〈マンデー・オピニオン〉新カテゴリーは吉と出るか

冷食日報 2018年3月19日付
市販用冷食の新商品が出そろった。今春も、これまで冷食に親しんでこなかった消費者へアピールすべく、新たなカテゴリーで挑戦する商品が目立つ。味の素冷凍食品は、グルメ雑誌「dancyu(ダンチュウ)」と共同開発した「夜九時のひとり呑み」シリーズ6品を発売し、おつまみ市場に本格的に冷食を投入してきた。

家でひとり呑みをする際のおつまみは、乾き物のするめいかなどいわゆる定番商品が多く、同社のユーザーへの調査が示すように「メニューがマンネリ化する」感は否めない。また、仕事帰りに立ち寄ったSM(食品スーパー)の惣菜をおつまみにするにしても、店舗のオペレーションの関係上、夕方以降となると作りたての商品は少ない。私もその日の午前中に作られたしっとりとした2割引きの天ぷらなどを、ひとり呑みのアテにすることはあるが、どことなく物足りなさを感じてしまう。

同シリーズは、出来立てではない惣菜を買うくらいなら、おつまみに特化した冷食を自宅でチンして食べた方がよいという消費者の潜在的なニーズをすくいとったものであろう。「れもん豚カルビ」や「にんにく空芯菜」といった6品の多彩なラインアップも、選択肢のマンネリ化という不満を解消する一助となるのではないか。「dancyu」や「蔦谷書店」などと共同で展開する販促活動も含めて今後の動きに注目したい。

おつまみ用冷食といえば、ケイエス冷凍食品も、「今日もお疲れさん」とねじり鉢巻の男性がねぎらってくれるインパクト抜群のパッケージが印象的な「さつま揚げ串」を発売した。今後、これらおつまみ用の商品は増加していくのだろうか。こちらも合わせ動向を注視したいところだ。

新たなカテゴリーとして注目されている商品は他にもある。ニチレイフーズの「切れてる!サラダチキン」だ。同商品は自然解凍でそのまま食べることもできるが、サラダに添えたり、ラーメンの具材にするなどひと手間加えることで本領を発揮する「素材系」商品だ。「新たなカテゴリーなので、どう提案していくか。他メーカーとのコラボも検討して、認知度を上げるのが一番の課題」(沖田健太郎・関西支社支社長代理兼家庭用グループリーダー)と話すが、SMのバイヤーは興味津々だ。

本紙の「低温・冷食流通インタビュー」で話を聞いた阪急オアシスとコープこうべの冷食担当バイヤー両氏は、「注目している新商品は?」という質問に対して、口をそろえて同品を挙げた。理由として、「素材系」商品がヒットし、認知されれば冷食の使いみちの幅がグンと広がることが挙げられた。

確かに、現在の市販用調理冷食はレンジでチンしてそのまま食べられる時短・簡便という利点がある一方で、「料理をしたい」「ひと手間かけたい」といったユーザーには訴求しにくい。その点、素材系商品は加工度のやや高い生鮮食品とも言え、自ら調理することができる。このカテゴリーが浸透すれば、冷食の使い方は「ただチンして食べるだけ」というものから一気に広がりを見せるだろう。

「おつまみ系」や「素材系」、これら新たなカテゴリーの動向を今後も追っていきたい。

〈冷食日報 2018年3月19日付より〉

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