WWFジャパンがメディア向け勉強会をこのほど都内で開き、同団体の東京五輪を見据えたパーム油調達の考え方を説明したほか、関連企業として花王がパーム油調達の取り組みについて説明した。

始めに、WWFジャパン自然保護室森林グループの伊藤小百合氏が、東京五輪組織委員会で現在、持続可能なパーム油の調達基準についてWG(ワーキンググループ)で検討されていることにふれ、「問題のあるパーム油が(東京五輪で)使用されると、日本の運営姿勢、企業が批判の対象にされるリスクがある。それには民間認証のRSPOが、問題がないことを示すツールになる。認証制度は乱立しているが、RSPOは何重にも審査、監査することで独立性が保たれている」と主張した。

続けて同グループの南明紀子氏が、WGにおける議論に言及し、「持続可能と言えるのか疑問に思う議論となっている。RSPOだけでなく、(マレーシアの)MSPOや(インドネシアの)ISPO(といった政府認証)も、調達基準として認める方向にある。何が持続可能かの話が先なのに、認証制度の比較に流れている。制度は各々の基準を満たすことを保証するだけで、何を求めるかを先に決めなければ、認証制度の選択の議論は本来できない」と述べ、WGを批判した。

〈MSPOなどに「お墨付き」を与えても現場は改善しない/WWFジャパン〉
さらに南氏は「WGでは、成績の悪い学生(MSPOやISPO)を救う手があってもいいとの意見があるが、MSPOは完璧ではないことを世界が認識している。また、認証制度は独立した団体が(基準に合っているかを)監査しているかが重視される。しかしMSPO、ISPOは国の制度であり、許可は国が出す。監査の最終確認を国がするのはどうなのかと考えている。成績の悪い学生を救い上げ、調達基準として『お墨付き』を与えても、生産現場は改善しない。東京五輪が目指す持続可能性を提示し、各認証制度の不足部分を指摘し、不足部分が担保されたら調達基準に加える形が望ましい。結果としてロンドン五輪よりも緩い基準となってしまっては、東京都をはじめとした自治体や企業には何も残らない、何をやったか分からなくなっては意味がない。高い基準を掲げ、できなかったものはできなかったという方が重要だと考えている」と持論を展開した。

続いて、花王の田中秀樹執行役員が、同社の原料調達の取り組みを説明した。同社では持続可能な社会に貢献するため、原料調達指針や、調達先指針などを策定しているとした上で、田中執行役員は「パーム油や紙パルプの購入に際しては環境問題、生物多様性、人権問題のリスクと、事業が自然資本に依存していることを認識し、原産地の森林破壊ゼロを支持した調達を行っている」とした。

パーム油の調達については、搾油工場まで追跡可能なもののみを購入する、トレーサビリティに取り組んでいることや、20年までに農園、サプライヤー、第三者機関と協働し、原産地の森林破壊ゼロを確認し、農園まで追跡可能な体制とほか、グループ工場でRSPOのSCCS認証(製造・加工・流通過程の管理認証)の取得を目指し、グループで追跡可能なサプライチェーンの構築に努めるとした。

〈RSPO認証コスト、パーム油3%・パーム核油は10%程度高い/花王〉
質疑応答では、RSPO認証油のコストについて、田中執行役員は「パーム油は3%、パーム核油は10%程度高い。100%認証油に切り替えるのは企業の業績的に厳しい。食用油関係企業の営業利益率は高くない。その中で原材料費が上がることは厳しいことになる。価格に転嫁できなければ、切り替えられない」と回答した。

続けて田中執行役員に対し「トレーサビリティを行っているのは、RSPOが頼りないからか、信頼性が担保されないから」との質問には、「18年は5万t程度の認証油の購入を計画しているが、EUの需要もあり、RSPO認証油を100%は買えない。RSPO認証油を買わないとなれば何もない、ということになるので、そのためにトレーサビリティを行っている。また、RSPO自体は信頼がおけるが、泥炭地開発など一部足りていない部分もある」との認識を示した。

次に小規模農家ではRSPO認証が取得しにくいとされているが、小規模農家への取り組みについて質問が挙がり、南氏がパーム油生産の4割が小規模農家だとし、「小規模農家は資金面、知識がないために違法な栽培をしてしまう。根本は教育や貧困にある。現場の改善には、小規模農家の意識改善が必要だと考えている。そのためRSPOでも小規模農家支援を行っている。全員の取得は難しいが、小規模農家に限り取得ルールの一部を変え、巻き込む形で取り組んでいる。ただ、全体を変えるためには国によるテコ入れが必要だと考えている」と回答した。

また東京五輪のパーム油調達基準における認証制度の捉え方については、南氏が「企業が調達するのであれば、MSPOで調達するのも良いことだ。しかし東京五輪での持続可能な調達基準の中に、MSPO、ISPOを加えるのは、現場の社会面、環境面の改善につながるかは疑問がある」と答えた。

〈大豆油糧日報 2018年2月23日付より〉

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