【インタビュー】ニチレイフーズ・滝業務用事業部長 強み持つ「4カテゴリー」で加工度のグラデーション提案に注力

ニチレイフーズ常務執行役員業務用事業部長・滝英明氏
ニチレイフーズ常務執行役員業務用事業部長・滝英明氏

〈ニチレイフーズ常務執行役員業務用事業部長・滝英明氏〉

――2025年度業務用事業の業績振り返りと、販売ルート別の概況について

国内における業務用冷凍食品全体の売上高は2%増2,048億円で、CVS向けを除くと全般的に低調となった。特に戦略カテゴリーである売上構成比が高いチキンと農産品は、為替や原材料、動燃費などのコストアップの影響を受け、厳しい1年だった。価格改定を実施したものの、マーケットの求める価格ラインと乖離した面があり、全体にも影響した。

ルート別では、給食や外食の新規・大手チェーン向けが比較的好調だった一方で、卸を通じたルートでは落ち込みがあった。惣菜はチキンを中心に前述の単価上昇の影響で前年割れとなった。

――2025年度の重点施策と成果について

コストアップ環境下で、いかに単価に見合った価値を生み出すかが当初の大きな方針で、新商品はカテゴリーを絞って付加価値で差別化した単品を作ろうと投入したが、計画通りにはいかなかった。そのため、昨年6月頃から方針を転換し、高付加価値商品だけではなく、手頃な価格帯の商品ラインナップを揃えるようにした。農産では、従来は規格外だった大型オクラを「(特)きざみオクラ」として製品化したり、ほうれん草の葉と茎の比率を調整したりするなど、安全性を担保した上でコストを下げた。また、製造工程で廃棄・転売されていた端肉などの部位も活用して商品化するなど、SDGsの観点も踏まえ、限りある資源を余すことなく使用している。

〈商品・営業ともに統合シナジー発揮を〉

また、ニチレイフレッシュ(今年4月に統合)との統合によるシナジーとして、素材から完成品までを取り揃える加工度のグラデーション展開を進めている。とくに非加熱の生IQF唐揚や自然解凍が可能な「粗びき炭火焼鶏つくね」などが業態ごとにニーズに応えられる商品として大きく伸長している。チキン、農産、米飯に、新たにエビを加えた4つの戦略カテゴリーに注力しながら、冷凍化の推進を図っている。

営業面でもシナジーを活かしている。ニチレイフレッシュとニチレイフーズの双方の知見を活かすことで、提案の幅が広がっている。また昨年、全国の8支店を支社へ統合した。支社という大きな組織にすることで人員構成の偏りを解消し、より働きやすく、成果につながりやすい環境を作った。

――足元の業務用冷食市場全体の概況とルート別動向について

市場全体の物量は伸びておらず、2019年のコロナ前の水準には物量ベースでは戻っていない。反面、コストアップに伴う一品あたりの単価上昇により、金額ベースではコロナ前を超えている。

外食では人手不足が顕著。居酒屋は低迷傾向で、ファストフード(FF)は伸びている。給食は高齢者施設(老健)向けが堅調で、現場の人手不足から冷凍食品の使用率は今後さらに上がるとみている。事業所給食は回復傾向で、健康訴求をした商品が好調。惣菜は価格改定の影響を強く受け、数量が伸び悩んでいる状況だ。昨年は米高の影響で、好調だった弁当や寿司の動きが少し止まった印象がある。

――近年のコスト上昇や米価高騰が業務用事業に与えた影響は

昨年の市場単価上昇は様々なコストアップが背景にあるが、原材料の確保には単価上昇をある程度受ける必要があると思っている。

昨年、米飯カテゴリーは好調だった。理由は2つある。1つは、市場の米価が急騰する中で冷凍米飯の価格上昇が緩やかだったため、マーケットにおいて相対的な割安感が生まれたこと。もう1つは外食を中心とした人手不足によるものだ。調理現場の人手不足により、アルバイトなどがワンオペで回す店舗も増える中で、例えば作り手による炒飯の品質差を少なくするために冷凍米飯の導入が急進した。特に中華のチェーン店などで導入が進み、マーケット規模が広がっている。今後は、新米の流通で市場の米価が下がった際の打ち手が重要になるだろう。

――価格改定の数量への影響について

価格改定による数量への影響は間違いなくある。そして業務用市場はプレイヤーが非常に多いため、メーカーによって戦略が異なる面もある。多少利益を削ってでも数量維持のために安値で売る動きや、安い原料をスポットで売り込む動きがあり、当然当社の思い通りにならない。

