キリン「タップ・マルシェ」に伊勢角屋麦酒など2社が新たに参画

キリンビールはクラフトビールを簡便に提供できる小型のディスペンサー「タップ・マルシェ」で取り扱うブランドを拡充する。新たに二軒茶屋餅角屋本店(三重県伊勢市)、Far YeastBrewing(東京都渋谷区)の製品をラインアップに加える。2017年6月の木内酒造(茨城県那珂市)に加えて、これで合計7ブルワリー、17銘柄のラインアップとなる。

「タップ・マルシェ」は、1台で4種類のクラフトビールが提供でき、省スペースで、容易に3L小型ペットボトル容器を交換できるディスペンサー。飲食店が複数の銘柄から自店に合ったビールを選ぶことが可能。

キリンビールは、17年4月に首都圏1都3県で展開を開始、年間で1,000店超に導入した。18年3月14日からは全国展開をスタートさせ、展開開始約1カ月で全国47都道府県の取り扱いとなり、累計展開店舗は2,500店を突破した。二軒茶屋餅角屋本店のブランド名は伊勢角屋麦酒。今回、5月28日から「ペールエール」と「ヒメホワイト」(ベルジャンホワイト)の2銘柄を導入する。Far Yeast Brewing は6月18日から、ウィートセゾンの「東京ホワイト」とベルジャンIPA の「東京IPA」の2銘柄を導入する。

10日に、木内酒造を含む4社で発表会を開催した。キリンビール企画部の山田精二部長は「ビールを5年後、10年後“イケてるお酒”にしていきたい。そういう想いで、複数の有力クラフトブルワリーとの協働・育成に努めている。タップ・マルシェは、今春から全国展開し、例えば明太子に合う、ザンギに合うといったように、地元の食材や料理とのペアリングも提案している。クラフトビールの市場シェアは米国では数量ベースで約12%、金額ベースで約20%。日本はまだそれぞれ約0.7%、約1.5%だが、首都圏だけでみれば、それぞれ1%強、2%強と推定している。今回、2社を迎えて、更に充実させたい」と語った。

記者団の質問に答えて「今後の展開は、もちろんキリンの求める品質基準をクリアすることが前提だが、100も200もということにはならない。ただ、すでに一つはほぼ決まりつつある。増えていく方がお客様に価値がある。タップが足りないのでは、という見方もあるが、2,500店×4タップで1万になる。それを17で割っても相当な数だ。

飲食店には○○フェアのときにはこの銘柄、といった具合に変化を付けて頂いている」と述べた。

〈販路開拓に期待―新規2社〉
各社が自社製品を説明し、二軒茶屋餅角屋本店の鈴木成宗社長は「餅屋から始まる味噌・醤油醸造の老舗で私で21代目となる。東北大学で微生物を学んでビールにのめり込んだ。規制緩和後の1997年にビール会社を創業、機器分析はしっかりしていると自負している。今回のペールエールは、当社のフラッグシップビールでファンからは“イセペ”の愛称を呼んで頂いている。鮮烈なアメリカンホップの香りで、典型的なアメリカンスタイルだ」と説明。

Far Yeast Brewing の山田司朗社長は「2011年設立、まだ6年ほどの会社だ。これまではベルギーで“KAGUA”などを委託製造し、世界17カ国へ輸出している。17年5月から多摩川源流の山梨県小菅村で醸造開始している。本社は渋谷区。“東京ホワイト”は当社を代表する定番。IPA もそうだが、伝統的なベルギータイプを踏襲している」と紹介した。

木内酒造の谷幸治製造長は「95年に常陸野ネストビールを立ち上げ、23年になる。昨年の6月にタップ・マルシェに参入して、爆発的に出荷が拡がり、驚くばかりだ。それまでやはりビアバーなどが多かったが、カバーしていなかったマーケットを掘り起こしてくれた」など振り返った。

今後への期待について、鈴木社長は「自社だけでは、なかなか流通を拡げる事が難しいし、飲食店にしてもボトルかケグとなると扱いにくい面がある。そこに3Lという絶妙な大きさで、店舗は導入しやすいし、大変ありがたい。業界発展につながり、現在の1%が市民権を得ていくことにもなる」とし、山田司朗社長も「まだまだビールの奥行きを知らない方が多い。当社もビアバーやビアフェスが主な出荷先だ。一般にアクセスする機会がなかったが、今回、いい機会になった。山梨の醸造所で自社で製造して1年になるが、タップ・マルシェがベースとなり、飛躍が出来れば」と語った。

〈酒類飲料日報 2018年4月11日付より〉

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