【USSEC主催・米国視察】PNWの穀物集荷・輸出会社、船舶代理店へ UGC、三井物産グループとして年間600万tの穀物・油糧種子取り扱い
本紙「大豆油糧日報」はアメリカ大豆輸出協会(USSEC)の招待により、大豆の世界会議「ソイコネクスト」を取材する機会を得た。また、PNW(太平洋岸北西部)に位置するワシントン州バンクーバーの穀物集荷・輸出会社や船舶代理店、イリノイ州やオハイオ州の農場などを視察した。製油メーカーや商社で構成されたコモディティチームの一員として参加した。チームメンバーはUSSEC立石雅子日本副代表と油糧輸出入協議会の塩見聡専務理事をはじめ、日清オイリオグループ、J-オイルミルズ、昭和産業、伊藤忠商事、丸紅、三井物産、三菱商事の各代表者と通訳の11人。一部、食品大豆専門商社と豆腐、納豆メーカーが中心となるフードチームにも同行した。8月3日から8日にかけて取材した内容を順次、掲載していく。
2日にサンフランシスコ国際空港からポートランド国際空港に到着、3日に車でワシントン州バンクーバーの穀物集荷・輸出会社UnitedGrain Corporation(ユナイテッド・グレイン社、UGC)の穀物輸出ターミナルと、船舶代理店・物流サービス会社のBlue WaterShipping(BWS)を訪れた。
UGC(本社バンクーバー)は1969年に設立し、現在は三井物産グループとして事業を展開している。2,000社以上の生産者・供給会社から小麦、大豆、トウモロコシなどを調達し、バンクーバー港から世界各国へ輸出している。同社のバンクーバーの輸出ターミナルでは年間600万tの穀物・油糧種子を取り扱っている。
当日は7万t規模のパナマックス船に、韓国に輸出される小麦が積み込まれていた。産地ごとに品質の異なる小麦はブレンドすることでたん白質量を調整して積み込まれる。パナマックス船へは1時間当たり約2,000t、積み込み完了まで48時間を要する。

同ターミナルは1930年代に建てられ、UGCが69年に買い取ったという。貯蔵ビンはモニターで一元管理している。大豆と比べるとトウモロコシの貯蔵比率が高かった。2012年には800万ドルの投資を行い、穀物エレベーターの貯蔵ビンを設置している。1日24時間体制で従業員は12時間のシフト体制で勤務しており、施設は年2回シャットダウンしてメンテナンスが行われている。

PNWへは鉄道での輸送が中心となる。鉄道は100両編成の貨車に積まれ、大豆やトウモロコシが運ばれてくる。バージ(はしけ)でも運ばれる。バージの積載量は720万lb(ポンド=約0.45kg)で、積み下ろしには5時間ほど要するという。コロンビア川のバージ積載量は約3,000tで、ガルフのミシシッピ川を通るバージの積載量(約1,500t)の倍の大きさであるのが特徴だ。


○BWS、船舶取扱数は年間1,000隻以上、あらゆる港湾サービスを提供
BWS(ブルー・ウォーターシッピング社、本社ルイジアナ州ニューオリンズ)は1979年にミシシッピ川のほとりに米国の海運代理店として設立され、米国主要港の海運代理店サービス、バルク貨物の精密貨物輸送を行っている。船舶取扱数は年間1,000隻以上で、事業所はワシントン州バンクーバー以外に、同州シアトル、ロサンゼルスのニューオリンズ、テキサス州ヒューストン、オレゴン州ポートランド、バージニア州ノーフォーク、アラバマ州モービルに構えている。
PNWの国際物流を支えている同社の業務プロセスについて、Chief Strategy Officer(CSO)のバレット・バス氏が説明した。PNWの港が米国内の他の地域と異なる点は、国際港湾倉庫組合(ILWU)の組合員を使うことが義務付けられていることだ。他地域の港ではこういった決まりはないといい、組合員との交渉が行われるのも同地域の特色だという。PNWへの輸送手段は鉄道が約8割を占め、残りがバージで運ばれてくる。

