毎度お馴染み「ご意見番」の一人である農林水産アナリストの髙木勇樹氏(元・農林水産事務次官、元・農林公庫総裁、現・日本プロ農業総合支援機構理事長)に訊くシリーズ。最後は「輸出」をめぐる話を訊いた。なお本インタビューは5月22日に実施したもの。

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――需給の話とはスケールが異なりますが、国は今、「輸出」に力を入れています。

髙木 これも基本的に言えばコストを下げていくしかない。ただし、ここで言うコスト低減とは、単に生産・流通コストを下げていくことを指すのではなく、何らかの付加価値をつけることで、結果的に売れることを指す。それが付加価値になるかどうかは別にして、玄米や精米を単に輸出するのではなく、パック米飯にするとか、弁当に加工するとか、そうした試みのことだ。

こういうことは、国は苦手だろう。民間も、そもそも米の商品力が競争できるほど高いなら、国に言われるまでもなく今までだって輸出していたことだろうし。

――しかしWTOルール上、輸出補助金は付けられませんから、国は為す術なし。にもかかわらず、年1万tをあと1年半で10万tにしろという目標は、単なる打ち上げ花火にしか見えませんが。

髙木 そうでもないだろう。やってもらいたいという「希望値」なのではないか。PDCAだ、KPIだと言っているのだから、目標を達成できなかったら検証して、何故やれなかったか分析するしかない。いわゆる「お上」方式だ。

確かに今のままでは目標達成は困難だろうが……これは言っていいのかどうか、民間が何の支援もなしにうまくやってしまうと……いや、民間業界ももう少しズルくなってもいいのではないか。

――は……?  ええと、民間はあまり頑張らないほうがいいと?

髙木 いやいや、そうではない。必死にやらなければダメだ。でも、必死になってやりました、様々な工夫もしました、例えば中国に対しては確かに搗精工場が1か所から3か所に拡大したけど、搗精賃の10が8になった程度で、しかも全体のコストからすれば微々たるものですと。やはりどうしても原価が高い。様々な企業努力を積み重ねたけれども、やはり目標達成には至りませんでした、そうなって初めて、「こんな術はどうでしょう?」と提案できるわけだ。

――本紙のインタビューで、(株)神明の藤尾益雄社長は、「海外展開する日本の外食チェーンに、日本産米を使ってもらうために販促を打ったらどうかと。お金が出せないなら現物を出すとか、1割増量とか。販促を打てばコストを下げられますから、結果的に末端価格を下げられるわけです」と語っていましたが。

髙木 ああ、そういう提案もいい。加えて言えば、もっと根本的な交渉をして欲しいと主張すべきだ。例えば先ほどの中国の例で言うと、「そもそもカツオブシムシはまだ日本にいるのか、お米につく可能性はあるのか、何とも不思議な話ではないか」と業界側が声をあげないと。もちろん中国側を慮って、役所は二の足を踏むだろうが、しかしそんなことをやっているから、いつまで経っても足下を見られる状態(今回、指定搗精工場数が増えるにあたり、燻蒸対象病害虫にグラナリアコクゾウムシとTribolium destructor が追加されている)が続くのだ。是非そうした声をあげてもらうことを期待している。

――ありがとうございました。

〈この項、了〉

【髙木勇樹氏プロフィール】たかぎ・ゆうき 1943年(昭和18年)群馬県生まれ。東大法卒、1966年(昭和41年)農林省入省。畜産局長、大臣官房長、食糧庁長官などを経て1998年(平成10年)農林水産事務次官。退官後、農林中金総合研究所理事長、農林漁業金融公庫(当時)総裁など。ライフワークのJ-PAO(日本プロ農業総合支援機構)理事長、JBAC(日本ブランド農業事業協同組合)顧問、やまと凛々アグリネット顧問などを務めている。75歳。

〈米麦日報 2018年6月5日付より〉

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