また、単純に物量が減るだけでなく、商品間のシフトが起きている。例えば、同じ唐揚げでも高単価帯の商品も低単価帯の商品も同様に価格改定するとなると、それを機に今まで高価格帯でご使用いただいていたユーザーが低価格帯へシフトするという現象が頻発する。こうした需要のシフトや単価の変動に対し、いかに適切な打ち手を打てるかが問われている。

〈外食産業へ冷食化アプローチを強化〉

――今期(2026年度)の重点施策について

商品施策では、数年前に出した「究極の唐揚げ」のような単品強化に追加して、品揃えの充実を考えている。商品のハイ&ローを充実させ、幅広いお客様に対応できるように、チキン、農産、エビ、米飯の「4カテゴリー」に集中して強化していく。

営業軸では、加工品の使用率が一番低い外食市場へのアプローチを強める。人手不足に悩む外食産業に対し、手作りのものを冷凍に変える提案を行う。具体的には、カット肉や衣付け、生唐揚げなど、どの調理過程で価値と価格がマッチするかを見極めて展開する。手作りから冷凍への代替を促進し、店側のトータルコストを維持しながら、品質の平準化や人手不足への対応といった価値を提供していきたい。こうした価値を通じて外食・中食市場のコスト構造そのものを変革し、冷凍食品の活用領域を広げていきたい。

産業構造も変化している。外食市場では上位100社のチェーン店が市場全体の約25%をカバーするまでに集中が進み、大手の巨大化と個人店舗の減少が起きている。そこで、大手ユーザーへのアプローチを強めるため、東名阪に新グループを立ち上げた。4カテゴリーの戦略商品をベースに、どのチェーンにどの加工度の商品がマッチするかを見極めて提案しており、すでに新規案件の獲得につながっている。

また、スーパーなどの量販店に対しては、部門ごとの縦割りを打破する提案を行いたい。売り場は精肉、惣菜、冷凍食品などで分かれているが、「チキン」という素材を横串に刺してみると、売上の中で大きなシェアを占めている。惣菜のチキンはすぐに美味しく食べられるが、持ち帰ってレンジアップするなら家庭用冷凍食品をストックしておく方が便利。生活者のシーンに合わせ、「即食なら惣菜、レンジアップするなら冷凍」という生活者にとってよりよい選択をどのように提案できるかを考えていきたい。

――業務用事業の課題について

最大の課題は、業務用市場と、メーカーの大量生産・大量販売モデルの折り合いがつかなくなってきている点だと思う。少量多品種を効率よく回す工場の構築や、適切な数量での収益確保が必要になってきている。

また、ここから5年ほどで世代交代により今後はメンバーの減少局面に入る。人が減る前提の中で、営業担当が受けている質問や定型作業をAIに代替させるなどのデジタル変革を模索しているところ。定型業務をAIで対応することで、浮いたリソースを使って、お客様に対して今までにないメリットや価値を提供していきたい。

〈技術をベースにブランディングも重視〉

業務用において選ばれ続けるためには「技術の差」をベースにした「ブランディング」が不可欠。昨年開始したWeb動画「ニチレポ」を通じて、これからは業務用でも「ニチレイだから安心」という状態を作っていきたい。惣菜売場での販促展開や、共同開発商品でのポップ掲示、ホームページでのインタビュー展開などを進め、ニチレイブランドを安心と品質の証として浸透させていく狙いだ。

――生産・物流面における直近のトピックス

物流面では、統合したニチレイフーズとニチレイフレッシュで配送ルートや倉庫の共通化、配送体制の統一がまだ完全にできていないため、時間をかけながら着実に進めていく。

生産面では、生産現場の人手不足への対応として、毎年一定規模の省人化投資を継続しており、目視検査やリスク管理の領域において、機械やカメラ、デジタル技術を導入して効率化を図っている。さらに、環境対応として、冷凍食品の製造や保管に使う冷凍・冷蔵設備で使用しているフロン系冷媒を、自然冷媒へ切り替えていく「脱フロン」への投資も進めている。「食からひろがる幸せを、ニチレイが未来へつなぐ」というミッションに基づき、環境やSDGsへの取り組みは、外部環境の変化に関わらず継続していく。

――最後にPR事項等を

今期、最も重点化して取り組みたいのは、チキン、農産、米飯、エビの「4カテゴリー」において、現場で困っているお客様に対してどれだけ具体的な貢献ができるかを突き詰めることだ。「何でもできる」という品揃えから、強みを絞ったカテゴリー別の加工度のグラデーション提案へと舵を切り、お客様の課題解決に全力で貢献していきたい。

〈冷食日報2026年8月18日付〉

媒体情報

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
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