船舶代理会社としての同社の役割についてバスCSOは、「船会社、用船者、船主に対し、タイミング良く、効率的に、費用対効果が高い寄港の手伝いをすることだ。顧客が必要とするあらゆる港湾サービスを提供している。船舶代理業務に加えて、データの収集・分析も行っている」と説明する。
用船者から船が指名され、船主やタイムチャーター側から同社が代理店として任命された時点で、業務がスタートする。最初に行う仕事は、その船が入港し荷役を終えるまでに必要となる費用を見積もることで、その概算費用を船主へ提示し、船主から必要資金を預かる。その後、船の到着前の準備を開始する。税関や国境警備局、穀物エレベーター会社、用船者、船主、パイロット(水先案内人)、米農務省、検査会社などと連携しながら手続きを進めていく。
○コロンビア川は最も危険な川の一つ、航路を誘導するバーパイロットはヘリで乗船
PNWに位置する穀物エレベーターや輸出ターミナル運営会社は、UGCをはじめ複数あるが、船はコロンビア川を遡り、各エレベーターから穀物を積み込むことになる。

船がコロンビア川の河口に到着すると、バーパイロットが乗船して航路の誘導を行う。コロンビア川は最も危険な川の一つとされており、バーパイロットはヘリコプターで乗船し、船をコロンビア川へ安全に導くのだという。大量の河川水が一気に太平洋へ流れ込むため、河口付近では海流と波が非常に複雑になり、高い波が立つことも多いためだ。コロンビア川の河口からはバーパイロットが船を導き、途中でリバーパイロットに交代する。PNWでは2種類のパイロットによる水先案内が24時間体制で行われている。バンクーバー港までは水深が約13.1mで、航路が狭いためタグボートなしでは船を方向転換させることが困難だという。

船はエレベーターへ向かう前に、決められた場所に投錨して一時停泊する。投錨地(Anchorages)で船舶代理店と米農務省などの検査員が乗船し、ホールド(貨物倉)の検査を行う。この検査を通らないと、穀物エレベーターに入ることはできない。検査項目は、ホールドが完全に清掃されているか、乾燥しているか、虫がいないか、前の貨物の積み残しがないか、強い臭いが残っていないかなどが挙げられる。検査に合格し、安全に受け入れが可能な状態であることが確認されると証明書がもらえ、その後、停泊の申請を行うと穀物の受け入れが可能になる。ホールドの検査は非営利機関のNCB(National CargoBureau)の検査員が行う。なお、大豆などの穀物の品質については米農務省の検査員が分析を行う。

エレベーターから積み込みを終えた船が出て、投錨して待機していた次の船が着岸して入れ替えることを「係留」という。穀物エレベーターからホールドに積み込みが始まると、最初はかなり積み込みスピードが早いが、ある程度穀物で埋めると遅くなる。その理由は、安定性の要件を満たすために、重量バランスを維持するため穀物を平らに均す必要があるからだ。単一の穀物を積む方が最大積載量に近づけられるが、例えば5ホールドのうち3ホールドが大豆で、残りのホールドにトウモロコシや小麦が混載されるケースが多いという。

○PNWは航海時間が短くなるメリット、多い年は4,000万tの穀物を輸出
積み込みを終えた船はすぐには出港せず、タグボートの支援を受けながら、適切な潮の高さになるまで待機する。大型船は十分な水深が確保できる時間帯でなければ安全に出港することができないという。

なお、係留の時には順番待ちが起きることがある。待機時間については、輸出数量や穀物の収穫時期、天候、鉄道輸送など要因で変わる。PNWでは冬場は降雨も多く、雨による荷役停止も発生する。小雨の場合は作業が行われるが、2~3週間船が待機することもあるという。
潮の状態の影響で最大14時間待つこともある。PNWへは大豆やトウモロコシの多くがノースダコタ州やサウスダコタ州、ミネソタ州などから鉄道で運ばれてくるが、途中でロッキー山脈を越える必要があり、雪で線路が遮断され、貨車が届かないことで積み込みの待ち時間が発生することもある。数週間単位の遅延になる年もあるというが、通常は平均5~10日程度の待ち時間だという。さらに10~12月は北米で大豆の収穫が始まり、その後トウモロコシが続く。この時期は産地として競争力が高く、輸出数量も増える。穀物エレベーターはほぼフル稼働になり、船の待機時間も長くなる。
バスCSOはガルフとの違いとして、「PNWは航海時間が短くなるのがメリットだ」と話す。また、「大豆の品質差も年々なくなっている」と強調した。24年のPNW全体の穀物輸出量は3,700万tで、多い年は4,000万tに上る。最大輸入国の中国にはPNWから3分の1、ガルフから3分の2が出荷されている。
〈大豆油糧日報2026年8月20日付〉







