹介する。人手不足の中、省力化の重要性とセントラルキッチン方式(以下、CK方式)の可能性を見出してほしい。

座談会の参加者は次のとおり。

△日清医療食品(株) 関根弘明課長
△中央設備エンジニアリング(株) 名古屋一統括部長代行
△髙橋工業(株) 木嶋亮介課長
△(株)テラオカ 松田智樹ブロック長
△(株)テラオカ 古川康宏部長
△(株)寺岡精工 山根一志主任
△(株)ダイフク 中村親課長

司会は、三浦宏章(メニューアイディア編集部記者)が務めた。

「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」 工場概要

「ヘルスケアフードファクトリー亀岡」 工場概要

〈HFF亀岡における自動化の軌跡〉
三浦 まず、日清医療食品の関根さんに伺います。HFF 亀岡における自動化は、どのように進められたのでしょうか?

関根 当社は基本的にクックサーブで食事を提供していますが、今後の少子高齢化を見据え、CK方式をさらに加速することが重要であると考え、従来では難しいと言われていた大量・多品種の自動化を目指し、1日10万食の工場「HFF亀岡」を竣工しました。

中央設備エンジニアリングの名古屋さんから、これまで手掛けられてきた食品工場のノウハウを伺い、現在のCKで時間がかかっている製造工程において、自動化・省力化できる業務を提案いただき、実現しました。

三浦 竣工の計画はいつから?

名古屋 私が生産設備を担当し、上司がプロジェクトマネージャーを務め、2015年の8月から設備選定を開始しました。そこから足かけ3年かけて、昨年の8月26日にHFF亀岡は竣工しました。

三浦 中央設備エンジニアリングさんは自動化に向けて、どのような提案をされたのでしょうか?

名古屋 食品製造プロセスの自動化でも不定形で液体を含む食品を扱う場合、技術的なハードルが高くなります。今回の日清医療食品さんのケースでは、下処理から加熱・冷却、包装工程をホテルパンというステンレス製の容器を使用することで自動化しやすいマテリアルハンドリング手法を提案しました。

従来、加熱・冷却工程はバッチ処理が主流でしたが、多種の福祉医療食メニューに対応するため、今回は連続ライン化と自動化で対応することと、包装後製品の配送先約800箇所の仕分けに立体倉庫・自動仕分け機を採用し、仕分け作業の自動化と誤仕分け防止を実現しました。

さらに、多品種のフルーツを処理する製造ライン、自動搬送車による省力化等多くの新規技術を採用していただくと共に、連続ライン化と自動化を下支えするMES(製造実行システム)は日清医療食品さんとともに開発しました。

自動搬送車

自動搬送車

従来と変わらないおいしい医療福祉食を衛生的な環境の中で生産できるよう食品工場建屋の設計と建設も任せていただき、上記の多くの製造技術を弊社のエンジニアリングによって改良し、組み合わせ、統合して稼動させて、多品種・大量生産が可能な福祉医療食製造工場をご提供できたと考えております。10万食の医療食(アレルギー対応あり)を800事業所に配送する工場は日本初です。

〈日清医療食品が求めたのは美味しさと自動化の両立〉

三浦 課題共有・検討から機器選定、導入に至るまで、日清医療食品さんが中央設備エンジニアリングさんに特に求めたことは?

関根 私たちの事業は給食サービスであり、安全・安心な食事の提供はもちろん、美味しさも求められます。従来、各CKではスチームコンベクションオーブンを使っていましたが、今回はシブヤマシナリーさんの連続式加熱機という特殊な機械を入れていただくなど、自動化を踏まえつつも、美味しさにもこだわった食事づくりができる仕組みを依頼しました。クックサーブで作るのと変わらない品質のものを工場で作るとなると、今までの食事内容を踏まえた上で、より安定的に提供するにはどうすれば良いかがポイントとなります。

三浦 美味しさの実現が一番難しいと思います。

関根 私たちの食事サービスは、塩分制限など使える調味料が限られ、日々のレシピも違います。1日あたりの食塩相当量の摂取量は決まっているので、限られた調味料で、いかに美味しくするかが課題です。

クックチル商品はCKで加熱、冷却してから、配送後、厨房で再加熱するので、どうしても食材へのダメージがかかります。例えば、天ぷらのパリッとした食感や焼き物のジューシーさ等は最新機器の導入と調理法の駆使、そして取引している食品メーカーの技術力の向上も相まって、時間を置いても仕上がりをキープすることができます。

焼き魚も、シブヤマシナリーさんの連続式加熱機だと、中はふんわり、表面はパリッとした仕上がりになり、美味しさを維持できます。我々の努力だけでなく、関連企業の技術革新により、クックチルでもクックサーブ同様の品質の食事が提供できるようになってきました。我々が知りうる知識と技術の結晶が、HFF亀岡の食事であると考えています。

(この項、続く)

〈給食雑誌 月刊 メニューアイディア 2018年4月号より〉

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