【醸造機械メーカーのトップに聞く】フジワラテクノアート・藤原恵子代表取締役社長 20年以来の売上規模で着地見込み、昨年・一昨年受注のみそ・しょうゆの売上計上
――通期の見通し
売上は堅調に推移しており、20年以来の売上規模で着地する見通しだ。昨年、一昨年に受注した国内のみそ、しょうゆの売上が今期に計上される。今年は焼酎の設備更新の受注もあり、その一部も計上予定だ。また、大手メーカーからのシステムや制御更新などの一定規模の案件も確保している。ここ数年は大型の設備更新の引き合いが上がってきている。
今年の受注金額では焼酎が最大だが、件数では日本酒が多く、新設や更新の案件が目立つ。 しょうゆ関連についても、既存設備の更新需要を背景に、同程度の規模で推移している。製品では「吟醸蔵商品群」を中心に、全自動洗米浸漬装置や吟醸甑は定期的に納入がある。小規模な酒蔵向けの設備は展示会でも好評で、「計量洗米浸漬装置Solo」も新たな納入が決まるなど、導入が進み始めている。
新しい機器・装置の開発について日本酒向けは重点分野の一つ。今後は小仕込みに対応する製品の需要が伸びていくと考えている。
――醸造以外の分野のトピックは
固体培養技術の幅広い分野への応用展開に注力している。「FOOMA アワード2026経済産業省製造産業局長賞/最優秀賞」を受賞した「小型通気式固体培養装置」は、未利用資源の高付加価値化やアップサイクルへの活用に関する相談が多い。国内外で固体培養への関心は高まっており、さまざまなテスト依頼が寄せられている。
食品副産物などの新たな活用可能性を広げる取り組みを進めている。直近では米国からのテスト依頼もあった。同装置は、実用規模に近い培養条件を小規模で再現でき、研究段階から産業化に向けた検討を進めやすい点が強みだ。さらに、研究開発の初期段階から固体培養に取り組みやすくする、より小型の研究用装置も開発している。恒温恒湿槽に設置するタイプで、ラボ規模で通気式固体培養ができ、複数条件での培養比較やデータの記録・検証が可能だ。年内に発売を予定しており、メーカーの研究部門を中心に導入を図っていく。
小規模対応へのニーズは多く、より柔軟に対応できる体制を整えていく。液体培養の依頼も増えており、化学業界など の分野からの引き合いも増えている。こうした対応領域の広がりを見据え、専門人材の強化を進めている。
〈知財体制・HRの専門人材も強化、岡山大学と社会実装に向けた研究拠点を〉
――採用活動について
定期的なキャリア採用を通じ、組織力の強化を図っている。昨年より、知財支援機関の独立行政法人INPIT(インピット)の支援を受け、知財戦略と経営戦略の一体化を進めている。さらに、弁理士を採用するなど、知財体制の強化にも取り組んでいる。加えてHR(人的資源)の専門人材も強化し、採用や教育の充実に取り組んでいる。営業、設計部門でも増員が進んでおり、多様な専門性を持つ人材を獲得できている。
社員数の増加を受け、事務所棟の増築を決定した。今後は社内外での共創を加速させる。単なる執務スペースの拡張ではなく、部門を越えた連携を促すオフィスへ刷新し、開発と営業などが日常的に情報を交わし、新たな価値創出につなげる。ホールも新設し、社内外の交流や共創の場として活用する。
企業見学、工場見学も引き続き増えており、直近では農林水産省の視察も受け入れた。広報面では、Instagram での発信にも注力しており、海外向けアカウントでは麹や発酵に関心をもつ海外の人々との接点が広がっている。
――社内で注力している取り組み
人的資本を最優先事項と捉え、教育制度の強化や人事制度の見直しに取り組んでいる。一人ひとりの能力をいかに引き出し、自律的な動きを支援するかが重要だ。
DXに関しては、情報セキュリティーを担保しつつ、全社で生成AIプラットフォームを導入した。生成AIの導入と並行して、人間が担うべき役割について社内で議論し、それを人事制度に落とし込むため、AI時代に求められる人材像についてブラッシュアップしている。製造現場においても新しい溶接技術の導入による生産性向上など、現場主導の取り組みも進化している。
製品開発においても、開発部門主導のものだけでなく、「計量洗米浸漬装置Solo」のように営業部門の提案から生まれた製品もあり、多角的なアプローチが進んでいる。
――新しい取り組みがあれば
イノベーションにも力を入れている。岡山大学とは、これまで寄付講座で培ってきた研究や産学連携を土台に、微生物ものづくりの社会実装をさらに進める全学的な共創拠点構想を推進している。工学、医学などの理系分野に加え、AIや人文社会科学など幅広い分野の研究者が参画する学際的な組織を目指す。
寄付講座で積み重ねてきた研究や連携を、より幅広い研究分野や社会実装へとつなげ、岡山大学とともに新たな産学連携の形をつくっていく。研究開発にとどまらず、社会実装までを見据えて大学の研究者と当社の社員が共同で研究を進め、微生物を活用した新たな産業の創出につなげていきたい。
〈大豆油糧日報 2026年9月25日付〉







